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第115話「懐かしき顔」

「――っ」


 不意打ちを喰らった俺は、ギリギリのところで湯飲みを躱す。

 まさか、いきなり投げられるとは思わなかった。

 どうやら、よほど気が立っているらしい。


「何するんですか!?」


 俺が面食らっているなか、最初に声を上げたのはシャーロットさんだった。

 立ち上がり、珍しくも怒りをあらわにしている。

 続いて、花音さんが口を開いた。


「本当に、小さい人間ですね。怒りに任せて暴力を振るうなど、あなたの底が知れました」


 落ち着いた声だが、言葉から怒っていることがわかる。

 花音さんはシャーロットさんと一緒で、滅多なことで怒ったりはしない。

 こんな状況で申し訳ないが、二人が俺のために怒ってくれたのは嬉しかった。


「黙れ! わかっているのか、青柳明人!? お前の生活費や教育費を誰が出してやっていると思っている!? 私のことを裏切る気か!」

「先に裏切ったのはお父様です。それに、生活費などに関しては私がお返しするお約束ですよね? それを、何恩着せがましくおっしゃっていらっしゃるのです?」

「黙れと言っているだろうが! いいか、青柳明人! お前が許婚の話を受ければ、多額の資産と会社が手に入る! そして、花音が私を裏切った今、お前が私側につけば、姫柊財閥を継ぐのはお前だ! そこの女レベルなら、余裕で後から手に入るぞ!? どっちにつくか、よく考えろよ!?」


 よほど気が狂っているのだろう。

 姫柊社長は俺を説得したいようだが、喧嘩を売っていることに気が付いていないようだ。

 おそらく、今俺を味方に付けられなければ、この人は終わるのだろう。


「明人君……」

「大丈夫だよ」


 シャーロットさんが不安そうに見上げてきたので、俺は優しく頭を撫でて安心させる。

 ここで判断を誤るほど、俺は愚かではない。


「姫柊社長、申し訳ありませんが、俺の答えは変わりません」

「なぜだ!? お前は出来たばかりの彼女に舞い上がっているだけだ! もっとよく考えろ! 普通の人間なら一生手に入らない金が、お前のものになるんだぞ!?」

「金では買えないものがある――よく言われていることですね。俺にとって金や自分の命よりも、シャーロットさんのことが大切なんです。そして、彼女を侮辱するような言葉を言ったあなたのことを、俺は許しません」


 大金の中で生きてきた姫柊社長と、不自由な暮らしも経験したことがある俺では、考え方が違うのかもしれない。

 正直、俺は姫柊社長のことを哀れだと思っている。

 俺の倍以上生きていながらも、大切なことを知らずにいるのだから。


「もう、これ以上は不要ですね」


 俺が答えを変えないと確信したのだろう。

 花音さんは立ち上がり、ドアのほうに向かって歩いていく。


「ま、待て! まだ決めつけるのは早い!」

「いいえ、もう終わりです。あなたは最後のチャンスを逃した。あなたがしたのは明人の説得ではなく、見苦しい押しつけと明人を怒らせることです。そのような人間、姫柊財閥のトップには相応しくありません」


 花音さんは冷たい目を姫柊社長に向ける。

 親に対して向ける目ではないだろう。

 彼女は言葉通り、姫柊社長を切ったようだ。


 そして、ドアにゆっくりと手を伸ばす。


「――結論は出ました。どうぞ入ってください、お祖父様、お姉様」


 そう言って花音さんがドアを開けると、ドアの向こうにはあごひげを長く伸ばした白髪の老人と、シャーロットさんとソックリな女性が立っていた。


 老人のほうは初めて見るが、女性のほうは――

「お姉、さん……?」

 ――俺が幼い頃お世話になったお姉さんに、間違いなかった。


いつも応援をして頂き、ありがとうございます(*´▽`*)


WEBで書くのはやっぱり楽しいので、どうにか時間を作って書いていきたいです(´・ω・`)


皆様の応援のおかげにより、

『迷子になっていた幼女を助けたら、お隣に住む美少女留学生が家に遊びに来るようになった件について』

3巻が4日前(2022/12/23)に発売されました(*^^*)♪


1巻も結構オリジナル要素があり、2巻もオリジナル要素多め、3巻はほとんど完全オリジナルとなっていますので、

是非まだ書籍を読んだことないよ、という方は読んでみて頂けますと幸いです(#^^#)


また、3巻帯に書いてある通り、コミカライズも決定しましたヾ(≧▽≦)ノ

アニメ化という目標にまた1歩近付けて、嬉しい限りです!


これからも、どうか『お隣遊び』をよろしくお願いしますm(*_ _)m

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― 新着の感想 ―
[気になる点] そう言って花音さんがドアを開けると、ドアの向こうにはあごひげを長く伸ばした白髪の老人と、シャーロットさんとソックリな女性が立っていた。 老人のほうは初めて見るが、女性のほうは―― 「お…
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