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先輩?会長?

安定の短さw

誤字脱字などがありましたら報告ください


 春も過ぎて少し熱くなってきたこの時期。


 そろそろ衣替えでもするかなどどぼんやり考えていた昼休み。 古海は自動販売機の前でぼーっとしていた。


「何ぼんやりしているのだ? 少年」


 そんな古海に話しかけてきた一人の女性がいた。


「えっと……どなたですか?」


「む……私の名前を知らぬとは……君は1年生か?」


「えぇ、まぁ……」


 この学校の制服は学年別にこれといった特徴がないので判別しにくい。 学校側の目論見としては『学年別の壁をなくすため』らしいが、あまり意味をなしていないのが現状だ。


「ではまず自己紹介から始めるとするか。 私は如月きさらぎ 夏希なつき3年だ」


「1年の羽田 古海です……で、俺に何か用ですか?」


 正直放っておいて欲しいのだが……


「いや、特にこれといった用はないのだがな、どこかボーっとしておったから悩みか何かあるのではないかと思ってな」


 古海は如月と名乗った女性を観察していた。


 服装はきっちりしており、髪はショートに切りそろえられていて何というか、生徒の見本といった感じの印象を受けた。


「悩みですか……そうですね、友好関係に少し」


「私でよければ相談に乗るぞ?」


 なら言い終わるまで待ってください……


 この人は他人の役に立ちたいと心から願うタイプの『良い人』なんだろうな。 と心の中でぼそっと呟いたあと、面白そうだからと話に乗ってみることにした。


「実はですね、友達に彼女ができたらしく自分の前でずっとイチャイチャしてるんですが、友達の僕はどうすればいいのでしょうか?」


 夏希は顎に手を当て少し悩んだあとキリッと表情を変えてこう言った。


「うむ、友達として生暖かい目で見といてあげればいいのではないだろうか」


 そう言った夏希を見ながらしばらく呆けた後、じわじわと笑いがこみ上げてきた。


「そ、そうですね、そうしときます」


 笑いを押さえ込み表情に出さないように気をつけてそう答えると満足したように頷いていた。


「いたっ!! やっと見つけたぞ!」


「げ……福部……」


 苦虫を噛み潰したような表情で福部と呼ばれた男を見て、夏希はこう言葉を残し早急に逃げ出した。


「また会おう羽田くん!」


 夏希を見届けた後、息も絶え絶えやってきた福部という男は、古海に話しかけてきた。


「はぁ……はぁ……き、きみ、あの人から何されてたんだ?」


「なんか、相談に乗ってくれましたけど」


「またあいつは……全く解決にならない回答が帰ってきただろ?」


「まぁ、そうですね」


 面白かったので別にいいんですが


「次にあいつを見つけた時は生徒会室まで連れて来てくれると助かる、それじゃ」


 福部はそう言った後走っていってしまった。







「……ということがあった」


 教室に戻った古海はさっきまでの状況を智世、元晴、伊月の3人に話した。


「な、なんなのその面白そうな人たちは」


「んで、どういうひと達なんだ?」


 腹を抱えて息も絶え絶えに笑っている元晴を他所に、古海は伊月に聞いてみた。


「その人たちなら有名ニャ、如月夏希はこの高校の生徒会長ニャ、この人は高校1年の時から生徒会長の

席に居座ってるみたいニャ。 んで、古海が言ってた福部って人の名前は『福部 哲』(ふくべ さし)、こっちも高校1年の頃から生徒会副会長やってるみたいニャ」


「スゲェな、どっちとも1年から学校のツートップだなんて」


 そう言った智世に全員で頷いた後、さらに智世が疑問を付け足した。


「でもよ、そんな1年からやってたら2年3年から色々恨まれたりしたんじゃねぇの?」


 そう伊月に聞いてみると


「それが、全く問題なかったみたいなのニャ。 生徒会長の方は美貌と人望と人柄で1年から3年まで大人気、学校の宣伝にもなるからって学校側も重宝してるみたいニャ」


 そういえば高校紹介のパンフレットにも載ってたな、とふと思い出していると、伊月がさらに話を続ける。


「しかも結果が出てるらしくてニャ、なんと如月夏希が生徒会長になってからこの高校倍率が急に上がったらしいニャ」


「……マジかよ、じゃぁさ、その福部って人は何なんだ?」


「何もないニャ」


「「「は?」」」


 あまりびっくりしすぎて、ついハモってしまった。


「いや、まて。 そんな凄い人の隣にいるんだろ? だったら普通だなんて」


「普通ニャ、驚く程普通ニャ」


「俺もそんなにすごい人には見えなかったぞ?」


 古海と伊月の発言で智世は頭を抱えながら疑問をぶつけた。


「だったらよ、なんで1年から生徒会副会長なんかしてんだ?」


 その質問に答えられる者はこの中にはいなかった。





 

 そして数日たったある日のこと。


 普通に廊下を歩いていると生徒会長と副会長が目に入った。


 あちら側も、古海にきづいたらしく、夏希は軽く手をふってきた。


「やぁ、羽田くん。 問題は解決したかね?」


 一瞬なんのことかわからなかったが、ふと、この間相談に乗ってもらったことを思い出し、笑顔で答えておくことにした。


「えぇ、おかげさまで」


「そうかそうか、それはよかった」


 頷いている夏希にバレないように、福部は古海に耳打ちをした。


(で、なんてアドバイスもらったんだ?)


(生暖かい目で見とけって言われました)


 それを聞いた福部は大きなため息をこぼし、軽く古海に謝った。


「済まない……ためにならないアドバイスだっただろう」


「いえ、面白かったのでいいんです」


 そう言ってくれると気が楽だ、と苦笑いで返した福部に対して、古海は質問をかえした。


「そういえば、この間は一体何の要件で生徒会長を探してたんですか?」


「こら、羽田くん。 そんな他人行儀な言い方をしないで夏希さんと呼びなさい」


「……夏希さんを探してたんですか?」


 千夏を小突いた福部は、古海の質問に答えた。


「あぁ、あの時は新入生歓迎会をやるってコイツが言い出してな、それで何をやるかの企画書をごそり出すだけ出してきたんだが、そのあとの細かい説明やルールなどを決める役割を俺に丸投げしてきた」


「そういう仕事は福部の担当だ」


「面倒事を丸投げした奴が何を言っている」


 さらに2、3回夏希を小突いた後、まだ仕事があるからと、生徒会室へ戻っていた。



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