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4話




 ホール内には椅子が用意されており、右側の前から3列目の席へ座る。左側の1番前の席にはビオンダ皇妃と第4皇子が座っており、1列空けて3列目の席には、もう1つの公爵家であるサンドロップ公爵家のグレイシー夫人と娘のフェリーチェが座っていた。そして4列目以降は侯爵家、辺境伯家、伯爵家……と位が高い順に席に着いている。


「これより洗礼の儀を始めます。名前を呼ばれた方から礼拝堂へご案内いたしますので、私について来てください。ジャレッド・デール・ウーラノス第4皇子殿下」


 名前を呼ばれた第4皇子とビオンダ皇妃がシスターに案内されホールを出て行く。第4皇子はビオンダ皇妃の唯一の子で、彼女譲りの淡藤の髪でアクアマリンの瞳をしていた。


 5分程で次が呼ばれた。


「サンドロップ公爵家、フェリーチェ・ディアナ・サンドロップ令嬢」


 サンドロップ公爵令嬢はストロベリーブロンドの髪にシトリンの瞳をした気の強そうな少女で、私の従妹である。

 私たち兄弟姉妹の亡くなった母が、サンドロップ公爵の妹なのだ。


 また5分程で私たちが呼ばれた。


「クレセンティア公爵家、レイティアラ・セレアス・クレセンティア令嬢、レティシア・イネス・クレセンティア令嬢」



◇◇◇



 面倒だと思う気持ちを隠しながら、シスターに案内されて礼拝堂へやって来た。


「まずはレイティアラ嬢から行います」


 ──さっさと終わらせよう。


 水晶に触れると、ピシピシッという音が聞こえ、パリーンという音が響く。目の前の水晶が粉々に砕けてしまったのだ。そっと顔を上げると、驚きに目を見開く司教と目が合ったが、司教はすぐに他の司祭たちに指示を出す。


「少々お待ち下さい」


 しばらく待っていると、先程司教から指示を受けていた司祭たちが、割れた水晶よりひと回り大きい水晶を運んで来た。


「水晶に触れてください」


 新しい水晶に触れると、目を開けていられないくらいに光り出し、思わず目を閉じた。



◇◇◇



 目を開けると見覚えのある真っ白な空間だった。


「ここに呼ばれたということは……」


「ごめん」


 声が聞こえた方を見ると思った通り、私をこの世界に転生させた友、創造神・アデルが捨てられた子犬のようにシュンと項垂れていた。


「それは何に対する謝罪? 記憶のこと?」


「うっ……」


「家族は要らないって言ったのに貴族へ転生させたこと?」


「ぐっ……」


「それとも今の状況のこと?」


「……ぜ、全部です」


「言い訳を聞いてあげる」


「えっと……記憶と家族の件は俺のミスだ。言い訳をするつもりはない。本当にごめん」


「過ぎたことを気にしても仕方ないし、それはもういいよ。で、今のこの状況は何? 水晶にヒビが入る程の魔力量ってことだよね?」


「それは俺からのプレゼントって言うか……」


「はぁ……良かれと思ってやったけど、後からやり過ぎたって気づいた感じ?」


「はい……」


「やっちゃったもんは仕方ないか……もういいよ。他には何かある?」


「いや、他はちゃんとお前の希望通りだ」


「わかった。じゃあ戻して」


「ああ。本当にごめん」


「もういいって」


 こうして久しぶりの友との短い再会を終えた。



◇◇◇



 目を開けると元の場所だった。


「こちらをどうぞ」


 手渡されたのは適性のある魔法属性が書かれている紙だ。祭壇の横に置かれた大きい水晶は魔力量を量る物で、どういう仕組みかはわからないが、魔力を量り終えると水晶の下に紙が現れる。そして、その中から最も適性のある属性が2つ読み上げられるのだ。


「レイティアラ嬢は全ての属性に適性があります」


「全属性……ですか」


「おめでとうございます」


「ありがとうございます」


 魔法属性は基本の7属性である火、水、風、地、光、闇、無と、そこから派生したものがある。


「続いてレティシア嬢」


 元の場所へ戻るとポンポンっと頭を撫でられた。驚いて見上げると、父様がとても優しい顔をしていた。


 ──おっっっふ。父様ってこんな顔できるの? 心臓に悪いんですけど?! ちょ~貴重な瞬間!!! ヤバい!! カメラ!! カメラが欲しい!!


「近いうちに話し合おう」


「はい」


「レティシア嬢の適性は風と地です」


 レティシアの魔力量は平均以下で適性は風と地だった。


 ──普通だ。実に普通だ。悪くはないのだが、あの子は気に入らないだろう。


 レティシアが戻って来たのを見て、父様が出口へと歩き出した。私や兄様たちも続く。そのまま入口に来ていた馬車に乗り込む。あの子は落ち込んだように俯いていた。


 ──父様はレティシアの結果には反応を示さなかったけど、どうしてだろう? 興味がないのかな?


 馬車の中でもレティシアはずっと俯いたまま小さく震えていた。時々、私を睨みつけていたけど知らん顔した。恐らく洗礼の儀の結果が気に入らなかったのだろうが、だからと言って私を睨まれても困る。結果がぱっとしなかったのは私のせいではないし。


 ──まさかこんなことで恨んだりしないよね? そんなこともわからない馬鹿ではないと思いたい。


 流石にそこまで馬鹿ではないと願いながら帰路に就いた。




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