表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

透明な雫の味

作者: 七瀬みゅう
掲載日:2026/02/20

「 今日 」は、朝から雨が降っていた。

灰色を滲ませたような曇り空が空一面に広がり、音もなく降り注ぐ雨粒が、地面に染みを作りながら静かに消えていく。

そんな、あまり気分の上がらないような日。だけど、私__天宮初夏にとっては特別な日。私の好きな、「 彼 」の誕生日であり、告白すると決意した日だから。


「 ……どうしたんだ? 」

放課後、公園にある屋根の下で、彼__夜影星斗はそう問うた。

サファイアを思わせる瞳が、私をまっすぐに見つめている。スポーツ万能で人気者な、私の幼なじみ。そして想い人。

「 ……あの。 」

絞り出した声はわずかに震えていた。緊張で汗をかいたのか、しっとりと濡れた手をきつく握りしめる。

「 ……ずっと前から好きでした。付き合ってください! 」

沈黙ののち、私の口からこぼれたのはそんなありふれた言葉。

彼のサファイアの瞳が見開かれる。静寂が漂い、彼の表情が真剣さをたたえた。

「 ……ありがとう。 」

まだ驚きが滲んだ、聞き慣れた声が耳に入る。音もなき風が頬を撫で、彼のさらりとした黒髪を踊らせた。次に続く言葉が耳に届いたのは、数秒後にも数十秒後にも感じられた。

「 ……でも、ごめん。初夏をそういう風には見れない。 」

ぱりん、と。胸の中で何かが砕けたような音がした。

なにか口にしようと思うのに、私はなんの言葉も紡げなくて。透明な雫が屋根を伝うのが視界に入る。

『 失恋 』という二文字が、ぼんやりとした頭に浮かんだ。

「 ……そっ、か。 」

ようやく発した声はかすれていた。星斗が申し訳なさそうな表情を浮かべる。

彼が何かを口にしているけれど、すべて耳を通り抜けていく。やがて彼が遠ざかり、後ろ姿が雨景色に紛れて消えていくのを、私はぼんやりと見つめていた。


星斗を想った日々が頭を駆け巡る。彼の言葉が、表情が繰り返された。もう叶わないとわかったのに、この気持ちはまだ消せなくて。

とてつもなく消したいけど、消したくないような気もする。あなたを想った日々はたしかに輝いていたから。どこかつんとした花の香りがふわりと漂った。

はらりと零れた透明なものが、頬に触れた気がする。

それが雨なのか、別のものなのかは、私には分からなかった。

その水滴は、酸っぱく、しょっぱく、そして苦かった。

初投稿ですっ!ご覧いただきありがとうございました✨️

まだまだひよこですが、もしよろしければご感想などいただけたらうれしいです。

ちなみに初夏は「ういか」って読みますよ〜。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ