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16話




「の、脳筋ダルマ……?」


「貴方のことですわ、脳筋ダルマ様。いいですか? お兄様たちはまだ体が出来上がってないのです。それなのにこんなに無茶をさせて……そもそも、騎士団の騎士たちにこの稽古は耐えられるのですか? 副団長?」


 騒ぎを聞いてやって来たであろう副団長に問いかけると、口ごもりながらも答えてくれた。


「い、いえ。隊長や副隊長レベルならまだしも、平の騎士たちでは……」


「ですって。騎士団に所属する騎士でも耐えられない稽古を騎士でもない子供に耐えられるとお思いで? そもそも、お兄様たちが学びたかったのは、自衛のための剣術、そして貴族男子としての嗜みである剣術。本格的な剣術はまだ望んでいないと思うのですが?」


「いや、しかしだな……」


 まだ納得できない様子の脳筋ダルマ様に、とうとうプツンときた。


「しかしもかかしもねぇんだよ!!! どうやら、まだ頭に血が上っているみてぇだな。もっと冷やしてほしいってことだよなぁ? ああ、安心しろ。私はどこかの脳筋ダルマと違って手加減は得意だからな。ふふふ」


「お、おい? 何だかどんどん氷が硬くなっているんだが?」


「ふふっ、ふふふふふ」


 私が本気で怒っているのを感じたジュリオ兄様が他のみんなを避難させたのを確認すると、私は一気に魔力出量を増やし訓練場をさらに氷漬けにしていく。


「アイシクルランス」


 脳筋ダルマに近づきながら、頭上に無数の氷の槍を作る。パキンパキンと音を鳴らしながら脳筋ダルマの前までやって来る。


「お、おい?」


「大丈夫だって。ちゃんと手加減してやるからさ。ふふふ」


 私は広げていた扇子を空いている方の手の平に打ちつけパチンと閉じた。すると、頭上にあった無数の氷の槍が脳筋ダルマに降り注ぐ。氷が砕けたことにより視界が悪くなるが、気にせず再び無数の氷の槍を作り放つ。着弾? する前に脳筋ダルマが飛び出してきた。


「お、おい?! かなり危なかったぞ?! てか掠ったぞ?!」


「ははは。でも当たってないだろう? ふっふふふ」


「い、いや、そうだが……って違う!そうじゃない! 危ないだろうが!?!?」


「そんなことないだろう。当たってないんだから。それより、まだ終わりじゃないぞ? フリージング」


「は???」


 フリージングで相手の動きを封じるが、1度目と違い魔力量を少なくしたので案の定、脳筋ダルマは氷を砕こうとする。しかし、完全に砕かれる前に次の行動に出る。キレているため言葉遣いが崩れてるが、そんなこと知ったこっちゃない。


 ガキーン。

 脳筋ダルマは持っていた木剣で私の氷の剣を受け止めた。しかし、氷の剣が放つ冷気によって木剣が凍りついていく。


「チッ……やり過ぎだろう、レイティアラ!!!」


「その言葉そっくりそのまま返す。よくも、お兄様の顔に傷をつけてくれやがったな!!! 万死に値する!!! この程度じゃ許さねぇぞ?? 安心しろ、父様からも死なない程度に()構わないと許可をもらっている」


「何考えてんだアイツ!」


「それはこっちのセリフだ。本当にアンタは何を考えてる? あれは最早剣術の稽古という名の虐待だろうが!!」


 脳筋ダルマの足元を凍らせて動きを封じ、左足で回し蹴りを繰り出すが右腕で受け止められてしまう。私は左手で脳筋ダルマの右手首を掴み、私を捕らえようと伸ばされた脳筋ダルマの左手首も同様に右手で掴む。そして、すかさず右膝で顎に膝蹴りを入れる。脳筋ダルマは一瞬ふらつくがすぐに反撃がくるだろうと予想し、膝蹴りを入れた足で胸を蹴り空中で一度バク宙して後ろへ飛んだ。着地すると、すぐさま氷の剣を作り構える。


「痛てぇじゃねぇか!」


「当たり前だろうが。痛くなるように身体強化してやってんだから」


「それにしてもレイティアラ、お前さん素人の動きじゃないぞ」


「私だって自衛くらいできる」


「いや、自衛レベルではないだろう……まあ、いい。降参だ降参。俺が悪かった」


「わかればいい。お兄様たちにもちゃんと謝れよ」


「ああ」


 私はサイラスおじ様と訓練場を凍らせていた氷を砕き、お兄様たちの(もと)へ急ぐ。


「お兄様! ああ、なんてこと。お兄様のご尊顔に傷が……」


「ティア、俺の心配は?」


「兄様は傷が映える顔だから最悪傷が残ってもいいんです。でも、お兄様はダメですよ?! お兄様のご尊顔に傷なんて……お兄様に対する冒涜です。お兄様、すぐに治しますね」


「酷くね? 俺も怪我してるんだけど?」


「では、兄様はこれでも飲んでください」


 メルお兄様の傷を治しながら、無限収納(インベントリ)からポーションを取り出しジュリオ兄様に投げて渡す。


「なぁ、ティア。コイツらにもポーションやってくれね?」


 ジュリオ兄様がコイツらと指差したのは、未だに傷だらけのうえ疲労困憊で倒れている殿下たちだった。


「そう言えば、殿下たちも居ましたね。どうぞ」


 ジュリオ兄様にしたのと同じように殿下たちにもポーションを投げ渡す。


「ティア、殿下に物を投げて渡すなんて……」


「すみません、お兄様。ですが私は今、手が離せないので仕方ないんです」




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