初陣
いた。
二時。高度はこちらより上。トラクタ。大きい。単発低翼。ヒスト丁だろう。
タフで素直だと聞いたことがある。
相手もこちらに気付いたようだ。
「基本性能はこっちが上だ。離れるな」
親切にも警告した。緊急周波数に言った。
「こちらプロネット航空軍。貴機の進路の変更を要求する」
昔はもっと長かったらしい。略式だ。
相手は無視して突っ込んできた。緊急周波数を切る。
遼機の初陣だ。こうゆうのはできるだけ笑い話になるくらいがいい。笑い話にならないということはつまりは墜ちたということだ。
すれ違いはロールで避ける。
さあ。
操縦悍は意識的に緩く。
90度ですれ違う。
背面に入れて、ダイブ。
相手は二機。
機首を起こして水平。
相手はクロス・ターンをしたようだ。
さらに引き起こす。大きな宙返り。
敵の高度を超える。背面。
隊長機が背面になって下を探した。賢明な判断だが、今回は裏目に出た。
敵の背後に滑り込む。
撃つ。
当たった。
撃つ。
翼が吹き飛んだ。
上昇。
半ロール。
やらせてやろう。
「やってみろ」
返事はないが、わかっただろう。
背後についている。
ロールで周りを確認。
遥か遠く、低空に二機。
向かってきている。
遼機が敵を撃墜した。
「集合、逃げるぞ」
カリッとマイクのクリック音がした。
帰ったらあいつの撃墜マークを描くのを手伝わなきゃな……。
* * * *
ヘルメットを置いた。
主翼から飛び降りた。




