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達人




 智世は古海に誘いを断られた後、千夏と一緒に色んな教室を回っていた。


 そこでは、テーブルゲームや昔の遊びなどが体験でき、千夏とともにとても充実したひと時を過ごすことができていた。


「いや~なっちゃんとこんなに遊べる日が来るなんて思ってなかったぜ」


「……うん、そうだね」


「で、なっちゃんはさっきからなんで顔を合わせてくれないんだ?」


 智世が千夏の手をとったあたりから千夏が全く顔を合わせてくれず、智世は少し困惑していた。


 だが、そんなことは傍から見たら明確なのだが、智世が気づくことはまずないだろう。


 そんな感じの二人だが、智世も千夏も心から楽しんでいた。


 今まで、一緒に居たくても居れなかった。 こういうふうになりたいと願っていても叶わなかった時間、そんな幸せな時間が二人の間で流れていた。


「そういや、古海のやつどういう用事があったんだろうな」


「そうだね、何か少し企んでるようにも見えたけど……」


「ま、今はあいつのことはいいか。 それよりなっちゃん喉渇いてない?」


「え、うん。 すこし」


「わかった、じゃジュース買って来るから待ってて」


「うん、ありがと」


 離れゆく手の感触を惜しみながら千夏は智世を見送った。


 千夏はさっきまでつないでいた手を眺め、智世のての感触を確かめながら顔を赤く染めていた。


 ほんとに智世くんは私なんかと付き合ってくれてよかったのかな……


 あの日からだいぶ薄れてきたこの気持ち。


 でも未だにすべて拭うことはできていない。


 これから、少しずつ時間をかけてこの気持ちをなくしていこう。


 そう思い、ふと近くにあった椅子に腰掛け落ち着いていると、ふと声をかけられた。


「ねぇ、君ひとりかい?」


 頭を上げると、そこには3人程男子生徒が立っており、身長などからみて多分上級生だということが分かった。


「いえ、一人じゃないです」


「じゃ、連れの子が戻るまでお話しようよ」


「結構です」


「いいじゃん、どうせ今暇してたんでしょ?」


 しつこい……


 早く智世くん戻ってこないかな、と心の中で思っていたらようやく智世が戻ってきた。


「……何してんすか」


「あぁ? てめぇにはかんけぇねぇだろうが」


「その子僕の連れなんで、行こう千夏」


「なんだぁ?それが上級生に対する態度か?」


「しつこいな……さっさと行こう」


「待てコラ」


 飛んできた拳をギリギリのところでなんとかかわした。


「……なんすか?」


「一年の癖に調子こいてるみたいだからよぉ、今のうちに締めとこうとおもってよ。 これが先輩の優しさだ」


 何が優しさだ、ただ喧嘩ふっかけてきただけじゃねぇか……


「千夏、ちょっと下がってろ」


「えっ……」


「大丈夫、こっちからは手出さないから」


「へぇ、余裕じゃねぇか」


「あんたら程度余裕すぎるっすよ」


「んじゃ、頑張って避けろよっ!!」


 三人同時に殴りかかってきたが、それを智世は難なくかわし余裕の表情でその場にたっていた。


「チッ! 一回よけれたくらいで調子のんなよッ!!」


 さらに続けて攻撃してくるが、智世は危なげなくかわし、反撃しようとした寸のところで止めた。


 なっちゃんに手出さないって約束したんだった! とはいってもそろそろめんどくさいし、誰か先生よんできてくんねぇかな……


「三対一とは関心せんな、よし、そっちの童にワシが加担してやろうぞ」


「あんた、誰だ……」


「まぁ、ワシのことはこの件が終わってから話そう。 ではさっさと終わらせるとするかの」


 いきなり現れた男子生徒の格好はすごい不思議で変わっているもので、制服を着ているのだがその上から法被を纏い、足元はスリッパではなく足袋という奇妙なものだった。


 終わらせる、そう言ってからすぐさま動き出し、流れるような動作で3人の顎を蹴り抜き一気に3人を床に倒しこんだ。


「す、すげぇ……」


「おい童、ぼーっとしておらず逃げるぞ」


「えっなんで」


「ここにおっては何かと面倒になってしまう、さ、行くぞ」

 




「あ、あの、助けてくれてありがとうございます」


「よいよい、主の連れであるおなごを守ろうとしてる姿が見えてな、してよく見てみると主からは全く手を出してなかったからの、わしが代わりに足を出してやったまでじゃ」


 そう、さっき顎を打ち抜いた動作はすべて足で行ったもの。


 その刃物のように鋭く、的を射るように正確な一撃は見る人すべてを魅了するものがあった。


「して童、主とその子の名はなんという」


「日向咲 智世って言います」


「宮崎 千夏です」


「日向咲 智世とな、なんともハイカラな名前をしよるの~」


「あなたの名前は?」


「わしか? わしは『鳶 慶吾』(とび けいご)と申す。 学年は3年じゃ」


「鳶、慶吾……って学生だったんすか!?」


「何をいうか、ちゃんと制服を着ておろうに、ちゃんと足袋も室内用じゃぞ?」


「えぇ、まぁそうっすけど……」


 そんな格好をしている人を学生だと思う人は何人いるだろうか……


「ん?ちょっとまて……鳶慶吾ってあの鳶慶吾っすか!?」


「ん? 主がどの鳶慶吾をさしているかはわからんが多分そうであるぞ」


「智世くん知ってるの?」


 全く話について行けていない千夏は、智世に質問した。


 すると智世は焦った様子で口を開く。


「し、知ってるもなにも……この人小学生の頃からずっと古武道で全国1位の人だぜ」


「ほぉ、よくしってるのぉ」


「でも、この辺に住んでるなんて聞いたことなかったんすけど」


「そりゃそうじゃ、なんせ公にはまだわしがこっちにきたことはいっとらんからのぉ」


「こちらにはいつごろ?」


「先月、丁度学年が一つ上がった頃じゃ」


「とりあえず、サインもらってていいっすか?」


「別に構わんが……ほれ、これでよいか?」


「はい! ありがとうございます!!」


「ついでにアドレスも書いておいたから、何か用があるときは呼んでくれてかまわんよ」


 そう言い残して鳶はその場を去っていった。


誤字脱字などがあればご報告お願いします。

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