アテナ
――――サイコ ソルジャー♪
「見て見て!ソフトのオマケにカセットテープが付いてるわ。歌とインタビューが入ってるみたいよ」
「うむ、声は大魔神の嫁さんだな」
「……大魔神?」
「あ、野球は知らなかったか……」
ピンクの箱にデカデカと描かれたビキニアーマーの女性(大きい)に惹かれ、ドラゴンが衝動買いしたソフト『アテナ』
姫はウキウキと真新しいソフトとファミコンへとぶっ指した。
スイッチを入れスタートボタンを押すと、画面のアテナがウインクをした。
「やだ。私より可愛らしいじゃないの」
煌びやかなドレスを着たアテナが現れ、突如ワープする……。ワープした先に現れたアテナは何故か下着のみだった。
「何これ!真っ裸で蹴り殺すの!?」
ボタンで短い足を懸命に振り上げるアテナ。
「ちょっと、武器は良いけど鎧とか兜がゴツいわよ!」
先ほどまで煌びやだった衣装のアテナは、黄色い鎧と兜でその可愛らしい姿が見えなくなっていた。
「な!何だと!!」
突如ドラゴンがぶち切れた!
「吾輩可愛いアテナを期待したのに、鎧武者の姿なんぞ見たくも無いわ!!」
「まあまあ。あ、見て見て、3面で人魚になったよ」
ホタテの貝殻の様なアイテムを取ったアテナは可愛らしい人魚の姿に変身した。
「むむ!これは……なかなか……いいな」
ドラゴンは怒りを静め笑顔で画面に食いついた。
「あ、今度は羽が生えたわ!」
4面で羽形アイテムを取ると、鎧武者アテナの背中に羽が生えて空を飛んだ。
「きえーー!!可愛くないわい!!」
ドラゴンは洞窟の中で火を吹き始めた!
「ちょっと落ち着きなさいよ……」
姫は黙々とゲームを続ける。
「やっと全クリ出来たわよ!!」
隅でしょげるドラゴンをよそに姫は徹夜でアテナを終わらせていた。
「……吾輩より先にクリアしよった」
ラスボスを倒し、光に包まれたアテナは自分の城の前へワープし……そこでゲームは止まってしまった。
「……え?ボタン受け付けないけど、エンディングも何も無いの?」
「ああ、アーケードからの移植の際にカットされた」
「まあ、いいわ。続編のサイコソルジャーは買わないの?」
「買わないぞい。もう給料日まで金が無い」
「あんたドラゴンのくせにゲームで金欠なの?」
ドラゴンは財布を開き、逆さに振る。しかし財布からは粉しか出なかった……。