2話
街の外へ出てピュア草の採取を終え、私はもう1つの目的の為に街から少し離れた場所にある森の奥へと向かっていた。
──うーん、何処だろう……。
しばらく森を探索していると目的だった対象を見つけた。
「ニャーン」
視線の先には1匹の猫型魔獣。この魔獣はDランクの羽ネコ。愛玩動物として貴族の婦人や令嬢たちに大人気なのだが、警戒心が強くなかなか人に懐かないので手に入れるのが難しい。
──私なら大丈夫……だよね? あの駄神、ちゃんと仕事してるよね?
多少の不安を覚えながら私は目の前にいる羽ネコに声を掛けた。
「ねぇ君、私と契約してくれない?」
『……いいわよ』
羽ネコはそっと近づいて来て、私の前でちょこんと座った。
「ありがとう」
私は羽ネコの前に膝を突く。すると羽ネコは右前足を噛み、そのまま前足を差し出した。私は持っていたナイフで左の手の平を切り羽ネコの前足を取った。
「──深紅の縁に誓う。我が命尽きるまで、従魔
を愛し、心を共にする。紅き縁で固く解けぬように、我らの心を結べ──。君の名前はイーリス。これからよろしくね」
「よろしく、ご主人」
「私はレイティアラ・セレアス・クレセンティア。レイラって呼んで」
「わかったわ、レイラ」
◇◇◇
目的を達成して街まで戻って来ると、私は門兵に声を掛けた。
「おじさん」
「どうした? 嬢ちゃん」
「森でこの子たちをテイムしたんだけど、まだ従魔師ギルドに登録してなくて。街に入っても大丈夫?」
「羽ネコとスライムか。よくテイムできたな」
「運が良かったんだ」
「嬢ちゃん冒険者だろ? 街に入れても大丈夫だが、なるべく早く従魔師ギルドに登録して従魔の証を着けるんだぞ」
「わかった」
門兵との話を終え街に入り冒険者ギルドに行く前に従魔師ギルドに登録しに行く。
実は街へ戻る途中でスライムに遭遇して、何気に可愛いな~と思って契約した。契約したのは一般的な透明なスライム。名前はシロハナ。
◇◇◇
従魔師ギルドの中は閑散としており、そのまま受付まで行く。
「すいません、登録したいんですけど大丈夫ですか?」
「はい。大丈夫ですよ」
「じゃあ、従魔師登録と従魔登録お願いします」
「それでは、こちらに記入して下さい」
──子供相手でも嫌な顔せず対応してくれる。この人は当たりだ!
目の前のお兄さんを見て喜びながら渡された用紙に必要なことを記入していく。
「書きました」
「確認します。名前はレイラさん、7歳。従魔はスライムと羽ネコ……。羽ネコをテイムできたんですね」
「はい」
「確認できました。それではこちらに血を1滴お願いします」
冒険者ギルドと同じように小さいプレートと針が出されたので、プレートに血を垂らすとプレートは緑に変わり文字が表記された。
「珍しいですね。初めてで緑のトリプルとは」
「緑のトリプル?」
従魔師ギルドのランクはこんな感じ。
・ブラックプレート(一流)
通称・黒。世界に10人も居ない。
・ブループレート(大物)
通称・青。世界に30人程。
・レッドプレート(一人前)
通称・赤。ダブルまでいけば凄い。
・グリーンプレート(独り立ち)
通称・緑。一般的なレベル。
・ホワイトプレート(仮免・見習い)
通称・白。まだ従魔師とは名乗れない。
※赤と緑には星があり、下からシングル・ダブル・トリプルがある。緑~赤のシングルまでが一般的なレベル。赤のダブルまでいけば凄い方。
従魔師ギルドは実力はもちろんだが、資質がランクに影響してくるらしい。どうやら私には従魔師としての資質があるみたいだ。
「なるほど」
「とは言え、これからランクを上げるには実力が必要になってきます。資質だけではランクは上がりませんから」
「当然ですね。あの、従魔の証って自分で用意した物でもいいんですか?」
「もちろんです。従魔の証と言っても、野生のモンスターと見分けるための目印なので、なんでもいいんですよ」
「わかりました」
「それでは、これで登録を終わります。新しい従魔と契約したらまた登録をお願いします」
「はい。それじゃあ……あ、そうだ」
「何か聞きたいことでも?」
「お兄さんの名前を教えて下さい」
「……これは失礼しました。僕はユルリッシュと言います」
「ユルリッシュさんですね。今日はありがとうございました」
従魔師ギルドを後にして冒険者ギルドに行き依頼完了の報告をする。
「レイラさん、羽ネコをテイムしたんですか?」
「運良くね」
「よかったですね。従魔が居れば受けられる依頼も増えますね」
「まずはランクを上げなきゃだけどね」
「レイラさんなら大丈夫ですよ」
「ありがとう。それじゃあ」
「はい。お疲れ様でした」
冒険者ギルドを出て屋敷へ向かいながら気配遮断と透明化を使い、門を抜けて窓から部屋の中へ入った。
丸めたシーツを戻し、元の服に着替えて色変えの魔法を解きベッドに潜り込んだ。