第2話 糞教師
結論から言うと、イジメは大きくなってきた。
『死ね』『殺す』は当たり前。机はグロッキー状態で使えるような状況じゃないので友達に助けてもらっている。
何故こんなに大きくなるんだろうか?と友達に聞くと
「茜ちゃんってさ、強いから何しても大丈夫だって思っちゃうんだよ」
「いや、私だってストレス溜まってるよ?」
「あ~うん、でもそれって私達以外分からないよ」
ちょっと理不尽だなぁ~なんて思ってみたりとか。だって私は普通にストレスは溜まる。怒りだってある。
でも顔に喜怒哀楽がでないから、わかりづらいらしい。
「茜ちゃん、よかったら仲直りの印に一緒に食べない?」
ある日のお昼の時間、ゆかりちゃんはいきなりそんな事を言ってきた。ニコニコ笑顔は憑き物がなくなったようだった。
「ほら...なんか最近、茜ちゃん可哀想だし...私もう怒ってないから、一緒に食べよ?」
端から見たらなんて心優しいゆかりちゃんなんだろう。本当に優しいね、イジメの被害者だったのに、その主犯格の友達だった私と仲直りなんて...ってか?。
「ごめん、ゆかりちゃんとは食べたくない」
「ぇえ!!何で!?一緒に食べようよ!仲直りしようよ!!」
「いや、そもそも『仲直り』って...私、君と仲良しだった記憶ないんだけど」
「何で!?もう私怒ってないよ!!」
「いや、君の事はどうでもいい。私がいやだから」
そういって、私は給食の御盆をもって隣のクラスに行った。このクラスで食べると大変なことになるのは承知している。
「ちょっと!!」
後ろから声が聞こえるが無視!、うん、この子との関わりって殆んどなかったと思う。子供って不思議なことを言うな~。あ、私も子供だ。
隣のクラスで友達と一緒に昼食を食べて、軽く談笑をした。周りでヒソヒソと話し声がきこえたが、久美ちゃんが折り紙で猫を作ったので、私たちはそれに没頭した。
意外と難しくて、何度か折り紙を破ってしまったが、3度目から上手くできた。フフン。
そんな時間もあっというまに過ぎてしまい、五時間目が始まりそうになったので、元の教室に戻ろうと廊下にでた。
「あ、先生...」
そこで、担任にあったので猫を自慢しようとしたら怖い顔をされた。
「茜!!聞いたぞ!!またゆかりをイジメたらしいな!?」
いきなり大声で怒るように言われ、私はちょっと驚く。クスクスと何処かで笑い声が聞こえた。
「ゆかりはな、お前と仲直りしたがってたのに...お前と来たらそれを酷い言葉で断ったほうじゃないか」
「そもそも仲良くなかったし」
「屁理屈を言うんじゃない!!ゆかりは悲しがってたぞ!!なんで仲良くできない!?素直に謝ればいいだろう?これはイジメだぞ!」
「私、机に落書きがありました。先生も見てますよね?」
そういうと、先生は目線をそらし嫌な顔をした。これはイジメだと判断したくないのが現状だろう。
「話を変えるんじゃない!!アレは悪ふざけだ。如月は友達と後で助けてもらえるだろう?それにお前は...
強いから何とも思ってないだろう!!」
..........ブツリ........
頭の中で嫌な、鼓膜が破れたような音がした。きっと気のせいだろう。
友達がいたら、イジメではないのだろうか?大丈夫に見えたら、イジメじゃないのだろうか?
「大体、イジメをしていたお前がそんな事をいえる立場か?」
「私、イジメなんてしてません」
「見てみぬフリはイジメだ!!ゆかりはそれで死にかけたんだ!凄く悲しかったんだろう...
何も傷ついていないお前が偉そうにするんじゃない!!!」
..............プツン...............
私はポケットに手を入れた。
「先生、これを見てください」
「...それは...」
私はポケットから手を出し、『あるもの』を...ギュッと握りしめた。
「如月!?」
グジュリ...
私の握った手から嫌な音と血がポトポトと流れ落ちる。そして握っていた手を開いた。うわぁ、グロテスク...
「キャァアアア!!」
私の手を偶然みた女の子たちが悲鳴をあげた。
その悲鳴に、何だ何だと野次馬が現れて中にはゆかりちゃんもいた。
「これが私の痛みだ!!!糞教師!!!」
大きく大きく、私ってこんなに大きく声が出るんだと思う位に、目を反らそうとする担任に見せつけた。
あ、私も結局は子供なんだ。