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ミメーシス・エイドロン  作者: 名無し


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2/15

こうしゅう!

 才能検査を受けたエルスは、鉄の扉の個室に移されてから1時間ほど待たされていた。

 個室の中には、テレビもあったし、机も椅子もあった。それなりに居心地がいいのはエルスも認めている。

 ただ、コンクリート製の壁と鉄の扉のせいで中にいるエルスの気分はさながらインペルダウンに収容された囚人である。

 エルスがテレビを見ながらぼーっとしていると、再びガシャンガシャンと鉄の扉から音が聞こえてきた。

 入ってきたのは先ほどとは別の検査員だった。


「待たせてしまってすまないね。今からスキルがあった人向けの講習があるからついておいで」

「わかりました」


 そういうと、エルスは言われるがままに検査員について歩き始めた。

 数分歩くと、突然視界が開けて、広い講堂に出たことがわかった。

 講堂の中には、無駄に煌びやかな装飾の服を身に纏った貴族が大量に座っていた。


「9997、9998、9999、10000…」


 その中で、唯一と言ってもいい平民のエルスは周りの空気に耐えられずに縮こまって指の皺の数を数える遊びをしていた。

 ちょっと口元が緩んでいる。5桁に達してちょっと達成感を覚えているようだ。


「あれ?エルスくん?」

「…ミミ?」


 どこかからミミの声が聞こえたきがしたエルスが「そ、そうだ!俺にはミミがいた!」と目を輝かして顔を上げたがエルスの視界にミミはいない。

 不思議そうな顔で首を振ってミミを探すが見つからない。


 途中で赤茶色の髪と真っ青な瞳の美人と目があって微笑まれたが、大人って感じだったのでミミではないだろう。そう判断したエルスは一瞬で目を逸らした。貴族って感じで怖かったらしい。


「緊張で幻聴でも聞こえたのか…?」と首を傾げて、指の皺の数をまた数え始めた。

 どこまで数えたかわからないからまた最初からである。


「1、2、3、4…」

「やっぱりエルスくんだ。目まであったのになんで無視するの?」

「え?……やっぱりミミの声?……いない…末期か?」

「いるけど!?ほら!ここに!」


 目の前で、赤茶色の毛が揺れている。

 その先を辿ると、先ほどの女性に辿り着いてその小さく開かれた口からは確かにミミの声が発されていた。


「えっと、ミミ…か?」

「なんで疑問形なの?」

「なんか、雰囲気が違うな?」

「あー、これダサいよね…これ…おばさんに見えるでしょ」


 さっきの貴族系美人がミミだったことに気づいたエルスは、不思議そうな顔をしたまま首を傾げた。

 いや、少し頬が赤い。美人系が好みなのだろう。


 ミミは髪の毛をくるくるといじりながら、恥ずかしそうに顔を隠した。


「いや、普通に美人に見えるが」

「そ、そう?ありがと」


 不思議そうにいうエルスに、さらに髪の毛をくるくるしちゃうミミちゃん。こういうの真顔で言うの良くないと思う…とか呟きながらくるくるくるくる…


 割と濃いめの化粧の上からでもわかるほどお顔を真っ赤にしていてりんごのようで可愛らしい。ただ、それとは対照的に指先の血管が青くなってきているのでそろそろやめた方が良いかもしれない。


 エルスが止めようと立ち上がりかけると、ミミがバッと顔をあげた。

 それを見たエルスは驚いた顔をして座り直した。


「なんでエルスくんいるのさ!?ここ貴族しか入っちゃいけないんだよ?」


 小声で叫ぶなんて器用な芸当をしながら、なんで!とエルスを揺さぶるミミ。

 エルスに才能が発現したとは微塵も思っていない様子である。それくらい平民から才能が現れることが珍しいのだなと、エルスは再認識した。


 …のだが、それはそれとして、揺さぶられるエルスの目が死に始めた。

 エルスくんの頭がガックンガックンと前後に揺れまくっている。その姿はさながらライブ終盤のロックバンドのボーカル。ただ、ボーカルの方々と違って特殊な訓練を受けていないエルスくんはちょっとグロッキーな感じである。


 ぐわんぐわんと脳を揺さぶられる感覚に目を回していたエルスが、このままではせっかく仲良くなった友人にマーライオンしてしまうっ!と己を奮い立たたせる。

バッと、肩に置かれたミミの手を振り払うように立ち上がった。


 ミミの顔が真っ赤に染まった。その状態でエルスの胸に手を置いて見上げるその姿はまるで初めてのキスを待つ少女のよう。


「え、あ…ふぇ!?」

「スキルが、あったんだよ…なぜか」


 下を向くと胃の中のものが出てきてしまいそうな状況のエルスは、斜め上を向いたままスキルがあったことを報告した。

 だが、キス待ち状態のミミちゃんはそれどころではなかった。顔を真っ赤に染めて、手を前に押し出している。


「へ、ちょ、待ってエルスくん!なんか恥ずかしい!座って!」


 しかし、意外と体幹が強いエルスくん。押しても引いてもぴくりとも動かない。

 押しても引いてもダメなら自分が引くしかねぇ!とミミはキス待ちスタイルから脱却するために一歩足を引いた。

 しかし背後には他の人の椅子があって結局半歩分しか下がれない!明らかに空いている左右の腕の下を通らないのはそう言う願望があるからだろうか?


「ん?大丈夫か?顔真っ赤だぞ」

「あ、いや…大丈夫…って、えぇ!?スキルあったの!?」

「うん…ちょっと、あんまりおっきい声で言わないで…」


 平民である上に、結構やばそうな才能のエルスくんは貴族に目をつけられないように必死でミミの体勢にまで気が向かなかったようだ。

 ミミも、全く気にされていないことに気づいて少し不服そうな状況のままエルスの腕の下を潜ってその状況を脱却した。通り際にちょっと足も蹴ってみちゃう。「いたっ」とこちらを見るエルスのことも気にしない。だって不満だったんだもの。


 不思議そうに首を傾げたエルスの耳に、どこかの貴族の才能を唯一無二だと褒めている声が聞こえてきた。

 それを聞いて現実に引き戻されたエルスの顔は蒼白を超えて土気色である。

 これから30分ほど大量の貴族に囲まれている間に彼の胃には特大の穴が空いてしまうのではないだろうか。

 心配そうに顔を覗き込んだミミに、少し平常心を取り戻したエルスが言った。


「俺、死にたくねぇ…」


 エルスの呟きを聞いてコテっと首を傾げたミミが、「そんなに?」と尋ねる。

 それに土気色の顔から血の気が引き続けているエルスは、なんとか絞り出すような小さな声で答えた。


「うん、だいぶやばい…どうしたらいいと思う…?」


 どんどん青くなっていく顔を見ながら、これは相当やばいと察したミミは真剣に考え始めた。

 手を小さな顎に当ててうんうんと唸っている。その姿は小動物のようで可愛らしい。


 まあ、その横にいるエルスくんの顔から血の気が引き続けてゾンビのようになっているが。

 このままでは某緊急SOSな番組のように何かが発見されてしまいそうだ。


 何かを考えるそぶりをしたミミは「とりあえず、講習の後の『できること検査』まで隠しといたらいいんじゃない?」と言ってエルスの隣に座った。


「私にも、教えてくれないのかな?」


 ミミは思わず呟いてしまったが、自分がエルスとそこまで親しくないことを理解しているからかそれは周りの騒音に掻き消されてしまった。

 ま、そりゃそうか。と手のひらをつねって気持ちを切り替える。中学の時に話しかける勇気がなかった自分が悪いのだ。他の話題を振ってなんとかエルスの気を紛らわそうとエルスにむきなおる。


 すると、肩にかけているかばんに何かをしまったエルスが「こっそり見ろよ」と耳打ちしてが小さく折り畳まれた紙を手渡してきた。

 言われた通りにこっそりと紙を覗くと、エルスの才能の名前と効果が書いてあった。

 自分の呟きが聞こえていたことが恥ずかしかったのか、ミミの顔が少し赤くなったがすぐにその色は抜けて、目をまん丸くした。


「エルスくんこれは…やばいね」

「だろ?絶対誰にも見せるなよ?バレたら多分俺殺されちゃうから…」

「見せないよ。エルスくんに死なれたら困るし…」


 そう言って、ミミはその紙の文字が書かれている欄を内側にして折りたたんでポケットにしまった。家に帰ったらラミネートするつもりである。


 喜んでいたミミだったが、自分がスキルを明かしていないことに気がついた。


「あっ、私のスキルはーーぷあッて何するの!?」

「いや、自分のスキルを大声で明かそうとするなよ」

「確かに…今日、私紙持ってたかな…?」

「別に後でいいよ。もうすぐ始まるみたいだし」


 くたびれたスーツを着た、目の下がクマで真っ黒になったおじさんがマイクを片手に登壇した。

 その人がマイクを持つと、部屋の空気がしんっと静まり返った。

 それを確認した男が、話し始める。


「えー、ここにいるみなさんは、スキルという他の人とは違う力を持っています。そのため、あなた方には多くの特権が得られる代わりに多くの義務を背負うことになりーー」


 その後、30分ほど人を傷つけるために使わないでねっていう話が続いた。途中で、ソワソワし出したエルスをミミが小突いたり、色々あったが一応無事に終わった。

 後一枚の紙と、紅点が記された地図が渡されて、そこにいくように言われた。

 近くにあった机で、スキルの名前、オリジンの名前、能力をかいた。赤点のところにいる研究者に手渡せばいいらしい。


 地図を辿ってドームの中をにある部屋の中の選ばれてる部屋に入ると、老人と少女が立っていた。


「お、きたですよ。おじいちゃん」

「ぬ?あぁ、君がエルスくんじゃな」


 資料をめくっていた老人が顔を上げてドアの方に視線を向けた。

 そして、エルスを見つけた老人が立ち上がってエルスに近づいてきた。


 身長が170cmほどあるエルスですら見上げるほどの身長の老人に、エルスが少し後退りした。


 びびったエルスは、手をプルプルと振るわせながら、紙を差し出した。


「で、才能の詳細は書いてあるかの?」

「あ、はい…これですね?」

「あぁ、それじゃそれじゃ。とりあえず確認させてもらおう……ッ!?」


 エルスから紙を受け取った老人は、チラリとそれに目を通してそのまま目を見開いて固まった。


 強く握ったせいで紙がくしゃっとしてしまっている。


「どうしたです?おじいちゃんがびっくりするなんて珍しいですね?」

「うむ…これを見るのじゃ」

「えっと、なんです…オリジン、レオナルド・ダ・ヴィンチ…!?才能検査薬が生み出されてから2000年才能を探され続けてた偉人じゃないですか!?」

「それもじゃが、能力までちゃんと読むのじゃ」


 不思議そうに老人に近づいた少女が声をかけると、老人が紙を手渡した。


 目をまんまるにした少女は老人に言われた通りに能力の書かれた欄に目を通してさらに目をまんまるにした。

 その後、すぐにポケットからスマホを取り出した。


「あー、ちょっと一回本部と連絡してくるです」

「あぁ、その方がいいじゃろうな。効果の検証の方はわしがやっとくわい」


 少女が扉を潜って外に出るのを見届け、老人はエルスに向き直って言った。


「それじゃあ、効果を検証するとしようかの」


 椅子に座った老人が、朗らかに笑った。

トウキョウ「東京じゃないよ!トウキョウだよー!」

グンマー「群馬じゃないよ!グンマーだよぉー!」


トウキョウ・グンマー「「2人(とその他数県)合わせてカントウだよー!KANKAN(キャンキャン)〜!!」」

実在する土地とはなんの関係もありません!

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― 新着の感想 ―
グンマーが舞台なら、強くならないと生き残れませんよね……。 あ、私の小説のアメリアが好きって言っていただき、ありがとうございました! あれは、とっても純粋な子なんです(目そらし)
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