プロローグ
森の中を僕は駆けていて
薄暗い
後ろから追っ手が追ってくる
なぜ追われているのか思い出せない
ただ、捕まってはいけない、という本能が僕を動かしていた。
走る
走る
でも、すぐに追いつかれて
遺跡が目に映る
石造りだ。何かの本で読んだことがある…。確か、神殿だったと思う。
中に踏み入って、中へ隠れる
うずうずしいほどまでに描いてある壁画
中心の太陽に向かって人が祈っている
太陽の光は触手の様
奥へ進むと、ちょっとした小部屋があった。
中は静か
外に比べて格段に音がないわけではない
光のコントラストでそう感じる
壁画はない
うずうずしさはない
ここで…
ここで、死ねるだろうか
ポケットにはお守り代わりのナイフ
足音が聞こえた
向こうから向かってくる
目を瞑る
息を止め
何もない
何もない錯覚
ここには何もない
死ねる気がした
ここでは、そんなことは些細なこと。
手は僕の脳の指令を正確に読み取り
ナイフは僕に向けられる
さようなら
足音が聞こえる
さようなら
手を右から左にスライドするように
さようなら
さようなら
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