私のTS転生者なルームメイトは遠慮している。
なろうラジオ大賞用小説第二弾
私のルームメイトことジュリアさんは転生者だ。
さらに言えば悪役令嬢として生きるハズのキャラへ転生した元男性、つまりTS転生した存在で。
私達の敵にハメられて、恐ろしい事をしでかしてた私を、命がけで止めてくれた恩人である。
そんな彼女(彼?)は私、というか女性キャラ全員に遠慮してる。
TS転生したが故に。
同性の着替えや入浴を可能な限り見ないよう位置や時間をズラすのだ。
気持ちは分からんでもない。
私だってTS転生したら遠慮する。
だけど私は知ってる。
TS転生したキャラは多くの場合、転生したキャラの性別に引っ張られるためか同性の着替えなどを見ても動じないと。
事実として、モブな女性キャラのスカートが風でめくれる場面をジュリアさんは目撃した事があるけど一切動じてなかった。
いや彼女の精神年齢からしてお子様に興味がない可能性もあるけど。
とにかくジュリアさんはそんな人だ。
そして私はそんな彼女を放っておけなかった。
そもそも恩人だし、同じ転生者としても見てられない。
せめて彼女がこの世界で少しは遠慮せず生活できるようにしたい。
だから私はジュリアさんに歩み寄るため、敢えて彼女の入浴時間を狙い学生寮の風呂場へ突入した。
「ユリンさん!?」
「水臭いですよジュリアさん」
私はすぐシャワーで体を濡らし髪や体を洗う。
「その水が臭い!? すぐシャワー使うのを――」
「いやそうじゃない!」
巨大な浴槽の深い所でなぜか立ってたジュリアさんにボケられた。
そんなボケかますと思わなかったわそんな解釈も確かにできるけど。
「同性に遠慮しすぎって意味です!」
「! ゆ、ユリンさん」
「私はあなたに救われました。おかげで今もこの世界で生きてます。けれどあなたが惨めな思いをしてると――」
「申し訳ないですわユリンさん」
私が思いを吐露するとジュリアさんは申し訳なさそうな顔をして、
「確かに遠慮もありますが、実は新技をみんなに内緒で開発してもいたんですの」
まさかの告白を……は? 新技?
よく見るとジュリアさんの両腕がちょっと赤いような……?
「ですがワテクシ達、今は戦友ですものね。戦友に遠慮してたワテクシが間違ってましたわ」
とにかくジュリアさんは反省してくれた。
私は「分かればいいんです」と言いつつ体を洗い終え彼女に近寄った。
「そうだ。風呂場だし同じ日本人としてアレ、歌いません?」
「いいですわね!」
そしてせっかくだからと。
歌も通じて私はジュリアさんと距離を縮めた。
ジュリア「~~~~♪」
ユリン「ッ!? え、アレまさか二番以降もあったんですか!?」
ジュリア「ッ!? まさか知らなかったんですの!?」