第6話 登校
結局のこと、私は5日間休んでいた。
傷が完全に治ることは無かったが、左手がある程度までは回復した。
「本当に学校に行くの?」
母は悲しそうに、心配そうに朝食を作ってわたした。手作りワッフルと自家製ヨーグルトが胃に優しい。
「まぁ、行くよ。いつまでも引き籠る訳にもいかないしね」
そういってみるが、やはり母は納得がいかないような...悲しい目で見てきた。
「茜ちゃん、結局なにもするなだなんて...」
私は母にイジメの原因、具体的なものまでは言わなかった。何から話したらいいのか分からなかったし、何よりもう色々と面倒臭くなってしまったのだ。
「もうどうでもいいんだよ、お母さん」
これ以上母に迷惑をかけたくはなかった。早く普通の生活に戻って、この出来事を過去のものにしたかったのだ。
「じゃあ学校に行ってくるね」
「...行ってらっしゃい...辛くなったら、帰ってくるのよ」
私はランドセルを背負って母の言葉に耳を貸さず家をでた。
......正直、学校に行きたくない。
いや、だって考えて欲しい。私は針やカッターや画鋲を握った異常者だ、完璧にヤバイ。
しかも普段は大人しい私がブチキレるということをした。絶対にイジメは激しくなるし、先生に何を言われるのか分からないと私の心は意外と不安だったのだが...
「茜ちゃん、傷大丈夫?」
「聞いたよ、大変だったね...」
「あの時は本当にごめんなさい!」
学校に来たら、沢山の人から心配された。友達とかならまだしも、何の関係もない人からも心配や謝罪がきた。
「本当にごめんなさい!面白半分だったの!」
「ごめんなさい!」
勢いよく謝られ、私はそれをポカンとしかみなかった。多分、許しの言葉とかかけたんだと思う。
「別にいいよ」
私は別にこの人たちに謝って欲しかったとは思ってなかったから。だから、どうでもよかった。だから、もう私に関わらないで欲しい。
軽くみんなを拒絶しながら自分の教室にはいると...
私の机は綺麗になっていた。
「新しい机にしたんだ」
と、先生はいった。
ゴミだらけで傷だらかだった机は綺麗になくなり、新しい机となっていて、椅子も綺麗になっていた。
つまりは、イジメの証拠だったものは消えてしまい私はイザという時に学校を訴えられないのか。
「如月、本当に悪かった。先生は...教師失格だと思う、目先のことばっかり気にしていた。本当にすまない」
「あ、もういいんで大丈夫です」
頭を下げて謝る先生に、私は軽くかえした。こんな小娘に謝らなきゃダメなんて、教師も大変だね。
人が謝りたいのは、自分の失態を過去のものにしたいからであり、許す側も過去のものにしたいから許す。
ある意味では対価のようなものが謝罪だと感じている。だから、形だけの謝罪でも私にとってはどうでもいい。
「アレ?ゆかりちゃんはどうしたの?」
私はいないゆかりちゃんを探した。あの子が真っ先にくると思っていたから。
私は友達に聞いたら、きまずそうにいった。
「ゆかりは...あの日から...学校に来ていないの」
あの日、つまりは私がキレた時から当校していないんだ。
「あの日ね、みんなちょっと頭が冷えて...正気に戻ったというか...なんていうか、ちょっと考えを改めだして..」
「多分、またイジメられるのが恐くなったんだと思うよ...あ、でも茜ちゃんのせいじゃないから!!」
二人は必死で説明をして、私は悪くないといった。
茜はちょっと、ひねくれ過ぎだな~と今更ながらに思った。なんでこんな風になったんだろうね?