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18話




 新年を迎え、いよいよフェレスアーラ商会が始動した。店はガラクシアの中心部で貴族も平民も足を運べるような場所を選んだ。いずれは帝都に本店を移転させるつもりでいる。開店前からお店の前には行列ができており、開店すると同時に人がなだれ込んできた。


 商会では人族以外の他種族の従業員も雇用していることをエノックを通じてそれとなく周知させた。店に来た人たちの中には他種族の、特に獣人を見て騒ぐ人もいたが、気に入らなければ帰ってくれて構わないと伝えると渋々だが黙ってくれた。その多くが貴族であったが特に気にしない。こちらが粗相をしたのであれば謝罪もするが、従業員の教育はきちんとした。もちろん至らぬところもあるかもしれないが、そこはこれから成長していってくれればそれでいいと思っている。


 私は従業員に扮して店に出ていた。この世界は子供であっても店を持てるが、やはり少数なので私が副会長だということを知っているのは、アシェル以外だとそれぞれの部門の責任者くらいだ。責任者たちは私とアシェルが集めた人材なので問題なし。他の従業員には知らせていない。


 お昼過ぎになって少し落ち着いてきた頃、フェリとグレイスおば様、ラルお兄様とエド兄様がやって来た。


「いらっしゃいませ」


「……ティア?」


「シーッ」


 声で私だと気づいたフェリに口の前に人差し指を立てて、正体がバレないようにしてもらう。今の私は色変えの魔法で髪と瞳の色を紺色にしているし、名前もレイラで通している。


「驚いたわ、本当にティアなの?」


 意図を汲み取ってくれたフェリが小声で話し掛けてくる。グレイスおば様たちが驚いている。


「ええ。この姿の時はレイラと呼んで」


「……わかったわ」


「それにしても、全然わからなかったよ。それも魔法なのかい?」


「そうよ。色変えの魔法。私は髪と瞳の色を変えるのに使っているけど、服の色を変えたりもできるわ」


「レイラはすでに魔法を使いこなしているのね。すごいわ」


「ありがとうございます。さて、本日は何をお求めですか?」


「「洗髪剤と化粧品を!!!」」


 私の問いかけにフェリとグレイスおば様が力一杯叫ぶ。まあ、叫ぶと言っても小声でだけど。ラルお兄様は苦笑いを浮かべ、エド兄様は呆れたように2人を見ている。


「では、こちらへどうぞ」


 結局洗髪剤と化粧品をひと通り買い、他にも気に入った物を大量に買っていった。ラルお兄様とエド兄様も途中で気になる物を見つけたようで、帰る時はどちらもにこにこと笑顔を浮かべ満足そうにしていた。


 フェリたちは獣人に対する忌避感がないらしく、獣人の従業員の対応にも嫌な顔をしなかった。やっぱり理解のある人たちはわかってくれるのだろう。



◇◇◇



 夜の20時になり閉店の時間となると、店の奥からアシェルが出てきた。


「みんな、お疲れ様」


「「「お疲れ様です、会長!」」」


「今日は初日で休む暇もなかったでしょう。少し休んだら掃除をして帰っていいわ」


「「「承知しました」」」


 アシェルが店の奥へ戻る際に私の方をチラリと見たので、小さく頷いておく。その後、掃除を終えて店の奥……正確には店の2階にあるアシェルの執務室へと向かった。


「お疲れ様~」


 ノックもせずにドアを開け部屋に入ると、そこにはアシェルの他に販売部門の責任者であるユフェリと仕入れ部門の責任者であるカムロンが居た。


「お疲れ様です、レイラ様」


「お疲れさん」


「2人もお疲れ様。じゃあ、早速始めようか」


 私たちは初日を終えての話し合い……もとい報告会を始めた。


「まず、私から。一番多く売れたのは洗髪剤と化粧品でした。貴族平民問わず女性に大人気で、平民は家族でお金を出し合って買っていく人が多く見られました」


 貴族と違って平民は毎日お風呂に入るわけではないし、そもそも平民はに家お風呂がないので3日に1度お湯を沸かして髪を洗い体を拭く。なので洗髪剤や化粧品も1度買えば1ヶ月~2ヶ月はもつ。皇宮から皇后陛下の遣いの者が大量購入して行ったそうだ。


「次に多かったのは万年筆です。これは貴族の男性が多く買い求められました。奥方やご息女にガラスペンを買っていく方も多かったです」


 貴族の男性は仕事の際に書類に署名することが多いので助かるのだそう。こちらも皇宮から皇帝陛下の遣いの者が購入して行き、さらには皇帝陛下と皇后陛下をイメージしたオーダーメイドの万年筆をご注文された。皇后陛下はガラスペンもご注文された。


「最後は食料品や日用品。食料品ではインスタントスープやコーヒー、紅茶。日用品では石鹸やタオル、マッチなどがよく売れました。それと同じくらいに既製服の売れ行きも上々でした」


 父様とエノックでの宣伝効果が抜群だったらしく、貴族からは仕立ての注文もあったらしい。やはりアシェルの腕は確かなようだ。


「どちらも定期的な売り上げが見込めると思います」


「おぉー、初日から凄いじゃないか。確かにインスタント商品は早くて簡単だから、独り身の男には嬉しいだろうな」


「カムロン。そのインスタント商品の次の品が実現できるかは貴方にかかってるんだけど?」




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