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父様視点・前




 屋敷に帰ると長女のレイティアラが体調を崩し、昼過ぎまで休んでいたと報告があった。


「昼食後に執務室へ来るように伝えろ」


「かしこまりました」




 昼食後に書類仕事をしているとドアがノックされる。


「入れ」


「失礼します」


「少し待て……おい、それは何だ」


 入室を許可すると、娘が入ってくるのが視界の端に映った。書類から視線を上げれば、娘が抱えていたものが目に入り、思わずといった感じで問いかけていた。娘からは何事もないように従魔だという返答が返ってくる。詳しく聞こうと思ったが、とりあえず目の前の書類を片付けることを優先し、しばらく待つように伝えた。


 10分程して書類が片付いたので、体調を崩したことについて聞くと、それは嘘だと悪びれもなく答えた。しかも、何故嘘を吐いたのか問えば説明が面倒だったと言う。


 ──この娘は、ここまではっきりとものを言う性格ではなかったはずだが……。


 とりあえず、きちんと面倒を見るように伝えて従魔を屋敷に置く許可を出し、本題である1週間後の洗礼の儀のことを伝えれば、面倒だが仕方ないとはっきりと答えた。


 ──やはり、はっきりとものを言う。


「今までは言いたいことを言わなかっただけです。これからはこうなので慣れてください」


 ──どうやら、考えていたことが口に出てしまっていたようだ。


 準備をしっかりするように伝え退室させた。



◇◇◇



 1週間後、洗礼の儀の日がやって来た。洗礼の儀は家族同伴で基本的には親と共に行くのだが、我が家は全員で参加している。

 長男のジュールは火と風の属性に適性があった。どうやら攻撃魔法が得意なようで、上達すれば火の上級魔法である炎が使えるだろうし、努力次第で他の属性も伸ばせるだろうと言われている。次男のイシュメルは水と地の属性に適性があった。長男とは違い防御と治癒が得意なようで、こちらも上達すれば上級魔法である氷が使えるだろうし、他の属性も伸ばせるだろうとのことだ。2人とも魔力量は十分にあるため努力次第では問題なく複数の魔法が使えるだろう。




 洗礼の儀が始まり皇家から順に名を呼ばれていく。娘たちの順番が来てホールから出て礼拝堂に向かう。


 長女・レイティアラが水晶に触れようとした時、水晶が音を立てて割れてしまった。


 ──水晶が割れただと? それだけ膨大な魔力量ということか? それ程の魔力量の持ち主となれば帝国でもひと握りだ。


 司教がすぐに司祭たちに何か指示を出している。少しすると、先程司教から指示を受けていた司祭たちが割れた水晶より、ひと回り大きい水晶を運んで来た。


「水晶に触れてください」


 ひと回り大きい水晶に触れると、目を開けていられないくらいに水晶が光り出した。光が収まると司教から適性を伝えられた。


「レイティアラ嬢は全ての属性な適性があります」


「全属性……ですか」


「おめでとうございます」


「ありがとうございます」


「続いてレティシア嬢」


 ──水晶が割れる程の膨大な魔力量を持ち、そのうえ全属性の適性持ちか。私の娘は天性の才能の持ち主なのか?


 自分でもらしくないとは思ったが、そうとしか思えなかった。気づくと戻って来ていたレイティアラの頭を撫でていた。しかし、喜んでばかりはいられない。これからのことをきちんと話し合っておかなければ。


「レティシア嬢の適性は風と地です」


 次女・レティシアの魔力量は平均以下で適性は風と地だった。レティシアは落ち込んだように俯いた。


 ──同じ娘だが、どういう訳かレティシアのことは好きになれない。子供たちの中であの娘だけクレセンティアの色を持って生まれなかった。どちらかと言えば、母方のサンドロップの色が強く出ている。金髪はサンドロップによく居るし、プレナイトの瞳も何代か前にサンドロップに嫁いで来た者が緑の瞳だったはずだ。だから私に似ていないことやクレセンティアの色を持っていないことも特に気にしてはいないが、あの娘を見ていると何故か嫌悪感を抱くため自然と避けてしまう。


 とりあえず用は済んだので子供たちを屋敷まで送り、仕事のため皇宮へ向かう。




◇◇◇



 帰宅したのは日付が変わる頃だった。風呂からあがると、執事からレイティアラが会いたがっていると報告された。


 ──こんな時間まで起きていたのか?


 レイティアラを連れて来るように指示を出す。しばらくして、ドアがノックされ入室を促すと娘が入ってきた。

 本題に入る前に少しあったが、気を取り直し本題に入る。レイティアラから聞かされた話は私が思っていたより深刻な話だった。


 ──レティシアがリシャールは母親を殺して生まれてきたから、みんな自分から母親を奪ったリシャールのことを恨んでいる? 自分だけはそんなリシャールの味方だから、自分の言うことはちゃんと聞かなくちゃいけないなどと言われた? リシャールには怖がられていると思っていたが違ったのか。


「ちなみに、リシャールは父様のことを怖がってはいませんよ。嫌われていると思っていたから甘えられなかったみたいです」


 レイティアラの話を聞くと、どうやらリシャールも看破の瞳を持っているらしい。


 ──しかし、どうしたものか。




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