偽りの夫婦
わたしの夫は、医者です。
彼に直せない症状はありません。
器具さえ揃っていれば、直せないものはないと彼はいつも言っていました。
わたしは、夫の帰宅が遅くても必ず起きて待っていたし、バランスの取れた健康に良い晩御飯を作り、いつも夫を献身的に支えていました。
夫は優しい人でした。
夫は、わたしが欲しいと思う物はどんなものでも買っていいよ、と言ってくれました。
そのため、わたしは必要なもの以外は、望みませんでした。
夫は、休日には、洗濯物を畳んだりと家事を手伝ってくれました。他にも、皿洗いをしてくれたり、私の体調が悪い時には、夕食を振舞ってくれることだってありました。
私の夫は、読書が趣味のため、休日は家で過ごすことが多くありました。
わたしは無駄遣いが好きではありませんでしたし、夫と一緒に過ごせる、それだけで満足でした。
ところが、なんということでしょう。
運命とは、残酷なものなのですね。
ある日、突然、夫は離婚の言葉を口にしたのです。
些細な言い争いでした。
まさか、彼からそんな言葉が出てくるなんて。
他に、女でもできたのかと言うと、そうではないと言います。
わたしは、部屋にこもり、考えました。
そして、離婚することを決意したのです。
それは、彼の人生を考えた、彼の為の離婚でした。
わたしには、他に女はいないと言っておりましたが、きっとわたしを傷付けないための嘘なのでしょう。わたしには分かるのです。だって、長年連れ添った夫婦なのですから。
わたしは、離婚を決意しました。
ところが、離婚届けを記入しているときに、
夫から抱きしめられました。
夫は、やはり君がいない人生など考えられないと言ってくれました。
わたしたちは、また夫婦でやり直すことに決めました。
次は、夫の証言になります。続く。。。