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第39話 炎の帝王

炎の王プロメテウスが来ます!

魔法の少女たちが彼の襲撃を防ぐことができるだろうか?


空が裂け、暁の光と夜の闇が交差し、散りばめられた星屑を遠い深淵へと巻き込んでいった。雑然(ざつぜん)と立ち並ぶ都会のビルが朝日の初光を反射し、眠りから覚めていく。


 赤髪の男は黒い毛皮のコートをまとい、首には金色に輝くペンダントを下げている。たくましいチータかのようにビルの屋上を駆け抜けるその姿は、黒い炎のようだった。威厳(いげん)に満ちながらも慎重さを失わないその容貌からは、百戦錬磨(ひゃくせんれんま)の強者であることが一目で伝わってくる。


 男の本名は誰も知らない。だが【万物を焼尽すプロメテウス】という異名は広く知られ、すべてを破壊する強力な炎を操る【第四の王】として恐れられていた。

挿絵(By みてみん)

 プロメテウスは火のついていないタバコをくわえ、長身でがっしりとした体躯をビルの屋上に立ちはだかるようにして据えた。その腕は力強く、足取りは安定し、岩のようにごつごつしていた。

 彼の背後には、冷たい重装備(じゅうそうび)に身を包んだ黒服の男たちが数十人続いていた。すでに彼から正当な教えを受けた【下級魔人】たちで、死地へ赴けという命令さえあれば従う者たちだ。


 プロメテウスは首の血肉に炎を燃やす宝石を埋め込み、一行を率いてビルの間を駆け抜け、【ホーム】へと突き進んでいく。


 黒服の男たちは皆、プロメテウスの加護によって【黒獣(くろけもの)】から進化した【下級魔人(かきゅうまじん)】であった。戦闘力は以前ほどではないが、王の魔法を受けることができ、攻撃的な性質を知らない多くの【黒獣】が王に従うことを選んでいた。


「これ以上は進ませません!」


 大きく澄んだ女性の声が響き渡ると、3人分の高さの氷の壁が地面から立ち上がった。氷壁の厚さは1メートル以上、表面は透き通り、陽光の下できらめくその姿は、竜宮城(りゅうぐうじょう)の豪華な水晶の壁のようだった。


「この程度の氷壁が俺の行く手を阻めると思うな!」


 プロメテウスは中指を立てて手のひらを氷壁に打ちつけ、巨大な炎の渦が彼の手のひらから四方に爆発した。氷壁は瞬く間に無数の小さな破片に砕け散った。


「全員、前進だ!魔法少女を殲滅(せんめつ)し、【魔神】として認められよ!」

「はい!」


 プロメテウスの命令に、黒服の男たちは続いた。


「行くなと言ったでしょう!聞こえていないの?」


 高空に、整然と並んだ巨大な刃が浮かび上がった。それぞれの刃は長さ40メートル余り、幅5~6メートル。それらが列をなして空へと伸びる様は、遠くから見れば鋼鉄の大壁を築いたかのようだった。


 部下たちは恐怖に震え足を止めたが、プロメテウスだけは平静を保っていた。


「進め!」

「ボス、今の状況では撤退した方が……」

「何だ?」


 プロメテウスは煩わしげに隣の部下を一瞥すると、頭を振った。彼の心は苛立ちと怒りで燃え上がり、拳を握る力が強くなっていく。


臆病者(おくびょうもの)め!こんなものに驚いて震えているのか?これしきの度胸で俺の部下を名乗れると思うな?」


 プロメテウスの赤い髪が微風に揺れ、炎のように燃え上がる。彼の性質は髪と同じく熱く、気に入らないことがあればすぐに激怒する。

 プロメテウスは部下をぐいと引き寄せ、建物の端にゴミのように投げつけた。哀れな部下は炎の中で悲鳴をあげ、放り投げられたボールのように滑らかな放物線(ほうぶつせん)を描いて地面へと落下していった。


「どうだ?まだ俺に逆らう者はいるか?」


 一同はキーキーと音を立てながら震え上がった。彼らは悪魔のようなボスが機嫌を損ねれば、些細なことでも厳しい制裁が下ることを知っていた。


「全員、攻撃だ!死を恐れるな!我々は炎の化身たる英雄ぞ!生に貪欲で死を恐れるような真似ができるか?」


 一同は一斉に叫び、震える腕を揃えて伸ばし、手のひらを空の巨大な刃の列に向けて開いた。


「ファイアボール!」


 黒服の者たちの手のひらに桜色の炎が燃え上がり、灼熱の火の玉が進撃(しんげき)する猛獣のように巨大な刃へと飛んでいった。


「これは単なる目くらましじゃないわ!」


 突然、少女の姿が角から現れた。美咲だった。彼女を見た人々は、突然の出現よりも、はさみが刺さった濁った目に驚いた。


「この女、変態か?目がくらんだらこんな趣味になるのか?」

 ある黒服の男が呟くと、美咲は悪意のない悪笑を浮かべた。


「変態じゃないわ。目を刺すはさみは私の強力な神器よ」

「どうやら誰かがこちらの最強の魔法士を挑発したようね」

 芽衣子が空中から地上に降り立ち、美咲と目を合わせた。


「私のことを変態だと思う連中を懲らしめるには、【運命の占い台】を使わざるを得ないようね!」

挿絵(By みてみん)

 遊ぶように手を伸ばして空気をなでると、美咲の半透明の赤みがかった神秘のテーブルが彼女の手の下に浮かんだ。


「さあ、これらのカードはきっと気に入るわ」


 美咲はテーブルの上で奇妙な香りを放つカードの山を切り、彼女が手にしたカードが何なのか、誰も知らなかった。切り終えたカードの山から数枚を取り出すと、取り出したカードを裏向きにしてテーブルの上に奇妙な陣形で配列した。気の向くままに一枚をめくると、彼女の表情が激昂した。


「まあ、このカードはあなたたちを非常に痛快にしてくれるわ!【宝剣(ほうけん)】よ!」


 カードには剣の雨の絵が描かれており、その下には誰も読めない古い文字が一行ずつ記されていた。


 美咲が優雅な動作でカードを空中に投げると、カードはすぐに赤紫色の息吹となって彼女の手にまとわりついた。

 すると、右目に刺さっていたはさみが消え、瞳は桜色に輝いた。


 突然、一条の暗紫色の光が美咲の手のひらから放たれ、空中に浮かぶ巨大な刃に当たった。巨大な刃は揺れながら、無数の小さな殺戮の閃光を放つ長い刃に分裂し、雨のカーテンのように慌ただしく黒服の男たちへと降り注いだ。


「終わりだ、早く逃げろ!」

 黒服の男たちが驚いて逃げ出そうとすると、プロメテウスは興奮して立ち上がった。


「逃げるな!手品だ!怖がるな!」


 プロメテウスは大声で叫び、地面を踏みつけると爆発が起こり、後方へ勢いよく跳ね上がった。打ち寄せる雨のカーテンに向かって突進する彼の体の周りには、激しい波のような嵐が吹き荒れていた。

挿絵(By みてみん)

 回転する炎に剣の刃が突き刺さり、粉々になって四方に飛び散り、地面に銀粉のように積もった。美咲の白髪が炎の下でオレンジ色に染まり、風の中で上下する。彼女は小さな口を半分開けて驚いた表情を浮かべた。


「すごいわね。私の剣雨攻撃(けんうこうげき)を正面から受けるとは。では、次のカードを見せてあげるわ」

「他に何があるか見せてみろ!」


 プロメテウスは空中で止まり、足元に形成された炎の渦が彼を押し上げた。彼は芝居を見ているかのように足元の美咲を興味深(きょうみふか)く見下ろした。美咲は相手にせず、ボードゲームをしているかのように 2 枚目のカードを取り出し、ひっくり返してみた。


「何だ、小娘、今度は何だ?」


 プロメテウスは不屑の笑みを浮かべ、タバコを吸い込み、地面に身をかがめて立ち止まり、吸い殻を吐き出して新しいタバコに火をつけた。

 プロメテウスは軽はずみな行動をとり、無防備(むぼうび)に見えたが、実際は常に二人の動きを警戒していた。何しろ彼らは組織のリーダーと副リーダーなのだ。軽率な行動をとれば、いつ自分が殺されてもおかしくない。


「残念ながら、このカードはあなたには効果がないかもしれないけど……」

 美咲は目を半分閉じたまま「コココ」と笑った。


「でも、あなたの哀れな子分たちは、もうすぐ崩れ落ちるわよ!」


 美咲は軽く 2 回跳んだ後、腕を広げて体をぐるっと回した。彼女のしなやかで長い銀髪はその動作によって体の周りに広がり、日光の下できらきらと輝いた。


「これは私の 5 枚の切り札の一つ、【月】よ!その寒さはあなたの部下の炎の能力では耐えられないわ!」


 美咲は笑みを浮かべてプレゼントを渡すようにカードをプロメテウスに向けると、カードはすぐに姿を消し、やがて空にかすかな月が浮かび上がった。屋上全体は激しい吹雪に飲み込まれ、寒さに凍りつき、すべてが固まった。


 プロメテウスは体に巻き付けた炎を強化したが、それでも全身が寒くてぶるぶる震え、頭は痛く目の前がぼんやりしていた。


「くっ……まいったな、本当にやるんだ、小娘……」

 地面にひざまずき頭を下げたプロメテウスの目は力なくも、なお毅然としていた。


 地面には厚い硬い氷が凝結し、屋上一面が真っ白に変わった。時間が経つにつれ、大雪は徐々に消え、太陽の光が再び差し込んできた。


 日差しの暖かさは徐々に戻ってきたが、哀れな者たちの体温は二度と戻らなかった。部下たちは氷に包まれ、肌の色は死んだような灰色に変わり、体内の血は完全に凝固していた。全員がこの一秒で殺されたのである。


 プロメテウスは地面に倒れ、氷に閉ざされた。


「本当に、これ以上進むなと言ったのに、まだ必死に前に進もうとするなんて、ひどい結果になっても仕方ないわね」

 美咲の独り言は、無謀極(むぼうきょく)まりない敵を嘲笑うのか、それとも彼らの末路を嘆くのか分からない。


 彼女はゆっくりと首から水晶を取り出し、周囲のすべてを元の姿に戻した。ただ凍った地面と氷雪に閉ざされた死体だけが元の場所に残された。


【第四の王】はこのまま消滅したのだろうか。彼は本当にこんなに弱いのか?

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