予定
予定は事前に決めておく必要がある。
それは時間の消費を最小限に抑えておく作業だ。
だが、その作業に時間をかけるのもまた無駄になる。
その為、授業という必要で無駄な時間を使い計画を立てる。
毎日のルーティン以外に行わなければならない事を考える。
休み時間は少しずつ本を読む。
それは異世界を旅する事に繋がり、また自分の経験出来ないような事を追体験することにも繋がる。
この時間は無駄ではなく、必要不可欠なものだ。
休み時間の過ごし方は決まった。次は昼食の時間だ。
昼食は家から持ってきたおにぎりを屋上で食べる。
購買で食事を買う行為はリスクが高い。
並び時間を消費しつつ、更に自分の好みのものが手に入らないかもしれない。
リスクは最小限に抑える。
と、考えている最中に数学の教師から声が飛んできた。
「古田、何をボーっとしている。この方程式を答えてみろ」
僕はため息を吐き立ち上がる。
「理解する必要がありません」
数学教師も頭に手を当て、ため息を吐く。
「全く……」
僕は着席すると、ノートに今日の過ごし方を書き込んだ。
大体のスケジュールが決まると、授業の終わりを告げる鐘が鳴った。
「今日の授業はここまでだ。試験も近いからな。ちゃんと聞いておけよ」
教師は僕を睨みつけながら言う。僕はその視線に気付いたが、何を反応する必要もないと考え、視線をノートに落とした。
休み時間になった。
僕は鞄から本を取り出し開いた。
すると、斜め後ろから覗き込む影が現れた。
「ふーん……、多紀ってそういう恋愛ものも読むんだ?」
「美琴か……」
「何よ、美琴か……、って」
怒るような口調で笑いながら正面の椅子に腰かけた。
「何このノート?」
先ほど書いていた今日の予定を記したノートを、美琴が読む。
「ああ、今日の予定だよ。今は本を読む時間だ」
「ふーん……、でもこの予定だと足りないんじゃない?」
「何が? 無駄のない合理的な予定だと思うけど」
僕は本に落としていた視線を美琴に向けた。
「無駄かぁ……。でもこの予定だと、私との時間がないけど? それとも、私との時間は無駄って事?」
美琴は僕の目を見て言う。
美琴との時間か……。考えに入っていなかった。
「無駄ではない、けど、予定に入れるほど特別な事でもない」
「じゃあ……」
僕のシャープペンシルを取り、ノートに書き込んでいく。
「はい!」
書き込み終えたノートを手渡された。ノートに書かれた昼食の予定に、追記されていた。
『美琴と屋上で昼食をとる』
ノートから美琴に視線を向けると、美琴は笑った。
元々食事はとるつもりだった。
それが『美琴と屋上で』というものになっただけだ。
このくらいの予定変更は、想定の範囲内だ。