お風呂
「アラタ様それでは少し教会を案内させていただいてもよろしいでしょうか?。」
「よろしくお願いします。それと僕に様をつけるのはちょっと・・・。」
「これは申し訳ありません。」
「いえ、なんというか様をつけてもらうほどのものでもないですし、緊張してしまいますし。」
「ではアラタさんと呼ばせていただきます。」
そう言うとクルアさんは少し恥ずかしそうににっこりとほほ笑んだ。
「はい、よろしくお願いします。クルアさん。」
それから教会の中を案内してもらった。教会の設備はなかなかに整っておりトイレや診断機のあった部屋以外の部屋もきれいに掃除がしてあった。しかしすべての部屋を回ってみても寝室のような場所はなかった。
「クルアさんここにはほかに部屋はないようですが寝る部屋はどこにあるのですか?」
「ここは教会としての建物ですので、寝室は裏の孤児院にあります。子供たちもそこにいますので今からご案内しますね。」
そういってクルアさんは一度教会を出ると俺とシュルトさんが来た方向とは逆側に回った。そこには畑付きの少し大きめの一軒家があり、夕日に照らされた畑では4人の子供が畑仕事に精を出していた。
「彼らはこの孤児院の子供たちです。いま紹介しますね。」
そういうとクルアさんは子供たちを呼んで俺の紹介をするとともに子供たちの紹介もしてくれた。子供たちは男の子2人と女の子2人の計4人で男の子の名前がアルクとトール、女の子の名前がサミアとヒルデであるということらしい。
「こんにちは。今日から教会でお世話になるアラタといいます。よろしくお願いします。」
俺がそうあいさつするとアルクとトールそれからサミアは
「よろしく」
と挨拶してくれたがどうやらヒルデは人見知りのようでちらっとこちらを見ただけだった。「そろそろ日も傾いてきたし夕飯の準備でもしましょう。」
クルアさんがそういって家に入ると子供たちもクルアさんについて家に入っていった。俺も子供たちの後について家に入っていった。
家に入るとすぐに靴箱があり家の中は土足厳禁のようであったため靴を脱ぎあがるとクルアさんが
「おかえりなさい。」
といって迎えてくれた。地球にいたときは大学生で一人暮らしをしていたため久しぶりにおかえりなさいという言葉を聞いたような気がした。とはいえ年末年始やお盆には実家に帰ってはいたが。
「ただいま。」
俺がそう返すとクルアさんはまたにっこりとほほ笑んだ。
「みんな手を洗ってくださいね」
クルアさんがそういうと子供たちはキッチンの洗面台で手を洗っていた。それを見ながらクルアさんが
「アラタさんは男の子たちとお風呂に入ってきていただいてもいいですか?」
といった。
「はい、構いませんよ。」
「そういえばアラタさんのいた地球にはお風呂はありましたか?」
「はい、ありました。」
「では入り方などは大丈夫そうですね。何かわからないことがあれば気軽に聞いてくださいね。それとこれは着替えです。男性の方はほとんどいらっしゃらないので大人の男性物はこれくらいしかないのですが。」
そういってクルアさんはパジャマのようなものを渡してくれた。
「ありがとうございます。」
そんなやり取りをしているとアルクとトールはもう準備を終えて
「こっちだよ」
といって風呂場に案内してくれた。
「まずはお湯を入れなきゃな」
そういってアルクが湯船に湯を張っている。
「アラタの兄ちゃんは風呂に入ったことがあるんだよな?」
「そうだよ。僕が元々いたとこにもお風呂があったからね。お湯につかるのは気持ちがいいしね。」
「そうだよね。でも僕は長くお湯につかっているのは苦手かも。」
どうやらトールは長湯するのは好きではないらしい。
「早く入ろうぜ」
アルクにせかされて風呂場に入ると大人が3人入るには狭いが大人1人と子供2人が入るには十分な湯船と洗い場があった。互いに洗いっこをした後に湯につかり少し話をした。
「じゃあ兄ちゃんは地球っていうところから来たんだ」
「そうだよ」
「へーこっからどんくらい遠い?」
「うーん、ずっとずっと遠いかな。正確な距離は分からないけど。」
「そうなんだ。さみしくない?」
「まあ遠くに来たことは結構さみしいけどいつかはまた戻れるからね。まだこっちに来てから1日くらいしかたってないしね。」
「まあこれからは俺らと暮らすんだからさみしさも少なると思うけどな。」
そういってニカッとアルクは笑った。なんと優しい子なんだろう。子供なのに俺を気遣っていてくれるのか。
「ありがとうなアルク」
そういってアルクとトールの頭を撫でてやった。
それから湯船の中で100数えて十分体が温まったら俺たちは湯船から出た。本当はもう少し入っていたかったがアルクもトールも長湯があまり好きではないみたいなので早めに出て体をふいた。
それからクルアさんに渡された服を着てキッチンに戻った。キッチンではクルアさんと女の子2人が夕飯の準備をしていた。どうやらスープとパスタのようだ。いい香りがキッチン中に漂っている。
「すいません。お先にお風呂いただきました。」
「いえいえ、こちらこそ2人をありがとうございます。そろそろ夕飯ができるので食べましょう。」
「はい、いただきます。」
出来上がった料理をお皿によそいそれぞれ食卓に持っていく。
「自然の恵みに感謝を、いただきます。」
「いただきます。」
こちらの世界でもいただきますをいうことに驚きながら俺も「いただきます」といってスープとパスタを食べ始めた。