第1話 ターゲットにされた少女
私の名前は 如月 茜。小学5年の女子。
少し可愛いのと、ちょっと冷めているところ以外は普通の女の子だ。
全ての原因はリカちゃんだった。猫目なのが特徴の美少女で、このクラスの中心人物だった。
少し前、このクラスにはイジメ問題があった。なんてことはない、よくある子供のイジメ。
そのイジメの主犯はリカちゃんで、被害者はゆかりちゃんだった。『だった』つまりは過去形なのである。現在、イジメの標的になったのは...
「茜、学校に来てんじゃねーよ!」
私である。
「ごめんなさいね、義務教育なんで学校に行かなきゃなんで」
私は暴言に対して、ティッシュでバレリーナを作りながらそう返した。意外と難しくてハマってしまった。
「茜ちゃんってさ、イジメやってたんだって」
「うわ~最低...」
「何で学校に来てるの?」
ヒソヒソ話が聞こえるが、私はバレリーナ作りに励んでいるため、それどころではない。あ、破けちゃった。
まぁ、何で私がイジメの標的にされたかというと、少し前にこの学校ではイジメ問題があった。その被害者だったゆかりちゃんは自殺をはかって屋上から飛び下りた。
それで死んでくれたなら、よかったんだけど、病院に運ばれたゆかりちゃんは何と生きていた。そしてイジメをしたリカちゃん達に訴訟を行った。
結果、色々な証拠が出た為にゆかりちゃんは訴訟に勝ち、リカちゃん達は賠償金を払うことになった。
リカちゃん達はその後、風評被害にあってどこか遠い町の私立に転校したと聞いている。携帯番号教えてくれたから、今でも時々連絡はとってる。
私の場合は単に見ていただけなので何の負い目もなく、イジメ問題はこのまま終わり、ゆかりちゃんはチヤホヤされてめでたしめでたし...には、ならなかった。
「私ね...茜ちゃんにもイジメられてたの...」
何故か彼女は私をターゲットにしだした。嫌々、なんでだよ。と思ったが、彼女の心境は分からない。
まぁ、皆は面白半分や無責任の正義感等で私をターゲットにすることは楽しんでいるみたいだ。
「うわ~...なんだこりゃ」
私の机が偉いこととなっていた。油性で『死ね』や『バカ』と落書きされ、タンポポの花があったりとかゴミが散らばっていた。
「茜ちゃーん、手伝おうか?」
「私、雑巾もってくるよ」
「じゃあ私、大きい消しゴムあるからそれ持ってくる」
取り合えず、机の上を払っていたら友達に声をかけられた。イジメられていても、友達ぐらいいる。
「んー大丈夫。一応使えるから」
消しゴムや雑巾をもってくる彼女達にそういった。ぶっちゃけこれで困るのは私じゃなくて学校だしね。
「お前らー席につけー」
ゴミを払っていたら、先生が教室に入ってきた。皆が席に座る中、私だけはポーっと立っており当然のことながら先生と目があった。
先生は私の机の回りにある花やらゴミやらの事に触れたくなさそうにしながらも、無視する訳にもいかず、席に座らない私に注意した。
「その...如月、席に座りなさい」
「私の椅子が画鋲だらけなので座りたくないです」
途端に爆笑の渦に巻き込まれる教室。友達と私は無表情のままだった。
「じゃあ...それをとればいいだろう」
「問題はそこですか...」
ハァ...と私は溜め息をつきながら、椅子に張り付いている画鋲を一つ一つ取って、手のひらに乗せる。10~15位ある画鋲を全部とってから椅子に座った。
一言も喋らない私に先生は気まずそうに、けれど何処か安心したような目でみた後、授業を始めた。
もうこの教師に思うことはない。教師も人間。はい終了。
「じゃあ、教科書の26ページを開きなさい」
何事もなかったように授業は始まる。何事もないのか?いや、この教師にとっては何事もないのだろう。
「教科書を忘れてきたのか?」
先生は教科書を出そうとしない私に対してそういってきた。嫌々、教科書はもってますよ~。ただ単に...
「ノートが使い物になってなくて、教科書の中にカッターの刃が仕込まれてるので使えません」
「......」
淡々といい放つ私に先生はもう何も話したく無さそうであった。私はジッと、先生の目を見ていたが反らさせた。
「このままでいいですか?」
「あ、あぁ」
終始、無表情で授業をポー...っとみていた。
「わー...イジメの女の子だ...」
「何であの子だけ学校に来てんの?」
「ゆかりちゃん可哀想だよね...」
今日も私はヒソヒソ話の空間に身をおいている。女子のヒソヒソ話は隠す気がなく、相手に伝わるようにしていると思う。
「ねぇ、茜ちゃんなんで学校に来てるの?人間として恥ずかしいと思わないの?」
紙でお花を作っていたら、一人の女子が表れた。私はチラリとその子を見たが、お花を作る方がいいと考えて再開する。
「何無視してんのよ!!」
女の子は怒って造った花を振り払った。辺りに散らばる花。
「拾ってください」
「ハァ!?」
「落とした物は拾いなさい、人間として恥ずかしくないんですか?」
女子がさっき言ってた言葉をそのまま返す。
「それは、茜ちゃんが無視するから...」
「義務教育でちゃんと学校に行き、休み時間を大人しく花作をしていた私と、いきなり暴言を吐いて人のものを地面に叩きつけた貴女、どちらが悪いですか?」
取り合えず、私はゆっくり丁寧にその子に諭した。しかし、その子は顔を真っ赤にして「バーカバーカ!!」と叫んで何処かへいった。
バーカと言いたいのは私の方だバーカ。
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