ep8 代替制度~修~
今回も修目線でのストーリー展開となっております。
さてさて老人と高校生の恋物語はいかに…。
理沙の家は一軒家だった。
着くなり、タオルを優紀に渡してから、リビングで待っててと言われる。
どうやら弟の様子を見にいっているようだ。
修は優紀ごしに理沙の家の中を見ている。
整理整頓がしっかりできていて、いつ人を呼んでも大丈夫なようになっている。
きっと親もしっかりした人物なのだろう。
壁には理沙がこれまでコンクールで獲ってきたものだろうか、いくつかのトロフィーが飾られているのとその横には様々な色の混じったチェック柄の熊のぬいぐるみを見て微笑ましく思う。
しばらくするとタオルを頭から被りながら理沙が戻ってきた。
「どう?弟の調子は?」
「ありがとう。ゆっくり寝てるみたい、朝よりも熱が下がってたし、大丈夫かな。」
そう返事をすると、理沙は携帯を触り出す。
「ちょっと待っててね、お母さんに連絡しとくから。」
ピピピという小刻みな音が終えると理沙は伸びをしてこちらを見る。
少し濡れた髪の毛が15歳という少女ながらも色っぽさを感じさせた。
「それで、由美の事なんだけど、何を知りたいの?」
理沙の問いに修は遠慮なく聞く事にした。
「宇野さんと園田さんはいつから友達なの?」
帰り道ではぐらかされた質問を再びする。
「ん-と、中学2年生だったかな。クラスが同じになってね、それから仲良しになってるかな。あ、あと春乃もね。」
「ふーん、そうなんだ。」
修が適当な相槌を打つと理沙は続ける。
「由美ってちょっとあれでしょ、だから教室で男子にからかわれてる時とかあったの。それを守ったのが私と春乃って訳。」
あれって何だ?と修は思いながらも話を聞く。
「だから、由美の事を好きな人ができるのは嬉しいよ。素直にね。」
理沙はそう微笑むと優紀を見て、首を傾げながら悪戯っぽく言う。
「ねぇ、由美に彼氏がいるかとか、過去にいたのかも聞きたいんじゃない?」
中々この子は鋭いらしく、こちらの欲しい状況を提供してくれる。
「うん、教えて。」
と素直に言うと、理沙は、
「良いけど、有田君の事も教えてね。」
と交換条件を出してきた。
「ねぇ、有田君は彼女いるの?あと、いた事は?」
この質問はセーフだった。
貰った資料に優紀の交際経験も書いてあったので、それ通りに答える。
「今も昔もいないよ。」
高校1年生じゃぁ、まだ彼女がいなくても、周りから恥ずかしいと思われる年頃でもない。
「そっかぁ、あ、由美もね、今も昔もいないよ。あと私も今はいない。」
聞いてもいないのに自分の情報をはさむ理沙。
流石にこのあたりまでくると優紀はわからないが修は気づいていた。
理沙は優紀に気があるのだ、だから家まで誘ってくれたのだろう。
「ぇっと、園田さんの趣味って何なのかな?」
「由美の趣味かぁ、んー、何なんだろう、休みの日はよくカフェ行ったり、ご飯食べには行くから、カフェ巡り、とか?」
「でも高校入ってからは部活一緒だし、お金貯めるって言ってるから最近は全然だねぇ。」
まぁ、友達の趣味の把握なんてこんなものだろう、目立ったものが直ぐに出てこないのだから実際にカフェ巡りが趣味な可能性が高い。
「じゃぁ、有田君の趣味は何なの?あっ、私は見ての通り吹奏楽だけどね。」
またしても自分の事を織り交ぜながらトロフィーを指差してアピールする理沙。
「へぇ、一杯賞獲ってて凄いじゃん。あ、俺の趣味は筋トレだよ。」
いかにも頭の悪そうな趣味を口にする。
「ぇ、そうなの?いがーい!あ、でも野球やってたもんね、身体動かすの好きなんだ。」
「うん。」
修はこのままの雰囲気はまずいなと感じとる。雨の日にリビングに高校生の男女が二人。
2階に弟がいるといっても風邪で寝込んでるから邪魔しにくる事もあるまい。
このシチュエーション、恋仲なら嬉しいが相手が違うんだと自分に言い聞かす修は、優紀に荷物を持って立ち上がるように指示をする。
「と、いう事で。俺ジムに行かないといけないから今日はこの辺で。」
「ぇ。」
理沙に寂しそうな顔をしながら、
「もう少し、お話してこ。」
と言われたが、修は優紀に帰るようにと伝えた。
7月、この頃になると優紀自身の表情、優紀が本当に指示通りに行っているかの確認がとれないというのが問題になり、学校、ジムなどのいたる所に優紀が通る場所にだけ隠しカメラを仕掛ける事になった。
時折注意する事により優紀は適当な事ができないなという気持ちになってくれたようだった。
それからは、穏やかな日々が続いていく。
教室で優紀が由美、理沙、春乃と話してるのに違和感はなくなったし、時々、健人、輪、信之の三人も会話に加わった。
悪いなと思ったのは、夏の野球の大会の時だろうか。
野球部の健人、そして大会で演奏する由美達に誘われて野球を見にいく事になった。
結果は初戦で負けてしまった。
悔しそうな健人、1年生だが出場した健人は野球がそこそこ上手いのだろう。そんな健人にしつこく誘われていた優紀も本当は野球をしたかっただろうに。
優紀から野球を取ったのは残酷な事をしてしまったかもしれないと修は後悔をした。
盛り込みたい要素が多いです。
自分の中で話数も決めているので、若干駆け足になってしまっているかもしれません。