第127話「必死な彼女」
「えぇ、もともとはお父様を追い込むだけの交渉材料が、ありませんでしたからね」
それがやっぱり、姫柊社長と話していた時に予想したものだろう。
SNSで話題になったことが、困ることだけでなく、俺たちの状況を良くすることにも働くなんて、皮肉なものだ。
「いろいろとお話し頂き、ありがとうございました。もう大丈夫です」
これ以上は必要ないだろう。
それよりも大切なのは、これからのことだ。
「そうですね、終わったことはいいでしょう。そのようなことよりも、未来のほうが大切ですからね」
花音さんは俺の意図を汲んでくれたようだ。
相変わらず話が早い。
「では、これからどうするかですが――明人とシャーロットさん、一緒に暮らしたらどうでしょうか?」
「……えっ?」
一瞬何を言われたのか理解が遅れ、首を傾げてしまう。
そういえば……さっき、花音さんと一緒に暮らすとかなんとか、サラッと言われてなかったか……?
「許嫁なのですし、両想いですし、なんなら私たちの目を盗んで半同棲生活でいちゃいちゃしまくっているのですから、もういっそ一緒に暮らしたらよろしいかと」
「~~~~~っ!」
笑顔で容赦のないことを言ってくる花音さんの言葉で、シャーロットさんが顔を真っ赤にして悶える。
花音さんには悪気がなく、善意で言ってくれているのはわかる。
だけど――これは、恥ずかしくて顔が熱くなった。
「さすがに、それは気が早いんじゃ……?」
「えっ、嫌なのですか……?」
このままは良くないと思って言うと、シャーロットさんが捨てられる仔犬のような表情を向けてきた。
さっきのは照れていたのと同時に、喜んでもいたようだ。
「嫌どころか嬉しくはあるんだけど……」
いろいろと、問題がある気がするんだよなぁ……。
「どのみち、明人は姫柊に入って頂き、シャーロットさんと許嫁の関係を築いてもらうのですから、これからは私と一緒に暮らしますよ?」
「――っ!?」
花音さんが笑顔で言うと、シャーロットさんは先程よりもショックそうに表情をゆがめる。
そして、グイグイと俺の服を引っ張ってきた。
「あ、明人君、一緒に暮らしましょう……! それがいいです、そうでなければだめです……!」
どうやら、俺と花音さんを二人きりで暮らさせたくないようだ。
一緒に暮らすからといって、花音さんには百パーセント有紗さんがついてくるのだけど、それはシャーロットさんにはわからないのだろう。
花音さんの場合、これを計算しての発言だったんだろうなぁ……。
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