20話
ただ今、深き森に来ております。ここは虫系のモンスターが多く生息している森で、この森には月光蜂という蜂がいる。この蜂は月光花という月の光を浴びて咲く花の蜜だけを吸う。月光花の蜜……月の密は栄養満点でとても美味なのだが月光花は数が少ない。当然、月の蜜もかなりの希少品で高級品である。
今日の目的は月光蜂のテイムと月光花の採取。月光花の栽培に挑戦して月の蜜を量産できないか試すのだが、正直言って成功する可能性は高い。我がクレセンティア公爵家は月の神・クレセンティートの加護を受けている為、詳しくは知らないがクレセンティアの人間の魔力が月の光を引き寄せるらしいのだ。これを使えば花の栽培に成功する可能性はある! すでに花を栽培するための施設は作ってある!
「お、あった」
森で恐らく1番大きい木に蜂の巣がいくつもできている。
「普通ならここで戦闘準備なんだけど、それは私のやり方じゃないからね……おーい、月光蜂さん〜」
蜂の巣に向かって呼び掛けると巣からたくさんの月光蜂が飛び出してくる。
『ニンゲン、ナンノヨウダ』
──おや? カタコトだけど言葉を話せると言うことは女王蜂かな?
「君、私にテイムされてくれない?」
私の問いかけに女王蜂らしき個体が近づいて来て、それから私の周りをぐるぐると飛び回る。
『ハナヲ、ヨウイ、デキルノカ』
「任せて」
『イイダロウ、ケイヤク、シヨウ』
「ありがとう」
はい。戦わずして新たな従魔が増えました。こんな感じで順調に従魔は増えております。
「よろしくね、モピーネ」
「うむ」
「モピーネには手伝ってほしいこともあるんだ。まあ、それは後で。レースアゲハのいる所に案内してくれない?」
「わかった」
契約した為、モピーネはカタコトではなくなった。次はレースアゲハを狩りに行く。アゲハと言っているが普通の蝶だ。この蝶は名前の如く羽がレース模様なので装飾に人気の素材だ。ついでなので狩りに行く。
モピーネに案内されたのは森を抜けた所にある一面が色とりどりの花で埋め尽くされた花畑だった。
「おぉ~、これは凄い」
そこかしこにレースアゲハが飛んでいる。
「それじゃあ、狩り尽くさないように気をつけて……っと。エアカッター」
風の刃でぶった切っていく。地面に落ちないように弱い風で受け止めています。抜かりありません。
◇◇◇
「ウガルド~?」
私は職人街に購入した土地にあるフェレスアーラ商会の工房にやって来た。かなり広い土地を購入し、そこに職人たちの工房や工場を造ったのだ。ちゃんと従業員寮や職人たちの寮もある。
「お嬢か? 悪いがこっちに来てくれ」
工房の奥から返事があった。私が貴族だと知っている関係者は私のことをお嬢と呼ぶ者が多い。
「お邪魔しま~す」
一応声を掛けてから奥の作業場へ入る。いつもはちゃんと入っていいか聞いてから入りますよ。今回は先に許可をもらったので、そのまま入ります。
「あれ、もしかして取り込み中?」
奥の作業場に入ると親方であるウガルドと弟子の1人であるセオが居た。しかし腕を組んで仁王立ちしているウガルドの前に何故かセオが正座させられているのだ。
「いや、いいんだ。コイツはこのままで」
「なにやらかしたの?」
「また寝坊しやがったんだ」
「あらら……」
「こんな奴のことは放っておけ。で、どうした?」
「ふっふっふ。いい物が手に入ったから持って来たんだよ」
「いい物?」
無限収納からレースアゲハの羽を取り出すと、ウガルドが目を見開いて身を乗り出してきた。
「おい、お嬢! こいつはレースアゲハの羽か?!」
「そうだよ」
「どれくらいある?」
「途中から数えるの忘れたけど大量にあるよ」
「あるだけくれ!」
「もちろん」
無限収納に入っていたレースアゲハの羽を全部取り出した。600羽程あったので150頭は狩ったということだ。レースアゲハはこの辺りだと深き森を抜けた先にしか生息していないのだが、そこに辿り着くのが難しい。深き森に生息するモンスター自体はそれ程レベルは高くないが、毒を持つモンスターが多いので奥まで進めないのだ。
「じゃあ、また何か手に入ったら持って来るね」
「ああ、助かる」
「セオ、寝坊はダメだよ」
「うっす……」
工房を出て冒険者ギルドに行ったのだが、そこで私がレースアゲハを狩ったことがバレてしまい羽を買い取らせてくれと言われたが、すでに知り合いにあげたことを教えるとそれはもう悲しまれた。
──職人たちからすればいくらあっても困らない素材だからね。
そしたら後日、私にレースアゲハの羽の採取の指名依頼が来て、またしても深き森を抜けた花畑に行きレースアゲハを狩り尽くす勢いで狩ることになった。それが何度も続いて最終的には1週間の間、花畑の近くに泊まり込んでごっそりと狩っていくことになったのだ。
──虫系のモンスターは苦手なんだよ! 今度からは絶対にバレないようにやらないとね。また面倒な指名依頼でも出されたらたまったもんじゃない。




