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おぼろのことり~怪之徒然拾遺録  作者: ハデス(夏ホラー参加します)
怪の壱「旧校舎に、潜むもの」
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序~はじまり

 わたしの好きな現代怪異ものです。「むらさきひめ」よりも、活劇を意識したく思います。

 とある小学校。

 放課後の、教室。

 数人の子供たちが、残っていた。

 何かの話題で、盛り上がっているようだった。

 

 ――旧校舎には、お化けが住んでいる。

 誰かから聞いた、噂話。


「よし、それじゃあ今度肝試ししようぜ!」


 そう言ったのは、五年生にしては大柄な少年――久保田正志。


「お、いいねいいね」


 すぐに乗ったのは、お祭り騒ぎが大好きな佐々木麻衣だった。

 ふたりは、クラスの何人かに声をかけて、まとめあげてしまう。

 

「翔太はどうするの?」


 仲のいい女子――笹原亜矢に訊かれて、杉本翔太は首を振った。


「僕、嫌だよ」


 ――怖いもん。

 と、肩を縮ませる翔太に、亜矢は眉をしかめる。

 ただでさえ細くて、まるで怖がりな女の子みたいだった。


「おまえら、どーすんの?」


 にやにや笑いながら、正志が言ってくる。


「もちろん行くわよ」


 唇を尖らせて、亜矢。


「翔太も行くでしょ?」


 話を振られて、翔太はぶんぶんと頭を振る。


「はは、情けねーの」


「仕方ないよ、杉本君は臆病だもんねー」


 ふたりにからかわれて、むっと来たのは、翔太本人ではなくて――


「行くわよ、もちろん」


 胸を張るのは、亜矢だった。

 きっ、と睨み付けて「いくよね?」ともう一回。少し迷ってから、しぶしぶと翔太は頷いた。


「よっし! それじゃあ、決まりな」


 みんなを見回して、大声で確認を取る正志。


「俺と、佐々木と、市山と……」


 それから、亜矢と翔太を見て、


「笹原と翔太だな?」


 翔太の名前を、殊更に強調。大きく頷くのは、翔太ではなくて、亜矢だった。


「んじゃあ、今夜にしようぜ。えーと、一旦家に帰ってからだから……」

 

 今夜の肝試し決行に向けて、計画を進めていく正志達。

 その次の日、大人達が大騒ぎをすることになるなんて、わくわくしている彼らは考えもしなかった――。

 

「……本当に、大丈夫なのかな」


 ――ただひとり、心配そうにつぶやく翔太を除いては。  

 

      ◇


 この世界には、闇の領域がある。

 そこに息づくモノが在る。

 (つね)であれば、知りえることはない。

 日々であるなら、触れることもない。


 ――しかし、確かに。

 それらは、存在する。


 時には、悪鬼と恐れられた。

 ヒトを喰らう、無慈悲な鬼と。

 時には、悪魔と忌まれた。

 ヒトを惑わす、淫靡の女怪(にょかい)と。

 時には、妖魅(ようみ)と憎まれた。

 ヒトに取り入る、(さか)しき蛇妖(じゃよう)と。

 それらは、所詮は創造の産物と思われてきた。

 虚構であり、現実ではない。

 人為的な、虚妄。

 意図的な錯覚。

 極限状態での、集団妄想。

 無知ゆえの、見誤り。

 ヒトによる、凶悪な犯罪。

 理不尽な、自然災害。

 それらしい理屈で納得し、もっともらしい概念付けで誤魔化し、ありえぬものと見做(みな)してきた。

 そうやって、ヒトの社会は回り続けた。


 それでも、確かに。


 ――そいつらは、

 ヒトの歴史の裏側で、息づいているのだ。


 怪幕いたします。長丁場で頑張っていきたいと思います。

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