新入生歓迎会
ちょっと書けたから投稿
羽田 古海は放心していた。
「これより、新入生歓迎会を始めたいと思います」
桜が散り始め、春が去りゆき夏を感じだした5月の始め、新入生歓迎会は行われた。
この、新入生歓迎会は、各教室やグラウンドなどを使って在校生とゲームをするというもので、これにより在校生と新入生の仲を深めてほしいというもの。
この計画をまとめるのには相当苦労したのだろうと、福部さんの顔を思い浮かべながら、軽く哀れんでいると、智世が声をかけてきた。
「なんだ? 智世」
「いやさ、どうせならお前も一緒に回らねぇかな~と思ってよ」
にこにこしている智世の横には、千夏が立っており、その状況で誘ってくるとは、と軽く苛立ちを覚えたがまぁ仕方のないことだと割り切り断ることにした。
「済まないな」
「いいって、それよりあっちに元晴たちがいたから行ってみろよ、じゃな」
その気遣いを千夏にむけてやれ、と思いながらある人物に会うため足を進めていると、元春たちに出くわした。
「あ、古海」
「おう、元春、伊月」
「いまからあっちの教室に行こうと思ってるけど、一緒に行かないかニャ?」
「誘ってくれるのはありがたいけど、ちょっと用事があるんだ」
「そっか、じゃあしょうがないね」
そう言って元春たちはわいわいはしゃぎながら行ってしまった。
「さて、そろそろ本命に会えてもいい頃だと思うんだが……」
色々な教室を覗きながら探していると、ようやく見つけた。
「あ、福部さん、一緒に行動してもいいですか?」
福部と合流できた古海は福部とともに見回りを行っていた。
「羽田くんから僕に用事だなんてどうしたんだい?」
「いえ、用事というほどのものでもないんですけど……」
「あはは。君も夏希について知りたくなったのかい?」
見当違いな質問に古海は首をかしげた。
「あれ? 違ったかい?」
「えぇ……なんでそう思ったんですか?」
「いままでそうだったから、かな」
頬を掻きながら乾いた笑いを福部は漏らした。
「でも、違うんならなんで僕なんかに用があるんだい?」
「単純にあなたのことを面白いと思ったんですよ」
これはいい小説の材料になると思ったとはとても言えないので一応そう言っておく。
だが、興味を持ったことは嘘ではない。
さっきから隣を歩いていてわかったが、あれだけの支持を得ている夏希さんの一番近くにいるのに周囲の視線があまり痛いものではない。むしろ友好的なものが多くよく信頼されているのがわかる。
「僕が面白いか……初めてだなそんなこと言われたの」
「そうですか? まぁ、そうかもしれませんね」
「どういうところが面白いと思ったんだい?」
「そうですね……夏希さんの一番近くにいるのに皆から嫌われている様子が伺えないところ、とかですかね」
そう言うと一瞬福部の表情が固まった気がした。
「まぁ、いろいろ理由はあるんだけどね、これはちょっと答えなくていいかい?」
「いいですよ、なんかすいません」
十分すぎる収穫だ。
古海は心のなかでそう思った。
ここですべて聞き出せるとは思ってなかったし、『何かあった』またはそれらしいことがあった、それがわかっただけであとは頭の中で想像して十分に作品として持っていける……!!
「羽田くん、僕からも君に質問してもいいかい?」
「……えぇ、いいですよ」
「ありがとう。 君はどうして僕のことを面白いと思ったんだい?」
「さっき言ったとうりですけど」
「いや、そういうことじゃないんだよ、君が僕に話しかけてきたことの本当の理由はそうじゃないんじゃないかい?」
「……言ってる意味がよくわかりませんが」
「つまり、こういうこと、どういう目的で僕に……いや、僕たちに近づいてきたんだい?」
少し二人の間に沈黙が走った。
福部は気づいてはいないが感づいてきている。
ここでバレても何も問題はないが、それでは面白くない。 ここは煽るような発言をして誤魔化すべきか……?
そして、出た言葉がこうだった。
「それはきっと福部さんの考えすぎですよ」
その後も、福部と行動を共にしていると、少し問題が起こった。
「新入生と在校生で喧嘩?」
「は、はいっ! ちょうどあそこのクラスで!」
この報告しにきた男子生徒は急いで先生を探していたところ、福部を見つけたから急いできたという。
福部も急いでその現場へと向かったが、そこには男子生徒が3人完全に伸びて倒れているところだった。
「この状況を全部説明出来る人はいますか!?」
「は、はい……」
一人の女子生徒が手を挙げて福部の前まで出てきた。
「えっとですね……まず、そこの倒れてる3人が女の子をナンパしてて、私もとめたほうがいいのかな~と思ってたんですけど止めに行けるほど勇気がなくてですね、そしたらその子の彼氏っぽい男の子が出てきて女の子をかばって必死に抵抗してたんです。あ、その3人は手を出してましたけどその子は出してませんでした。 そうしてたらもうひとり男の人が来てですね3発でその人たちを完全に伸びさせてから何処かへ行きました」
「その、女の子と男の子二人は?」
「逃げました」
「え?」
「あそこの扉からダッシュでにげていきましたよ?」
なんか面白いことがあったんだな~と心から傍観者目線でただ眺めている古海はただ悔やんでいた。
なんで、その現場に遭遇できなかったんだっ! と。
「羽田くん! 先生を呼んできてくれないか?」
「あ、はい。 いいですよ」
そう言って古海はこの教室を出た。
感想をいただけると嬉しいです。