第3話 キレた主人公
残酷な描写と汚い言葉があります。
私の左手には、画鋲や裁縫の針やカッターの刃等の...嫌がらせに使われた物達が深く刺さっている。
何かピンクっぽくて白っぽい。グジュグジュなトマトを破裂させたようだ。気持ち悪い。
「見ろよ!!肉が抉れて骨が見えてるだろ!?指の間は針が貫通してる!!カッターの刃なんて肉に引っ掛かって捲れてるんだよ!!」
どうやら、いつのまにかプッツン来ていたらしい敬語もなにもかも無くなっている。
。怯えるように周りにいる子にも見えるように手をあげる。
「なんで今まで放っていたんだ!?私の方が被害者だろ!!責任転嫁してんじゃねーぞ!!生徒の管理位しろや!!」
私ってこんな喋りだっけ?担任は小学生の私に何故か怯えていた。
「違う...そうじゃないんだ...ただ...気づかなかっただけ...」
「何処をどうみたら気付かないんだよ!?どう見ても可笑しいだろうが!!お前の目は腐ってんのか!?」
「違う...そうじゃ...」
「じゃあいい!!今まで気づけなかったんなら今みろ!!今!!見ろよ!!なぁ!!」
血にまみれ、抉れ、骨が見え、血管が見え、捲れた白い肉が見えた気持ち悪い私の手を押し付ける。
やっている事は狂気の沙汰だと思う。けれど、自分がしたことのか結果くらいは見てほしい。
「お前らもだよ!有象無象ども!!」
手を振り上げ、血が辺り一面に散らばり、生徒たちにもかかる。おい、誰か私を止めてくれ。
「キャァアアア!!!!」
周りは悲鳴をあげ、私はそれにも負けない位大きく声を張り上げた。
「お前らのやった行為の結果だ!!痛いんだよ!!ふざけんな!!...ハァ...ハァ...」
肩で息をして、深呼吸をする。なんだか落ち着いてきた。誰も私を止めようとする人間がいなかったので、こういう結果となった。息が苦しい。
ここまでキレたのは初めてな気がする。というかクラクラしてきた。手を見ると、黒い血が出てきて何かドロドロしてきてる。ヤバくね?
まぁ、結果的に私は落ち着きを取り戻したんだ。
「お前等なんか有象無象なんだよ...ガキが好き勝手やっていい時代は終わったんだよボケ。やっていいことと悪い区別つけろや!!」
前言撤回、全然落ち着いていない。
意外と今回のことは大きなストレスになっていたようだ。ここまで来たら二重人格なんじゃないかと疑うレベル。
「でも、それでもいいと思ってた。私には友達がいるし、そこまで苦でもない。人間、見たくない物は沢山ある。ことを荒立てるつもりもなかった...けど...
自分がやったことの結果ぐらい見ろよ!!
テメーが本に隠したカッターの刃。そこの君が椅子に付けた画鋲、お前が給食の中にいれた針.....何も見ようとしない憐れな先生...そして...
悲劇を気取りたい...全ての元凶」
そこで、私はゆかりちゃんを見つめた。
「で、でも!!ゆかりちゃんは死にかけたのよ!!」
野次馬の中で、ゆかりちゃんと仲のいい女の子が、そう発言した。ゆかりちゃんはそれをみて安心している。
しかし、気付いただろうか?私はゆかりちゃんの名前は出していない。
「悲劇性でいったら、その子の方が上です...私のは単に肉が抉れて血がヤバイ位出て、骨が見えて、下手したら左手の神経がやられてるか、出血多量で死ぬだけだから...
あと、ゆかりちゃんは悲劇だったとしても、貴女たちは悲劇じゃない!!ただ正義ぶってやりたい放題したいだけのガキだ!!おい、ゆかり!!今のお前は利用されてんだよ!!裸の王様なんだよ!!
自殺しようとする前と立場は何も変わってねーぞ!!!」
元気に被害者だのイジメられてたの言っている子より、可哀想じゃないんだろう。
「痛いよ畜生...」
血がポトポトと流れて水溜まりが出来る。ちょっとヤバイ位に出ている。マジで出血多量で死ぬのかな?
やだな...死にたくねーよ。
けれど、教師を含めて皆は無言で私を見ている。怖いような、考えることを放棄しているような感じだ。
あぁ、もう何をしても無駄だ。だから私は何も話したくないし、何もしたくなかった。戦う意思とかないのでお願いです、ソッとしてください。
廊下に血の滴がポトポトポトボドボドボトドロドロドロドロペチャペチャペチャペチャ.......
「帰る...」
死にたくない。だから帰ろう。左手、運がよかったらなんとかなる。
グロッキーなヘーデルとグレーテルの道しるべみたいにポトポトと赤い転々が廊下に走り、私は普通にかえった。
普段大人しい子がキレると結構怖いって奴です(^o^;)