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To be continued  作者: 綾瀬大和
国内線編
16/50

第16話晴れ間を信じて

第16話「晴れ間を信じて」



今日は、一日がかりのフライトだった。JAL1905便は、宮崎から羽田へと向かっていた。桐谷隼人は、羽田空港に着陸する前に、何度も予報を確認していた。天気は荒れているという話だったが、空路を進んでみると、案の定、羽田空港は暴風雨に見舞われていた。


「これ、厳しいな」


コクピットの計器が不安定な動きを見せている。外の視界も悪化し、進入許可が得られるかどうかが微妙になってきた。


「羽田が閉鎖されたみたいです。」


副操縦士が不安げに言う。


桐谷はしばらく静かに考えた後、アナウンスを入れることに決めた。


「お客様、現在羽田空港が一時閉鎖されています。最寄りの空港として新潟空港に向かいます。」


乗客にその旨を伝えたが、すぐに新たな情報が入ってきた。


「羽田、15分ほどで一時的に晴れる見込みが出てきました。再開の見込みあり。」


桐谷は、その情報を確認した瞬間、少しだけ希望を感じた。だが、すぐに気を引き締める。


「それでも、最悪の場合、新潟空港へ行くことになる。慎重に行動しよう。」


副操縦士は頷き、再度計器を確認する。


その後、さらに情報が更新され、羽田空港が一時的に開放されるとのことだった。桐谷は、進行方向を羽田に戻す決断を下した。


「やっぱり羽田に向かうべきだ。15分の晴れ間があれば、問題なく着陸できるだろう。」


コクピット内の緊張感は高まるが、桐谷は冷静に指示を出し続けた。


しかし、羽田空港近くに差し掛かると、再度天候が急変した。進入許可を受けた後、最終的な判断を迫られる。


「天候が再び悪化してきた。新潟に変更するか?」


副操縦士が言った。桐谷はその声を聞きながらも、少しだけ考える時間を取った。


「もう少し粘ろう。羽田、今はまだダメかもしれないが、最後のチャンスを逃すわけにはいかない。」


進行する中で、羽田空港に降りるための最後のアプローチを試みる。15分だけ晴れる予報を信じ、桐谷は慎重に操縦桿を握り続けた。


ゴーアランドに向けて、新潟空港に進行する可能性が高まる。


小机アンナは、JAL905便の乗務を終え、羽田行きのフライトを控えていた。彼女の心は少しだけ安堵していた。仕事が終われば、ようやく休息を取ることができるからだ。


「905便、間もなく出発します。」


アナウンスを入れた後、少しの時間をかけて、乗客の誘導と準備を進めた。宮崎空港での最後の乗客チェックを終え、キャビンアテンダントとしての任務はすべて整った。


小机は機内を一巡した後、再び座席に戻った。


「さて、無事に羽田に帰れるといいな」


機内アナウンスが流れ、アンナはシートベルトを締める。タービュランスが予想される中、できるだけリラックスしようとしていた。


「今日は何とか羽田に戻りたいですね。昨日の天気予報では、無事に着陸できるはずだったけど…」


機長のアナウンスが流れる。羽田空港が一時閉鎖されていることを告げ、万一の場合、新潟空港に向かう可能性があることを乗客に知らせる内容だった。


「やっぱり、羽田がダメかもしれませんね」


小机は不安を感じたが、乗客へのアナウンスとサービスを淡々と続ける。


その後、フライトは順調に進んでいたが、突然、インカムに桐谷機長からの通信が入った。


「905便、羽田の一時再開が予想される。ただし、最悪の場合、新潟空港へ進入する可能性もある。まだ決定ではないので、しばらく様子を見よう。」


アンナはその通信を聞き、心の中で静かに祈るような気持ちになった。


「桐谷機長、信じます。必ず羽田に帰れるように…」


その後、航空機は羽田空港に接近し、再度の進入を試みることとなる。しかし、天候が急変し、再び羽田空港が閉鎖されたことが伝えられる。


「やっぱり、新潟か…」


乗客たちの顔にも不安の色が広がる。しかし、小机はその不安を隠して、冷静に対応を続けた。


**


進行の途中で、新たな指示が入る。


「羽田が再度晴れる見込みがあり、ギリギリのタイミングで進入を試みる。これでダメなら、新潟へ行くことになります。」


桐谷機長のアナウンスが流れる。アンナはその情報を乗客にも伝え、機内を整理しつつ、無事に進行していることを確認した。


しばらくして、羽田空港に降りるための最終アプローチが始まる。


「ここで降りられなければ、新潟だ」


アンナは心の中で決意を固めた。


再度、羽田空港が晴れたとの情報が入り、JAL905便は羽田空港に着陸するために進入を始めた。


「これが最後のチャンスだ」


桐谷機長の言葉が、今もアンナの耳に響いていた。 

羽田空港に向けての最終アプローチが始まる中、機内は静まり返っていた。多くの乗客は、いままで続いた不安なフライトを忘れ、ただ目的地に着くことを願っている様子だ。窓から外を見ると、空は一時的に晴れ、濡れた滑走路が視界に広がっていた。すぐにでも着陸できると思わせる天候だが、空の状況が再び変わる可能性があるため、決して安心できない。


「みんな、もう少しだよ」


小机アンナは心の中でそう呟き、冷静さを保ちながら、再び乗客にアナウンスを行った。


「お客様、ただいま羽田空港への進入を開始いたしました。少々揺れる可能性がございますが、安全に着陸いたしますので、シートベルトの着用をお願いいたします。」


機内は静かで、座席に座っている乗客たちはみな、外を見つめている。小机もコックピットを確認しながら、桐谷機長の指示を待つ。何度も天候の情報を確認していた桐谷は、再度アナウンスを入れた。


「予定通り、羽田空港に着陸を試みます。もし進入が不可能であれば、迅速に新潟空港に変更します。再度お知らせしますので、心配なさらないでください。」


アンナはそのアナウンスに、わずかな安心感を覚えた。これで本当に羽田に着陸できるかどうか、最終決定が下されることになる。


着陸に向けた最終アプローチが進む中、再度アナウンスが流れた。


「JAL905便、羽田空港進入の許可が下りました。少々揺れますので、シートベルトをしっかりとお締めください。」


それを聞いた乗客たちは少しずつ緊張を解き始めたようだ。アンナは自分の気持ちをさらに引き締め、乗客への注意を払い続けた。


「羽田、着陸が無事に終われば、これでようやく家に帰れる。もう少しだ。」


桐谷機長の言葉に、乗客たちもほっとした様子を見せていた。


しばらくして、航空機が羽田空港の滑走路に向かって降下を始める。視界は開け、滑走路がしっかりと見えるようになった。


「100...50...40...30...20...10」


コックピットに静かなカウントダウンの音が響き渡り、桐谷機長の冷静な声が続く。


「着陸準備完了。慎重に行くぞ。」


その言葉に続いて、着陸の瞬間がやってきた。滑走路に接地する前、桐谷は機体を少し持ち上げ、フラップを調整し、急激な沈降を避ける。操縦桿を巧みに操作し、慎重に機体を調整する桐谷の腕は、まさにプロフェッショナルだ。


そして、ついに地面に接触した。


「ゴトン!」


機体が滑走路にしっかりと接地した瞬間、桐谷は自分でも驚くほどの揺れを感じた。


「おぉお揺れる揺れる笑」


桐谷の声がコクピット内に響き、次の瞬間、強烈な横風が機体を揺さぶった。だが、冷静に舵を取る桐谷は、操縦桿をしっかりと握り続ける。


「落ち着け、落ち着け...!しっかりと止めるぞ!」


アンナは、機内で乗客が不安げに揺れを感じている様子を目にし、しっかりとしたアナウンスを入れた。


「お客様、強い揺れを感じるかもしれませんが、現在安全に着陸しており、問題ありません。シートベルトをお締めください。」


小机はその間に、すぐに自分の役割を再確認し、乗客の安全を見守り続けた。


着陸後、機体は少し滑ったものの、無事に滑走路に止まる。機長と副操縦士は、ホッとした表情を浮かべながら、機体の安定を確認する。


「よし、これで着陸完了だ。みんなお疲れ様。」


桐谷は機体を完全に止めた後、インタフォンで乗客に向けて最後のアナウンスをした。


「お客様、羽田空港に無事に到着しました。お疲れ様でした。皆様のご協力に感謝いたします。」


機内は、着陸の成功に乗客たちからの拍手が起き、ようやく安堵した雰囲気に包まれた。


その後、機体がターミナルに到着し、乗客たちが降機を始めると、小机アンナはホッとした表情を浮かべ、最後に一度だけ空を見上げた。


「無事に着陸できてよかった…本当に良かった。」


彼女の隣にいた乗客から、感謝の言葉がかけられる。


「ありがとう、すごい落ち着いてたね。」


小机はその言葉に微笑んで答えた。


「こちらこそ、皆様のおかげです。気をつけてくださいね。」


そして、最後に滑走路に戻る機体を見送りながら、小机は心の中で桐谷隼人に感謝の言葉を送った。


「桐谷機長、お疲れ様でした。本当にお見事でした。」

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