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アシェル視点




 アタシはアシェル。フェレスアーラ商会の商会長をしているわ。半年程前まで一介のお針子でしかなかったアタシが商会長になったのはある少女との出会いが始まりだった。


 半年前のあの日、いつもの様にちょっとした事で店主と言い争いになった。


 ──はぁ。拾ってもらった恩はあるけれど、お針子になったばかりの人間にもできることを1年以上やらされるなんて……。また、泣き寝入りするしかないのかしら。


 店を飛び出し人気のない路地に入った所で呼び止められ、振り返ると金青色の髪と瞳をした幼いながらも美しい少女が居た。


 少女はアタシが男であることに気づいているはずなのに、アタシの格好のことを気にする様子がない。だからなのか、言うつもりのなかったことまで話してしまった。


 辞められるなら辞めたい、と本音を零すと少女は、私の所に来ないか、と言った。


 私の所とはどういうことだろうか。そんな事を思いながらも詳しい話は場所を変えてしようと言われ、個室のある店にやって来た。個室に入ると少女は冒険者兼従魔師のレイラと名乗った。齢7歳。

 続けてアタシも名乗り、先程の話の続きをする。レイラは商会を立ち上げようと思ってるが、自分は人前に出たりするのが苦手でどちらかと言えば、裏で商品開発とかしてる方が合っている。だから、代わりに商会の顔となるトップになれる人を探してた所でアタシを見つけた、と言うことだった。商会では日用品や食料品、衣類も扱うとのことだ。

 正直に言うとやってみたいと思った。けれど、アタシはこの格好や口調のことで色々と言われてきた。その事をレイラに問うと、格好や口調は本人の自由だから好きにすればいい。変えろなんて言わないし、そんなことで店に来ないような奴はこっちから願い下げ。どんな格好してようが結局は実力があるかないか。実力があれば見る目のある人ならわかってくれる。どんな格好でも貴方は貴方だから気にする必要はない、と。初めてだった。今までは否定されてばかりだった。それなのに否定する事もなければ、それは本人の自由だから好きにすればいいと言ってくれたのは。一緒にやりたいと思った。この少女となら今までとは違うものが見える気がした。だから、アタシは少女の手を取った。


 具体的に商会の話をしようと思った矢先、驚くべき事が明らかになった。レイラが貴族の令嬢……しかも、公爵令嬢だったということだ。金青の髪と瞳は魔法で変えていたらしく、本来の姿は月白の髪にラピスラズリの瞳。魔法を解いた時は、驚きで目を見開いてしまったわ。だってそうでしょう? この帝国に2つしかない、皇族よりも力を持つと言われている公爵家、さらに言えば、世界の太陽、サンドロップと世界の月、クレセンティアと呼ばれるクレセンティアの令嬢が目の前に居るんだから。驚かない方が無理な話よね。だと言うのに、当の本人は畏まらなくていいとか言っちゃうんだもの。しかも! その後、さらに驚く事があったのよ?! これを使って服を作ってほしいって言われて出された物が、あの! 帳蜘蛛の糸と布だったのよ!! お針子なら喉から手が出る程欲しい物だけど、数百万ディネロは優に超えるのよ? そんな物をひょいと出しちゃうし、大量にあるから欲しかったら言ってなんて言うもんだからびっくりよ。


 話し合いの後、勤めていた店から私物を取って来てそのままガラクシアにあるクレセンティア公爵家に向かった。商会立ち上げの準備の為、しばらく公爵家に滞在する事になった。


 レイラには、いろんな意味で驚かされる。アタシには思いつかない様なアイデアをぽんぽん出すくせに、大切なところで抜けている。商会長をアタシがやる事になったのはいいけれど、自分は雇われる形でいいと言い出した。あれには驚いたわ。どう考えても共同経営一択でしょう?! だから、共同経営でないなら商会長はやらないと言うと渋々ながら納得してくれたわ。

 その後も、色々やらかしがあってわかった事は、レイラは言葉が足りないって事よ!! 勘違いさせる言い回しが多かったわ……レイラの容姿のこともあって勘違いさせることが多いのよ。あの子はもう少し自分の容姿の良さと言葉の足りなさに自覚を持ってほしいわ……。


 兎に角。商会は初日から売上は上場! ここから世界中にフェレスアーラの名が知れ渡るよにするわよ! レイラが居ればできない事はほとんどないような気がするわ!




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