語り部の語る物語
実はこれ、この形になるまで四年間かかったんです。
とあるバス停の近くの路地裏。その隅っこの角地に、異様に目立
つアンティーク風の雑貨屋がある。ただし、裏路地である事には変
わりなくほとんど誰も来ない。それでもきっちりきっかりと営業は
している。
雑貨屋の周りはコンクリートのビル群。見上げれば、ほんの少し
の隙間に青い空。そんな無感動の灰色の中に、鮮やかな赤色の屋根
に薄茶色の壁面。緑色の飾りドアの右隣には、同じく黒色の飾り格
子に小窓が一つ。見えているカーテンは優しいクリーム色。僅かに
小窓から覗く内装はいたって明るい色遣い。クリーム色のカーテン
の下、白いレースのカーテンが邪魔して、中が窺えない雑貨屋が存
在しているのだ。
なんでそんなに人の来そうに無い路地裏なんかに堂々と立ち構え
ているのか、その不可思議な雑貨屋の前に、一人の女の子が立ち尽
くしている。路地を吹き抜けていく独特な匂いの風に、黒いツイン
テールと、これまた黒いミニスカートが揺れている。左の足元には、
持っていたらしい大き目の鞄が置いてある。
「み、店だ。店だよ。店が存在してるよ」
信じられないといった風に女の子は一人呟く。
「もの凄く見た目は可愛いよ。でも、もの凄く店の人はきっと怖い
のだよ。そのはずだよ」
なにかよく解らない事を呟きながら、驚愕色に染まった顔は、し
っかりと雑貨屋を向いて固定されている。というよりも、バスをた
だ呆然と待つよりかは、ちょっとした好奇心、というか使命感を活
かして、近くを探検でも、なんて思って入った路地裏である。
数分前。
塾に向かうためにバス停まで来た女の子は、しかし、ここから三
十分くらいで到着するにも拘らずに、一時間以上の余裕を持ってい
た。元々好き好んで塾に行っているわけでないので、いつもこの調
子だ。寄り道をして、遅刻をするように塾に辿り着くようにしてい
る。家でじっとしているのは、親に見つかるとうるさいのでしない。
逆に、早く行けば真面目に見えるので、お咎めなしどころかお釣り
が来る。
そして、今回。ふと振り返った細道が気になったのだ。後ろ髪惹か
れる思い、というかなんと言うか。言い回しが妙に違う気がするけ
れど。だがどうしても、自分は今日この時間、今というこのときに、
そこに入って行かなくてはならないという使命感に燃えたのだった。
そして、隙間に意気揚々と入っていた女の子は、中ほどまで進んで
からかなり後悔していた。
「なんなのだよ。何がどうして、どうなったら、こんなになっちゃ
うのだよ。世界七不思議に認定するのだよ。むしろするべきなのだ
よ」
憤慨する女の子の目の前には、最早何の物体なのか判別が出来な
いほどに腐りまくったゴミ袋が、おそらく五つほど。交じり合いす
ぎて、本当はもっと多いのかもしれないが、それは茶色というか緑
というか、なんだか終わった形容しがたい色をしていた。
「なんかもう見た目からして臭ぇのだよ。鼻が家出してしまうのだ
よ。あぁ、やっぱり全体的に存在からして臭ぇのだよ」
小さな鼻を摘みながら、辺りを見渡す。後戻りをする気はないの
で、どこか曲がり角があればと思ったのだが、一本道の裏路地。ゴ
ミを跨いだ先のほかには、曲がり角はない。どこまでも薄暗い道が
伸びているだけだ。壁には換気扇やクーラーの外に出てるあの何か
でかいやつ。後はサビだらけのパイプか、壊れて途中がないパイプ。
視線のすぐ先には終わった色の物体。やはりどこにも曲がり角はな
い。
「くそうなのだよ。今年最初の試練なのだよ。きっと、運動会のか
けっこが最初の試練だと思っていたのに」
呟きながら、決意を固めるかのように深呼吸を一回。ゴミ袋の先
を睨みつけながら、女の子は一歩踏み出した。そして、段々と勢い
を付けていき、ハードル走の要領で思いっきり踏み込んでジャンプ。
深呼吸をしたときに吸い込んだ嫌な臭いの空気が、肺の中で暴れた。
「ごっはぃ。臭いのだよ。やばいのだよ。肺までが家出の準備開始
なのだよ」
見事な着地を見せた女の子は、途端に咳き込みながら悪態を吐い
た。鼻についた臭いは、なかなか取れる気配はなかった。鼻と肺と
が家出をする前に、是非とも鼻の上の部分で蟠ってしまっている臭
いが家出をしてほしいところだ。
「でも、負けないのだよ。まだまだ先に進むのだよ」
ガッツポーズを空に突き上げて、女の子は先へと足を伸ばした。
そして見つけた曲がり角を右に曲がって、再び似たような後悔をす
る羽目になった。
そんな事を何回か繰り返した後、いきなり道は小奇麗になっていき、
薄暗く臭い道が姿を薄くさせて、明るいものへと変わっていき、今
に至る。
「あわわ。これは一体どうするべきなのかな、なのだよ」
女の子が居るのは、そんな感じの突き当たりの隅っこの角地なのだ。
全く持って予想だにしないものがあったかのだから、びっくりして
慌てるのは仕方が無い。予想していたのは、通ってきた道にあった
通りの、汚いゴミとか水たまりとか見ていて面白くないものばかり。
そこはコンクリートのビル群の間の隙間みたいなものだし、そんな
に期待はしていなかった。というか、期待以上のものもあったため
に、実際進んでいる時は後悔ばかりだった。でも、見上げたときに
あった小さな空は、青くて綺麗で大変良かった。でも所詮その程度
のものしかないと思っていた。だから、ある程度まで奥まで行った
らバス停に戻ろうと思っていたのだった。無論半分以上、来た道な
ど覚えていないが。それだけ一杯曲がり角を曲がってきたのだ。
「えぇい。女は度胸。怖けりゃダッシュで逃げるのだよ。きっと好
奇心には勝てないのだよ。そりゃもう開けるしかないでしょう。扉
は開けるためにあるのです」
やはりよく解らない事を言いながら、女の子は一歩踏み出して、
雑貨屋の入口に近づいた。それで思い切れて、結果勢いがついたの
か、ドカドカとそのまま進み始めた。
緑色の飾りドアの左側に、木をモチーフにして作ったと思われる、
枝の集合体的な黒い物体に、「OPEN」と可愛らしく英語で書か
れてた掛札がぶら下がっている。
それを見て生唾を飲むと、一つ大きく息を吸った。
「いざっ」
カランカラン。カランカラン。
女の子の意気込みとは裏腹な、涼しい音のベルのチャイムが鳴った。
「ぅわぁ」
意気込んだくせに少しばかりしかドアを引き開けずに、恐る恐る
首を突っ込んで中を覗き込む。自慢の度胸はどこへ家出をした。
とりあえず僅かな隙間から見えたのは、外見よりかは落ち着いた感
じの木目調の店内。すぐ手前には円形状のテーブルの上に白い小瓶
が大量に並んでいる。その奥、壁一杯に棚が並んでおり、何かごち
ゃごちゃと置かれているのが見える。隣に分厚い古ぼけた色をした
本が並んであるのも見えるが、はっきりとは見えない。
女の子は正面を見らずに思わずドアを全開にした。
「おや、珍しい」
途端、呼びかけ。
「ふぎゃっ。スイマセンごめんなさい。きっと怖いのだよ。やっぱ
りなんだよ」
「ちょ、ちょっと待ちなさい。何その意味不明さは」
扉の真正面。レジ横の机に肘をついていた、中性的で性別判定不
可能な人が声を荒げて立ち上がった。だが、青年っぽい。髪の毛が
茶色で微妙に長い気がするけれど。茶色は関係ないか。声が少しハ
スキーな感じだ。だが、カスカスな声ではない。綺麗な声だと思う。
女の子の美学的に。
「と、言いますか。語り部の私が怖いと仕事にならないでしょう」
「はい?」
もの凄い勢いで店から出て行こうと後退りをしていく女の子を引
き止めるように、語り部が苦笑いで言う。そんな彼の言葉に立ち止
まった女の子は、扉から半分だけ顔を覗かせて窺うように語り部を
見る。観察だ観察。何事も観察から始まるのだっ。とでも言いたげ
な視線に語り部は更に苦笑いになる。
「煮たり焼いたりして食べませんから、店の雑貨が気になるんだっ
たら見ていきなさい。語り部の話が聞きたいなら、そこの棚に置い
てある絵本を選びなさい。語って差し上げましょう」
「本当なのかな。ありがとうなのだよ。でも、人は煮ても焼いても
食べられないのだよ。きっちりきっかり決め事なのだよ。そんなこ
とも知らんのか。カニバリズムは今時流行らんぞ」
「……ぅん。帰って?」
優しく丁寧に言ったのに、あんまりな返事だ。語り部の苦笑いは
見事に完璧に引きつった。
それから。
語り部に言われたとおりに帰るはずも無く、女の子は自由気ままに
店の中を見て回っている。小物を手にとっては嘆息したり、解らな
い独り言を呟いたりしながらなかなか楽しそうである。初めの警戒
心は何処へと姿を消したのか、不思議なものである。
一方、語り部の方はそんな女の子を眺めながら、心此処に在らずと
言ったよな表情でレジの横に座っている。久々のお客は見た目が小
学校高学年くらいか、中学校入りたて。収入は考えられないので、
物悲しい事この上ない。でも、話し相手としては良いかも知れない
ので、話しかけてみることにした。なにしろ語り部は暇だったのだ。
「ところで、どうしてこんなところに来たのですか」
「冒険だよ。のんびりバス待ってても面白くないから、路地裏に入
ってみたのだよ。そしたら店があるから、びっくりなのだよ。語り
部はどうしてここに?」
「へぇ。まぁ、僕はガヤガヤしたところが苦手でして。まぁ、ジメ
ジメした所も嫌いなのですがね。そこは妥協して此方に」
女の子がしてきた質問には適当に答えて、さて、その女の子の答
えは興味深いものだった。バスの待ち時間が面白くないだけで、あ
の汚い道を女の子がよく通れたものだと、感心した。だが、この子
は一体礼儀と言うものの存在をご存知なのだろうか。なんて思いな
がら語り部は話す。やはりと言うかなんと言うか、話し相手として
はかなり面白い部類に入る女の子だ。多少の礼儀知らずにも目を瞑
る。なにせ暇な語り部なのだから。
「それより、何か気に入ったものがございましたか?」
「うん。語り部、これは使える人はいるのだろうか」
女の子が持っているのは、金銀財宝が納めてありそうな、宝箱の
形をした小さな小物入れだった。ただし、小さい女の子の親指サイ
ズ。
「あぁ。それですか。それは、えっと、あの、あれですよ」
「なんなのだよ」
「まぁ、同業者の人達用ですよ」
「なんと。そいつらみんな、小人なのだよ。んな、バカな」
自分で言って、多少の間を開けて自分で否定する。いわゆるノリツ
ッコミ。語り部はそれを微笑ましく眺める。女の子の方は、不満が残
っているのか首をかしげながら、それを元の場所に丁寧にそっと戻し
て、再び歩き始めた。その度に、ぎしりぎしりと床が鳴く。それと、
女の子の靴が鳴らす、こつこつという音も。随分と古いのだろうか、
こげ茶色の木目の木の床は耳に心地よい音を立てる。
女の子は唸りながら、店のアンティーク雑貨を物色していく。趣味
に合うものがないわけではないのだが、値段がお小遣いの範囲を軽く
超えているものばかりなのだ。それに、目につくものの大体が小さす
ぎるのだ。それに、恐らく店長である語り部は性別不明だし。それは
関係ないだろうけれど、とりあえず不満は募る。
「ここにあるものは、みんなみんな小人専用なのだよ。飾りとしては
あまりにもミニマム過ぎるのだよ。語り部、人間サイズなのは本だけ
なのか」
「いえいえ。そんなことはありませんよ。そちらの棚は、ちゃんと人
間サイズです」
不満たらたらの女の子に、笑いながら自分で言って語り部は少し噴
出した。
人間サイズ。
思ってみれば、ここにあるものは確かに人が遣うには不釣合いのもの
が多い。そういう店だから仕方ないとはいえ、多少の改善の余地はあ
るのかも知れない。小さい女の子に、まさか教えられるとは、語り部
も思っていなかった。
「実に愉快です」
「なんなのだよ」
語り部は、すぐに振り向いてきた女の子に首を振って笑う。この女
の子は地獄耳らしい。ずっと真剣に棚の中を覗き込んでいたのをやめ
て、語り部を精一杯振り返り首を傾げている。キョトンとした顔は、
歳相応の幼さが窺えて実に可愛らしい。と思ってしまうのは、変態な
のだろうか。なんて、そんな複雑な心境の語り部にお構い無しで、女
の子は不思議そうな顔をして固まっている。顔面を右手で押さえて唸
っている語り部は、たしかに不思議というか、怪しかった。
「なんでもありません。お願いですから、その棚を見ててください」
「まったく、意味不明な語り部なのだよ」
けらけらと笑って、棚の中の物色を再開した。だが、当然のように
身長のせいで手が届く範囲が限られているために、自分より高い位置
にあるものが見えないらしい。数歩下がって、目を凝らして眺めてい
る。語り部は先程からその様子を黙って眺めていた。なにせ必死さが
面白いのだ。
「語り部」
「はいはい。なんでしょうか」
「はい、は一回なのだよ。お母さんに習わなかったのか」
「……すいません。あの、それで、どうかなさいましたか」
「見えないのだよ」
でしょうね。などとは口には出さず、苦笑いを浮かべながら、語り
部は踏み台を女の子の側まで持っていく。それでも多少手が届かない
ようなので、一緒に見る嵌めになってしまった。カウンターへ戻ろう
としたら、
「どこへ行くのだよ、語り部」
「カウンターですが」
「付き添え。見えないのだよ。それはちょっぴり悲しいのだよ」
見たいな感じで、服の裾を掴まれたら言う事を聞くほかないだろう。
女の子も一切引く気はなかった。じっと、あらん限りの目力をこめて
語り部を見上げていたのだ。
「ふぅ。これでこの棚は一通り見ましたよね。っと、あの、お名前を
聞いてませんでしたけど、なんてお呼びすれば宜しいですか」
女の子の質問攻めに、必死になって語り部が律儀に答える中、疑問
を口にした。
「少し、不便と思いまして」
「うん。語り部、私はお母さんに知らないおじさんとおばさんには、
ついていくなと、それと名前と住所と電話番号は教えては駄目だと言
われているのだよ。だから、しーなのだよ」
静かにしましょうのポーズを取って言う。これは女の子のお母さん
に是非とも一度お会いしたいものだと、語り部は思った。女の子はポ
ーズを崩して、月の形をしたロウソク立てを見ながら続ける。勿論人
間サイズ。
「それに、自分から名乗らない礼儀知らずにどうして教えないといけ
ないのだよ」
「あなたがそれを言いますか」
「でも、ニックネームは良いはずだよ。語り部は良いおじさんかおば
さんだから」
「それはどうもありがとうございます」
残念なことを二回も言われる語り部だった。年齢的にはまだおじさ
んでなければ、おばさんでもない語り部は、苦笑いが耐えない。
「ニックネームは、アヒルなのだよ」
「それはまた、変わったあだ名ですね」
「学校でいつも、むぅっとした口でいるからアヒルなのだよ」
実際にぶすくれたような顔をして見せてくれる女の子。確かに、ア
ヒルの口に見えないこともないか。女の子曰く、学校は退屈らしくて
そんな顔をしているらしい。性格からしてその様子も考え方も容易に
想像できる。窓側の一番後ろの席とかで、外を不満そうに眺めている
姿とか。あれ、やっぱり変態なのだろうか。
「では、アヒルさん。これはなんだと思いますか」
なにやら変なものが心に蟠ってしまったのを振り払うように、語り
部が女の子の前に差し出したのは、可愛らしい細工が施された小瓶だ
った。真っ白な中身の見えない小瓶は、確りと栓が閉まっている。同
じようなものは、店の中央に置かれた丸いテーブルの上に置かれてい
る。覗き込んだときに最初に見えたものだった。
「むむむむ。香水か何かなのかな。それとも、人間サイズの小物入れ」
「ぶーです。これはですね、そちらの大量にある本の住民ですよ」
女の子の仕草が少しうつったらしい語り部は線を引き抜いた。コル
ク栓を引き抜いたような音が小さく響く。途端に、女の子が手を叩き
ながら歓声を上げた。
「ぶは。すげぇだよ。すげすげなのだよ」
「凄いですか。ですが、それよりも可愛らしいでしょう」
小さな手をしきりに叩きながら、女の子は楽しそうに笑う。視線の
先にある語り部の手の上には、現実的にはあり得ないものが乗っかっ
て動いていた。
「ちっころ細けぇ、黒猫なのだよ」
「あちらの、二段目にある本のシリーズの住民です」
「そうなのか。ここの本の登場人物は小瓶の中に居るのか。凄いのだよ」
言って、女の子は慌しく本の側まで走っていく。そして、言われた
二段目にある本の一番初めの巻を引き出して手に取った。表紙には、
一軒の喫茶店と海の絵が描かれている。パステル調の優しい絵だ。
「おぅ。この本はもの凄く軽いのだよ。んで開かないのだよ。本当に本
なのか疑問なんだよ」
「その本は、抉じ開けようとしても開きません。『箱』ですからって、
引っ張りすぎです」
小瓶を近くの棚に置いて、女の子が持っていた箱を慌てて取り上げ
た。そして、表紙が書かれている面を撫でた。大切に大切に、愛しむ
ような目を向けて。先程の黒猫は語り部の肩に座ってそれを眺めてい
る。同じように女の子も不思議そうに眺めている。
「箱でも、その表紙はとっても面白そうなのだよ?」
「何と無く、黒猫を出したのですが。この本、語って差し上げましょ
うか?」
「うん」
花のような笑顔を咲かせて、語り部の隣に居る女の子は何度か頷いた。
かなりの身長差があるので、女の子は頑張って顔を上げて語り部に期
待の眼差しを向ける。
「ではカウンターの方に行きましょう」
そんな女の子に笑顔を返して、カウンターの方へと歩き出す。ついで、
小瓶を二、三本取った。女の子が後ろから嬉しそうについて来ているの
が足音で解る。語り部は音を立てて歩いていないから、なおの事その音
が響いているのだ。
「それ、どんな話なのか気になるのだよ」
カウンターにある少し高めの椅子によじ登りながら、女の子が尋ね
てきた。
「この本はそんなに面白いお話ではないのですよ」
相変わらず音も無く動いて行き、女の子の向かい側に箱を持って座った。
「面白くないか面白いかは、聞いてみないと解らないものなのだよ?」
「まぁ、そうですね。これはですね、とある世界のうちの一つ。海の
ある町。その街角にある一軒の喫茶店の話ですよ。えっと魔女とこの黒
猫が主人公です。……あまり言う事を聞いてくれないじゃじゃ馬さん
達ですけどね」
「はい?」
「よいしょっと」
後ろの棚に並んだ同じくらい分厚い本を一冊引き抜いた。表紙は何も
書かれていない。
「こっちが本です」
「ぼろっち……」
本と箱を見比べながら、女の子が呟いた。語り部はそれに苦笑いをし
て、咳払いを一つした。それに反応した黒猫が、語り部の肩から飛び降
りて本の中へと吸い込まれるようにして消える。
「では。本を開きますねぇ」
もぅ、口調でキャラは作らない……。
心に誓ったそんな作品です。
ちなみにこの話の店長。
気付かれない程度に色々な作品に
重要キャラとして出てきてます(爆
でも原形留めてないから誰も解らないという…
楽しんでいただけたならこれ幸い!
またどこかでお会いいたしましょう。