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ミメーシス・エイドロン  作者: 名無し


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3/15

才能検証

「それじゃあ、効果の検証を始めようかの」


 老人はそういった後、自己紹介を始めた。


「あぁ、そういえばまだ名乗っておらんかったの。わしはオルト・ウェルチェじゃ。スキルは…検証のために伏せておこうかの」

「俺はエルス・レルクレムです」

「そこまで固くならなくていいぞい。研究に遠慮は邪魔なだけじゃからの」


 そう言って老人ーーオルトは手を差し出してきた。

 エルスがその手を握ると、オルトも力強く握り返してきた。


「それで、俺は何したらいいですか」

「あぁ、とりあえずわしの才能を習得してもらおうかの」

「え、いいんですか?貴族ってそういうの嫌がると思ってたんですけど」

「わしは貴族である前に研究者じゃからの。それに、わしがスキルを失うわけでもあるまい。まぁ、本当にそうならないかを今から研究するんじゃがの!」


 そう言ったオルトは目をギラギラとさせて笑った。

 研究者というより、肉を目の前にした肉食獣のような視線である。


「え、えっと…お手柔らかに?」

「それは、検証の結果次第じゃの」


 オルトが、ニヤリと笑って答えた。


 そして、家に帰るのが相当遅くなることを察したらしく、エルスの目が死んだ。


「それじゃあ、検証を始めるとしようか!確か、視認することが条件じゃったの?」

「はい」

「それじゃあ、『世界変形』起動」


 ふわっと、オルトの周りに淡い光の幕がまとわりついた。


 エルスがそれをジィっと見ると、目の前に先ほどのプレートが再び現れた。

 そこには、『世界変形ーー6%』と書かれている。


「あ、『世界変形』がパネルに追加されてます」

「おぉ、そうか。それは、もう使えるかの?」


 エルスが『世界変形』を使用しようとしても、『万能の天才』はうんともすんとも言わない。

 まだ使えないらしい。


「まだ使えないみたいですね。でも、パーセンテージはだんだん上がってますね。2、3秒で1%くらいかな?」

「おぉ、そうか。じゃあ、パーセンテージが上がらなくなるまで待ってみるとするかの」


 ぽつりぽつりと、『万能の天才』に記されたパーセンテージが上がりつづけるのを眺めていた。


 パーセンテージが完全に止まったのは約3時間後だった。

 パーセンテージの上がる速度は、だんだんと遅くなっていって45%になった時点で停止した。


「ふむ、45%より上には上がらないようじゃの」

「30分経っても上がらないですしね」

「それじゃあ、一旦これで使えるか試してくれるかの?」

「了解です……いや、まだ使えないですね」

「あくまでも、才能を習得するためにはスキルの効果を知る必要がある…ということか…それじゃあ、一旦わしの才能の効果を説明しようかの」


 そう言ったオルトは、少しだけ表情を引き締めた。

 やはり、いくら研究者といっても貴族なのだろう。自らのスキルが他人に使われることに抵抗があるのかもしれない。


「わっほーい!偉大なるレオナルド・ダ・ヴィンチの才能が最初に学習するのがわしの才能になるとはのぉ!人生って最高じゃあ!」


 全く違ったようだ。

 むしろスキルを使われたがっている。


 推しのVtuberとやらにコメントを読まれた山崎が似たような反応をしているのを見たことがあったエルスは、これがオタク…と戦慄している。


「それじゃあの!わしの才能の説明を始めるぞい!まず、わしの才能『世界変形』の能力からじゃの」


 オルトは、そういって机の上に紙とペンを2つずつ用意した。


「わしの才能の能力は『予想の選択肢を狭める能力』じゃ」

「…んん?」

「まあ、言葉で言われてもわからぬか…実際に見せてやろうかの。それじゃあ、エルスくん。これに何か好きな記号…そうじゃの、丸か三角か四角のどれかを書いてくれ」

「え、はい」


 オルトはエルスの持っている紙を指差した。


 エルスは、オルトに見えないようにしながら小さく四角形をかいて、それを折り曲げる。

 それを見たオルトが、エルスに見えないように自分の紙に、何かをかいてエルスと同じように折り曲げた。


「それじゃあ、何をかいたのか教えてくれるかの?」

「あ、はい」


 オルトに言われて、紙を開くとそこには変わらず四角形が描かれていた。


「それじゃあ、わしの紙を開いてくれるかの」


 言われて、そちらも同様に開くと、ほぼ同じ場所に四角形が描かれていた。

 それを見て、エルスは少し目を見開いた。


「え?見えてましたか?」


 そうでないとは知っていながら懐疑的な視線を向けたエルスに、「見えてなかったぞい」といってファファファと笑った。


「これが、わしの才能の能力じゃよ。才能を使ったわしには、4つ程度の可能性なら一択にすることができるのじゃ。先ほどの例で言えば、四角以外の記号を書く可能性、四角形の右上側以外に書く可能性、それらの可能性を排除した結果、少年がどこに何を書くのかがわかったんじゃよ」

「すごいですね…ってあれ?それって何回も予想し続ければどんな選択肢も一つにできませんか?」

「ファファファ!よく気がついたの…ただ、それはできないんじゃよ。この才能は、一つの選択肢に対して一度までしか使えぬのじゃ。先ほどの例なら、丸と四角の可能性が残ったからもう一度どちらか予想しよう…みたいなことはできぬということじゃの」


 そういうと、オルトは紙をもう一度取り出した。


「ところで、少年。まだ才能は使えぬかの?わしの予想では、もう使えると思うんじゃが」


『世界変形ーー72%』そう書かれたパネルの右側に、船のようなものが書かれたバッチが表示されていた。

 そのバッチをエルスが右側のスロットに移すと、エルスの体が淡く輝いた


「お、使えるっぽいですね」

「わっほーい!とうとうわしの才能がレオナルド・ダ・ヴィンチの一つになったぞい!はあはあ…///興奮するのう!」


 ぴょんっと飛び上がったオルトが、地面にへたり込んだ。

 筋肉質な自分の体をギュッと抱きしめて、顔を赤く染めて、はあはあしてらっしゃる。

 だいぶ気持ちが悪い。山崎の気持ち悪さを100とするなら87くらいを記録するだろう。


「え、えっとちょっときも…危ない感じになってるので…落ち着いてくれます?」


 無意識に3歩ほど後ろに下がったエルスは気持ち悪いと言いかけて、なんとか抑えた。


 しかし、オルトは全く落ち着く様子を見せない。

 なるべく視界に入れないように落ち着くのを待とう…と諦めたエルスは壁に向かって体育座りをした。


「…奇数クラスで二人一組を強制された隠キャのかどっこ。あはは」


 ジジイのはあはあする声と、エルスの乾いた笑い声が響く地獄が出来上がった。


「…な、なんですか?この地獄…」

「あっ!途中退室した謎ようjーー痛いっ!!」

「あ゛?なんですか?よく聞こえなかったんですけど、よう…なんですか?めるはもう二十歳超えてるです。大人の女性です。次ふざけたことを言ったらたまをすり潰すですよ?」

「は、はいぃ…」


 部屋に戻ってきた自分をめると呼んだ少女が部屋の角に座っていたエルスの、紙を鷲掴みにしてめんちを切った。

 まるで、ヤのつく自由業の親玉である。


 クマですら死んだふりをしそうなその形相に、エルスはプルプルと震えて、頷くだけの機械になってしまった。


「おじいちゃんも何気持ち悪いことしてるですか!仕事中ですよ!」

「んはぁあああ!…ってめる、戻ってきたんじゃな。結果はどうじゃった?」

「大丈夫でしたよ。人事からの許可も得てきました」

「それじゃあ、そちらの話に移るとしようかの」


 オルトがいうと、懐からファイルを取り出しためるが続けて言う


「エルスくん、座るです」


 まだプルプルと震えていたエルスは、ポスッと椅子に座りなおした。


 そして、めるが差し出した紙に目を通す。

 その後、上げられたエルスの顔には「え、まじ?」とありありと描かれていた。


「先ほど確認をとってきたですけど、エルスくんのことは偉人軍で保護、管理するように命令が下ったです。流石にエルスくんの才能は貴族からすると面白くないですから」


 エルスが手渡された資料には『エルス・レルクレムの偉人軍起用の許可証』と書かれていた。


「まあ、高校卒業後ですから。ゆっくり折り合いつければいいです」


 その言葉を聞いて、エルスは頭を抱えてうずくまってしまった。

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