孤児院での1日
「じゃあまずは勉強をしようか。いつもはどんなことしてるの?」
「いつもはシスターが用意してくれた問題をしてるんだ。」
そう言ってトールは問題が書かれたプリントを見せてくれた。他の子たちのプリントも見てみるとそれぞれ違う問題が書かれていた。どうやら年齢によって問題を分けているようだ。問題の内容は小学生の低学年がするような算数や国語の問題などが中心であり俺でも教えることが出来そうだった。
「じゃあとりあえずその問題をやってみてわからないことがあったら僕に聞いてね。」
「わかったー。」
子供たちが問題を解いている間に俺は子供たちが解けるような新しい問題を作ることにした。今子供たちが説いている問題はすべて手書きで書かれており、おそらくクルアさんが空いた時間に作っているのだと思われる。クルアさんの負担を少しでも減らせるように問題を作っておこうと思ったのだ。そんなことをしているとトールが問題を持ってやってきた。
「ヨウタさんこの問題がわからないんだけど・・・。」
「この問題はね・・・。」
「わかった!ありがとう。」
「いつも分からないところがあるときはどうしてるの?」
「いつもはシスターが教会から帰ってきてから聞いてるよ。」
「そうなんだ。」
クルアさんはなかなかに大変な毎日を送っているようだ。その後も何回か子供たちが何度かかわるがわる分からないところを聞きに来た。だがヒルデはなかなか聞きに来ない。まだ遠慮しているのだろうか?
「ヒルデはわからないとこはない?」
そう聞いてみるとヒルデは困ったような顔をして問題の一つを指さした。
「これがわからないの?」
「うん。」
「これはね・・・。」
教えてあげるとヒルデは答えを書き込んで
「ありがとう。」
と言った。
「ここも教えてほしい。」
そう言ってヒルデは違う問題を指さした。少しは心を許してくれたのだろうか。
問題が全部終わると子供たちは帽子をかぶって外に行く準備を始めた。
「次は畑仕事だよ。ヨウタお兄ちゃんもこっちきて。」
サミアに引っ張られながら外に出て畑に行くとそこにはホウレンソウのようなものが栽培されていた。
「これは何?」
「これは薬草だよ。これを育てて売るとお金がもらえるんだよ。シスターの手が空いてるときはシスターがポーションを作ってそれを売るんだ。」
そう言って子供たちは薬草の周りに生えている雑草を抜き始めた。俺もそれに倣って雑草を抜きながらさらに聞いてみた。
「薬草はどれくらいで育つの?」
「えーとね、売るやつは1ヶ月くらいで育つよ。でもそのままだと次に育てるやつがなくなるからいくつか残しておいて種を取るんだ。種は6か月くらいでとれるようになるよ。ここのやつはもうそろそろ収穫できると思うよ。種が取れるようになるにはまだまだだけどね。」
アルクはそう言って教えてくれた。
それから薬草に水をやって家に戻った。
家に戻った後は子供たちは特にやることはないらしい。それぞれが好きなことをしている。アルクは寝ているしトールは本を読んでいた。サミアは絵を描いている。そんな様子を見ているとヒルデがこっちに来た。
「どうしたんだ?」
「ヨウタは異世界からきたの?」
「そうだよ。」
「異世界はどんな感じ?」
「うーん、そうだなこの街とはちょっと違うかな。もっと人が多くて車っていう乗り物がいっぱい走ってるよ。」
「くるま?」
「うん。こっちに来てからは見たことないけど、人が乗って移動するんだ。」
「馬とか馬車じゃないの?」
「もっと大きくて速いと思うよ。」
「他には?」
「あとはね・・・。」
それから俺は地球のことについていろいろと話してあげた。ヒルデはいろいろと興味があるらしく積極的に質問をしてきた。途中からは他の子たちも寄ってきて色々と話をしてあげた。
車の話から始まり、トールには図書館の話をしてやり、サミアには美術館の話をしてあげた。3人は喜んで聞いてくれたようで目をキラキラとさせながら俺の話を聞いていた。ヒルデは車が好きというわけではなく機械のようなものが好きであるらしい。ロボットの話やパソコンの話をしても目を輝かせていた。
アルクが起きてくるとアルクも話に参加してきた。アルクはモンスターの話が好きらしく恐竜などの話に興味を示していた。それからしばらくは俺が話をしていたのだが、クルアさんが帰ってきたため話を中断した。
「またお話してくれる?」
ヒルデがそう聞いてきたので、
「俺は時間があるときに話してあげる。」
と言って頭をなでてあげた。ヒルデはニコニコとして
「やった。」
と言ってクルアさんのところへと行った。
俺も玄関へ向かいクルアさんを迎えた。
「ヨウタさん1日ありがとうございました。勉強も教えていただきありがとうございます。助かりました。」
「いえいえ。まだやることも決まってないので。早くすることを決めないといけないのですが・・・。」
「ゆっくり決めていただいても大丈夫ですよ。孤児院にいてくれるだけでも私は助かりますし。」
クルアさんはそう言ってにっこりと笑ってくれたが、このままぶらぶらとするわけにもいかないので、何をするか早めに決めないといけない。
「じゃあ夕食を作りましょう。」
今日もクルアさんを手伝いみんなでご飯を食べた。みんながお風呂から出ると少し話をして子供たちは寝室に行った。俺も寝室に行こうかと思っているとクルアさんに呼び留められた。
「ヨウタさん今日は私もこの後時間があるので魔法の練習をしませんか?」
「はい。ぜひお願いします。」
「では基礎的なところから説明しますね。」
そう言ってクルアさんの魔法講座が始まった。