第4話 家族
「ただいま...」
私はボソリと喋って、玄関のドアを開けて家にはいった。その事に気付いた母が驚いたようにかけよってきた。
もう20後半だとあうのに、未だに中学生のような可愛いく老けない母にそろそろ怖くなってくる。
「茜ちゃん....ってどうしたの!?その手!!」
グロッキーになっている、気持ちの悪い私の手を泣きそうな目で見て、パニックになったかのように慌てて救急箱を探していた。
「ちょっと待っててね茜ちゃん!!今すぐ救急箱を...いや!!まずは救急車!!えーとえーと!!...キャァアア!!」
ズテン!!と慌てた拍子に転んでしまい、母は痛そうにしながらも必死に立ち上がっていた。
「お母さん、救急箱はここだよ。取り合えず、針とか画鋲とか抜くからピンセットだして」
右手で救急箱を取りだし、左手はグロッキーなので出して欲しいとお願いする。
「う、うん!!分かったわ!!本当にごめんね!!今すぐ出すから!!」
救急箱を開き、ピンセットを取り出してくれたので私は自分でそれらを抜く。血を出しすぎて、元々痛かったから最早感覚がない。血管が出てきてしまった、どうしよ...
「...茜ちゃん...どうしたの?」
何故か痛くない筈の母が涙目で不安そうに言ってきた。
「えっと...キレた。うん、久々にキレて...怒った」
何から話せばいいのかサッパリ分からず、私はそういった。流石に教師に向かって暴言を吐いて針や画鋲を握ったなんて言えない。
ピンセットで抜いた後、血が止まってくれない手をどうしようかと思っていたら、母は震えながら包帯で巻いてくれた。
「自分でやるよ。お母さん、血とか無理でしょ?」
「大丈夫よ...これぐらい。」
そう言って取り合えずは不恰好な包帯が出来た。血もなんか止まったみたいだ。
「えっと...結論から言うと、色々あっていじめられてました」
色々と略して私がそういうと、母は死にそうな顔をした。あ、ヤバイ。
この人は感受性が豊かで、心優しすぎる。本当にあの父には勿体ない人だ。
「茜ちゃんは...強く見えてたから、ママは気づけなかったわ...ごめんね」
包帯だらけの手を悲しそうに見つめてそういった。「痛かったよね、苦しかったよね」と母は何も悪くないのに死にそうにないている。
「母さんは何も悪くないから」
とまぁ、今にも自殺しそうな母を宥めていた。
その後、私は病院に行って検査を受け、もう少し深かったら神経が切れて動かなくなっていただろうと言われ、それを聞いた母が気絶しかけたりとか色々あった。
家に帰り、お母さんはこういってきた。
「茜ちゃん...学校に行かなくてもいいのよ?」
「いや、学校には行くよ」
「遊園地に行きましょ!パパも喜ぶわ!」
「絶対にいや」
残念ながら、父と遊園地のビジョンが浮かばない。私の父のイメージは屁理屈男だ。
「ね?休みましょうよ。転校しましょ?」
「休まないし、転校もしない」
何故か休むから転校に話が代わっていた。何故だよ。こんなの父に知られたら、イジメの原因やら何故論破出来なかったかについて議論が出るだろう。
あの人の頭はコンピューターだ絶対に。
「いっそのこと学校に行かなきゃいいのよ。ね?」
しまいに引きこもる事を進めてきた。
そういえばこの人、私を幼稚園に行かせなかったりとか、小学校に行くことに反対しまくってたな...
「私、引きこもるつもりはないし、休むつもりもない。悪いことをしていないのに何で休む必要があるんだ?そもそも母よ、学校というのは義務教育であり、私はそれに従っているだけに過ぎな...」
「隼人くんに知らせ...」
「やめて!」
彼氏の名前を出されて私は必死で母に懇願する。本気で止めて欲しい、隼人に知られたら私は自由を無くしてしまう。
「じゃあ学校は休みなさい!!」
母は私に強くそういってきた。隼人に知られるのはとてつもなく嫌だったので、私は渋々それに従った。
というか、休みを強要する母ってどうなんだ?
「茜、ママから話は聞いたぞ」
振り替えると父が私とよく似た腐った目でこっちをみている。泣いたような痕があるのは気のせいだろう。
「今から、何故そのような状況に陥り、何故理性が保てなかったかを話し合おう」
うわぁ~面倒くせー...どうせ私の言葉なんて論破するんだから、普通に説教したらいいじゃん。
「はいはい分かったよ...」
とまぁ、こんな感じな家庭である。
この家族は何も悪くない、世間的にみたらちょっと変わってるだけの普通にいい家庭で、私もこの家族は大好きである。
老けない謎をもつちょっと過保護な母は私を愛情タップリ育ててくれた世界一の母だ。
裁判官であり、絶対中立を職業とする偏屈な父は私に偏った教育を施した。私が母のような可愛いくて純粋な女の子になれなかったのはコイツのせいかもしれない。
しかし、そんな父もなんだかんだで可愛がってくれた。
私は家族が好きだ。だから...
今回、うまく問題を処理できなかったのは意外とショックだった。
「ごめんなさい...」
そういった私に父と母は何も言わずに抱き締めてくれた。結構苦しくて、潰れちゃいそうだけど嫌なものではなかった。
やっぱり明日、学校に行かなくてよかったと思った。多分、目が真っ赤に腫れていたと思うから。
チラッと出た、隼人という彼氏は「小学生に惚れた高校生ヤンキー」の主人公です。