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祠破壊ブーム真っ盛りに書いたやつの供養

作者: 空木 白
掲載日:2026/05/07

タイトルの通りです。

いつの流行りだよ、そして過去の俺はなんでこの熱量でこんなもん書いてんだよ

家を壊された。

それはもう、清々しいくらいにぶっ壊された。元からこぢんまりした家だったが、今となってはただの木クズになってしまった。足元に転がる、残骸とも呼べない木片。これでもつい数分前までは一応祠だったのだ。どんだけショボくれていようが、数百年の思い出が詰まったマイホームだったのだ。

どうしようもなくなった俺は、口をポカンと開けて夜空を見上げている。四方八方から蝉の声がしていた。


「えぇ……誰ぇ……」


つい数分前の出来事。たった数秒間のハプニングを、俺はまだ飲み込めていない。

冷静になれる訳もないが、一先ず落ち着こう。整理すれば何か見えてくるかもしれない。


いつも通り晩酌の準備をしていた俺。わざわざ山を降りて購入したちょっと良いワインを、ウキウキで開けている途中だった。不意に、クソデカいハンマーを引きずっている少年がやって来たのだ。この時点で不気味すぎる。山奥とはいえ、夜中にそんなものを持ち歩くな。日本の治安はどうなってる。


(こんな時間に仕事の依頼?)


不審に思ったものの、仕事柄、俺の方から声を掛ける訳にもいかない。取り敢えずワインをグラスに注ぎつつ眺めていた。ああ、俺の馬鹿。後ろから脅かすなり、白ワンピ黒髪ロングの高身女を出すなり、何か威嚇でもしときゃよかったのだ。

少年はしばらく此方を見つめた後、不意に後ろへと振り返って歩き出した。帰るのかなぁ、なんてボケっと考えていると、突然ハンマーを構えながら突進してきたのだ。あまりに脈絡がなさすぎてちょっとチビった。


『くらえやぁぁぁぁぁッッッ!!』


いやぁ、思い返せば思い返すほど綺麗な一撃だった。目には一寸の迷いもない。頰を限界まで吊り上げた笑みがめちゃくちゃ怖かった。夢に出そう。いや確実に出てくる。


『フンッッッ!!』


美しい放物線を描いて、クソデカハンマーは振り下ろされた。ハンマーって風切り音出るんだぁ、と朧げながら思った。

さて、少年の倍ほどあるクソデカハンマーが助走付きで振り下ろされたのだ。経年劣化でボロボロの我が家が耐えられるハズもない。一発目で瓦屋根は悉く弾け飛び、何百年も家を支えていた柱も儚く砕け散った。すんでのところで、俺は弾き飛ばされて無事だった。不幸中の幸いである。


「なんでぇ……?」


残ったのは文字通り木っ端微塵となった我が家と、少年が置いていったクソデカハンマーだけ。よく見るとこのハンマー、先端にトゲトゲがある。世紀末の肩パットみたいなヤツ。火を見るより明らかすぎる殺意である。俺悪いことしたっけ?


「普通にダメでしょぉ……」


いやまぁ、話には聞いていた。近頃、どうやら他人の家を壊すのがブームらしい。既に中々意味が分からないだろう。俺も意味が分からない。

「自分は大丈夫だろう」なんてフラグ満載の事を考えていたけれど、まさか本当に被害に遭うとは思わなかった。

世間とは怖いものだ。何もせず毎日ぼーっとしているだけで、見ず知らずのガキに世紀末肩パッド付きハンマーで家を壊されるのだから。


「うぅ、どうすんだよコレ」


数百年もの間、寝食を共にした我が家。ショボいながらも愛着があった我が家。

あのクソガキ、一発目だけでオーバーキルだったのに十発、二十発と追撃しやがった。死体撃ちをする人間の顔とは、あれ程までに恐ろしいものだったのか。「フッ!」「テェェェヤッ!」「アヒャヒャヒャったっのすぃっ!」ダメだ、顔も声も頭から離れない。

我が家が蹂躙されている中、俺はただ呆然と見ていることしかできなかった。祟ろうと思えば祟れたのだが……いきなり知らん奴に家を破壊されれば、神も人も思考停止くらいするのだ。


()()()()()()()()()()を眺めていると、ふと、数日前に同僚から聞いた話を思い出す。


『なぁ、最近サカもっちゃんの家もやられたっぽいぜ』


二百年ぶりに再会した友神、取り敢えず入った馴染みの居酒屋で。

良い感じに酔いも回り、ようやく微妙な気まずさが解けた頃だった。共通の知り合いが家を壊された、なんて物騒な話が上がったのだ。

ああ、この時っ!この時、ちょっとでも危機感を持っていれば!


『ええぇ怖。サカもっちゃん大丈夫なん?』


ビールを飲みながら適当に答えてしまった。完全に他人事だと思っていた。そんな呑気な自分を殴りたい。


『お陰で放浪生活だってさ』


哀れなサカもっちゃん。ああ、哀れな俺。


『なんか最近多いよなぁ、家壊されるの』


『流行ってるっぽいぜ』


『何が?』


『俺らの家壊すの』


『?????』


聞いた直後も意味がわからなかったし、当事者になった今でも意味がわからない。


「ちくしょぉ、俺がなんかしたかよぉっ」


精一杯の叫びは、夜の闇へと消えていった。


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