表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Himmel Vogel  作者: フラップ
Purzelbaun
16/56

夕日のシルエット

 ブレイクではかわしきれない。即応性で言えばプロペラ後流を舵に当てられるトラクタに分がある。


 終わりか……?


 そうと分かってもラダーとエルロンを倒す。ラダーが傾いている鳳流はラダーにもエルロンの効果がある。


 直後、後ろのピストが爆散する。


「……ぇ゛……?」


 Gで声が出ない……。


 急旋回の途中、動かない首を無理やりに動かして僕は見た。


 陽光に照らされ浮かび上がるなだらかなフィレットを。


 逆ガルの上品な反りのシルエットを。


 優雅で鋭利な美しい軌跡を。


 そして……機体に浮かんだ三角形のマーキングを。


 それは……太陽を背に浮かび上がるシノタキ機のシルエットだった。


『あなたの二番機は……』


 シノタキの低めの声が無線を通して入る。


 落ち着いているような、興奮しているような。


 興奮しているのは僕かもしれない。


『……この、私』


 彼女にしては長い台詞かもしれない。


 夕暮れの紅い太陽の中に見た。


 基地の少し手前だ。


 血のように紅い光。


 シノタキは笑っているかもしれない。


 僕も笑っている。


 空なら笑ってられる。


 さあ。


 舞い上がれ、


 舞い上がれ、


 舞い上がれ、


 舞い上がれ、


 散れ。


 木の葉のように翻り。


 光のように駆け上がり。


 紙くずのように舞い散って。


 僕は空を舞う。


 敵の懐に飛び込め!


 翻れ!


 駆け上がれ!


 風のように。


 雲のように。


 鳥のように。


 時のように。


 いつまでも。


 いつまでも……


 敵を蹂躙し。


 首をねじ切れそうになるまでめぐらし。


 足がフット・ペダルを引っ掛け。


 目は風を追っている。


 心臓は時を刻み。


 指は引き金を掴み。


 ただ、そこに。


 今、そこに。


 目前に敵機が飛び込む。


 ほら、簡単だろう?


 指が引き金をなで、


 銃口は火を噴き、


 鉛弾が弾き飛ばされ、


 ジェラルミンは紙を吹き飛ばすように引っぺがされ、


 エンジンが火炎を吐き出し、


 蒼空に紅蓮の花が咲く。


 地平線にグレィの柱が立つ。


 ほら、簡単だろう?


 バレル・ロール。


 スリップで機首を下に向ける。


 火を噴く。


 敵が爆散。


 旋回。


 シノタキの横に並ぶ。


 彼女はこちらに手を振る。


 そして、フルスティック・エルロンロール。


 その風きり音は鎮魂歌(レクイエム)?それとも賛美歌(ヒム)


 夕日は沈み。


 空は闇に染まっていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ