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始まり?

 私立常ノ宮高校。


 それが古海が通う学校の名前だ。


 この高校を選んだ理由は、イベントが楽しそうだから、図書館が大きいから、家から近いからといった物が大きい。


 進学や就職のことを考えて高校を選ぶやつも少なからずいると思うが、古海の頭にはそんなことはかけらも思い浮かばなかった。


 現にお金にはこれっぽっちも困っていない。


 両親は早くなくなってしまい、お金困るような人生を送ってきたかのように思えるが、古海が仕事を始めたのは中学に上がってからすぐで、そして成功したのだからお金に困るはずもなかった。


 そんな彼が今困っていることは


「なぁなぁ、こっさんなんで無視したんだ? 俺は今腹ペコで死んじゃいそうなんだよ?」


 友達の対処法だ。


 このうざい……もとい友人の名は『日向咲 智世』(ひゅうがさき ちよ)。漢字を知らずに名前を聞いたら女かと思うかもしれないが、れっきとした男である。


 しかもイケメンで運動ができ、勉強もそこそこ出来る。


 そして、昨日カラオケで古海がムキになったきっかけは智世にあるのだ。


『え、こっさん90点も取れないの?』


 古海は一般的に見たらうまい方に入る。だが智世はそれを大きく上回り、98点以下なんてありえないなどと平気で言える程歌が上手い。


 そして、古海は今朝のメールの内容と昨日のことを思い出し、額に青筋を浮かべている所に智世が来たのだ、イライラしないはずがない。


「大体、智世お前のアレは人にものを頼むような態度か?」


「だって事実じゃん。こっさん歌下手だったし、腹減ってたから心優しいこっさんなら飯作りに来てくれるかな~とおもってよぉ」


「じゃぁよかったな。今朝俺がお前の朝食作ってたらきっと毒盛ってたぞ。大体俺が下手なんじゃない、お前の基準がズレすぎてるんだ」


「そうかなぁ? 俺の周りの人たちは俺よか上手い人たくさんいるけど」


 どこの人外集団だよ、と内心ツッコミをいれとにかく足を進めた。


「てか、こっさん。そろそろ受信拒否解いてくんね?」


「解く必要性がないな」


「俺はあるし、ほら、連絡取り合うとき何かと不便じゃん?」


「その辺はなんとかなるだろ」


 古海が意地でも受信拒否を解くことがないと悟り、あんなこと言わなきゃよかったと今更後悔し、ため息をこぼした。


「ん? あ、なっちゃんだ」


 智世の視線の先には、なっちゃんと呼ばれた女の子宮崎みやざき 千夏ちなつがいた。


「おーい! なっちゃん! おっはよ~!」


 元気よく声を掛けた智世だったが、千夏は、少し視線をこちらに向けたあと、そのまま行ってしまった。


「はぁ……今日もダメか」


「お前も諦めが悪いよな」


「だってよぉ、俺なっちゃん以上に可愛い人見たことねぇぜ?」


「普通に見れば可愛いかもな」


 まぁ、智世が千夏に関わることになったとしても、俺には関係のないことだからどうでもいいか、と考えるのをやめ次の話題を提供してそのまま足を進めた。







「話があるからちょっと来て」


 昼休み、古海は突然宮崎千夏から声をかけられていた。


 目の前にいる智世の視線がうざかったから、希望のない質問をしてみる。


「断ることは?」


「出来ると思う?」


「あ、あの、なっちゃん。 俺も話にまぜ」


 話に混ざろうとしてきた智世は千夏の睨みで一瞬にして固まり、古海はこの状況を少し傍観的に見ていた。


「ここじゃだめなわけ?」


「できれば人気のないところがいい」


 こりゃ断れそうにないな。


「んじゃ智世、ちょっと席外すわ」


 未だ固まったままの智世にそう告げると、千夏のあとについていった。


「んで、話って?」


「そんなに難しいことじゃない。 単純に日向咲くんをどうにかしてほしいだけ」


「理由は?」


「めんどくさいから」


「めんどくさい、ねぇ……」


 古海は今の状況を少し楽しんでいた。


(このことを智世に伝えれば、泣くかな。よし、今朝のお返しとして、少しオーバーな具合に伝えよう)


「何考えてるの?」


「いや、それ伝えたら智世のやつ泣くだろうなと思ってさ」


「えっ……」


 今の千夏の反応に古海は少し違和感を覚えた。


「どうしたんだ? 智世は面倒だから話かけてきて欲しくないんだろ? だったらいいじゃないか」


「で、でもそこまでする必要は……いえ、なんでもないわ」


 なんでもない、と言った割に悲しそうな顔をしている千夏を見て、古海は無意識に言葉が出た。


「そんなに怖いのか」


 と、それはどういう意味で、どういう気持ちで自分が言ったのかは古海にはわからなかったが、千夏への効果は大きかったらしく、少し驚いたような表情をした後、睨みつけてきた。


「どこまで知ってるの……?」


「なにも知らないが?」


「そ、そう……じゃ、日向咲くんの事よろしくね」


 そう言った後、千夏はそそくさとその場を去って行った。







 古海はぐったりしていた。


 オールして溜まっていた眠気と疲れが一気に流れこんできたのだ。


「こっさん聞いてる? なっちゃんと何はなしてきたの?」


「しらん」


 それに追加で、智世からの質問攻め、いっかい殴ってもいいだろうか。


「古海、なんか疲れてるね」


「ん? あぁ、堺か……」


 そんな状況下に入ってきたのは、昨日のカラオケメンバーの一人『堺 元晴』(さかい もとはる)。智世もそうだが、こいつらはここ常ノ宮に入ってからできた友達だ。


「昨日のカラオケってそんなに疲れた?」


「違う……ちょっと徹夜したんだよ」


「へぇ~また、なんでそんなぐったりなるほど徹夜したの?」


「……見たい深夜番組があってな」


 こいつらには自分が小説家だということは言ってない。


「そっか、はいこれ、この前借りてた小説。 やっぱり『蚕』の作品は面白いよね」


 理由は、これだ。 俺は匿名で小説を書いており、ペンネームは『蚕』こかいをもじっただけなのだが、わざわざ自分で言うのもなんか嫌だし、言う必要もないだろうから。


 それはそうとして、だ。


 古海は千夏に頼まれたことは、やっていない。


 むしろ、これからどうやって智世と千夏を仲良くさせようか考えているところだ。


 千夏の抱えている問題はきっとナイーブなものだということは予想できる。


 そして、その事情は誰かを巻き込んでしまうようなことであることも、だから、智世には頑張って主人公になってもらおう。


 友人の恋を叶えたいというのもあるが、これは結構いい小説の材料になるかもと考えている面もある。


 しかも、千夏が俺に頼んだのは『智世をどうにかしてほしい』といったものであって、自分に話掛けてこないようにして欲しいとは言っていない。


 つまり、古海は約束を破っていないことになる。


「よし、智世今度宮崎さんをお茶にでも誘うか?」


「なっ!! お前、そんなに仲良くなってたのか……ッ!!」


「バカ、お前のためだろうが、まぁ、別にお前が嫌ならいいがな」


「なになに? 面白そうな事するの? だったら僕も混ぜてよ」


 古海は智世を挑発するように誘いをかけ、元晴はノリノリで話に乗ってきた。


「よし! こっさんには絶対に負けねぇぞ!」


 どうやら、バカはバカな方向に勘違いしてくれたらしい、まぁ、そっちのほうが面白そうなのでいいのだが。


 そんな感じで、今週末千夏を誘ってお茶することが決定した。

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