第11話 明日にむけて、作戦会議だ!
夕食後。
今日も侯爵アウグストのスルーに感謝しつつ、クローディアは自室にと割り当てられた部屋でエルネストを待っていた。
ほどなくしてエルネストが、寝支度を終えてやってきた。
昨晩はエルネストの願いに困惑させられたものの、今日は逆にありがたい。明日に向けて、最後の難題を話し合う必要がある為である。この問題を解決しなければ、先に進めないのである。
今、クローディアとエルネストはベッドの上で並んで座っている。もちろん手を繋いで、である。
ララもこの会議の重要な参加者だから、エルネストにララの声が聞こえないと困る。
「エルネスト様、今日はお疲れさまでした。2人で頑張ったおかげで、ドワーフの大翁様へのお土産は、用意が出来ました。後は私たちがドワーフの大翁様にお会いして、亡霊を追い払う、あるいは亡霊を視えなくする方法をお尋ねするだけです」
「うん」
「ここで問題が1つ」
「どうやって抜け出すかだな」
「そうです」
貴族の底辺、殆ど平民と同じ生活をしているクローディアであれば、自領ならばある程度外出も自由にできる。
しかしエルネストは高位貴族で、昨日森への外出でさえ、許可が必要だった。況して今回の外出は具体的にどこへと目的場所がわからない上、理由がドワーフの大翁に会いに行きたいなど、到底大人が信じられぬものである。視えぬ彼らには、子供の戯れとしか思われないだろう。
だからと言って、メイドや護衛の目の前で、黙って2人が屋敷から抜け出したら、大騒ぎになるのは目に見えている。
「どうしたらいいかしら、ララ。何かいいアイデアはない?」
クローディアの頭の上で、昼間に作った彼女のクッキーを食べている妖精に聞いてみる。
クローディアも昼間からずっと考えているが、全くよいアイデアが浮かばない。
<そーねー。ヌーアを2人の身代わりに置いておけばいいのではない?>
「ヌーア?」
エルネストが首を傾げる。
「土の中に住んでいる大人の手のひらサイズの生き物です。大きな鋭い手で、土をかき分けて地中を進むのですのよ。ララによると、妖精の眷属なのだそうです」
<そう! ヌーアは普通の人間にも見えるから、いいんじゃないかしら>
「でも、僕らの身代わりにしては小さすぎない? 何より、姿がまるで違うよ」
<そこはそれ! 私がヌーアを2人の姿に見えるようにするのよ!もちろん同時にクローディアたちの姿も見えなくしてあげる!>
「ララ! そんな事ができるの! すごいわ!」
<ふっふーん! ララはね、結構すごいのよ!>
クッキーを食べ終わったララは、エルネストの頭に飛び移ると、腰に手を当て、むんと胸を張る。
<ただすっごい疲れるから普段は目くらましなんてしないけどね。嫌な奴にあったら、姿を消せばいいだけだし、嫌がらせなんかで、疲れたくないしね!>
ララはクローディアの目の前に降りてくると、指をひらりとふる。
<クローディアの為だから、やるのよ! 特別なのよ!>
「ありがとう! ララ!」
クローディアはララの小さな指に、自分の指先をちょんと当てて感謝を伝える。
「ララ、感謝する」
エルネストも胸に手を当てて目をふせる。
<クローディアが頑張って貴方を助けようとしてるから、力を貸すの! だからクローディアを大事してね!>
「ああ、もちろん! 一生大事にする!」
子供は大げさに表現するものである。また子供の“一生”はあてにならないものである。そう、あてにならない筈である。クローディアは笑顔のまま聞き流す。聞き流す力、これ大事。
<じゃあ、私はここのヌーアを探して話をつけてくるわ! クローディアたちは早く寝なさい! お子様はもう寝る時間でしょ!>
「でも、ララだけに頼むのは申し訳ないわ。私も一緒に行くわ」
<ダーメ! 寝不足でドワーフの大翁と、対応できると思うの? 早く寝て、体力を回復しなきゃ!>
チッチッチッとララが指を振って、クローディアをいなす。
そう言われてしまうと引き下がるしかない。
「わかったわ。お家に帰ったら、一杯お菓子を作るわ。ララの為だけにね」
<ふふ。楽しみにしてる! ほら! そうと決まったら、早く布団をかぶって!じゃあ、行ってくるわ!>
ララは空中でくるんと回ると、消えてしまった。
あっという間である。
これはもうララを信じて、すべてを任せるしかない。
ならば、自分たちにできるのは、明日に備えて早寝するのみ。
「さ、エルネスト様、ララの言う通り、早く休みましょう。明日は早いですから」
「ああ」
2人は手を繋いだまま横になる。
会議が終わった今、手を放してもいい筈だが、エルネストはがっちり握って放す気配がない。
まあいい。エルネストの視野を広げる為にも、必要な事だし、それでエルネストが安眠できるなら、多少の寝づらさは目を瞑ろう。
くわっと貴族の子女らしくないあくびをすると、クローディアは目を閉じた。
「おやすみなさいませ。エルネスト様」
「おやすみ、クローディア」
30秒後、2人は昼間の疲れか、深い眠りに落ちた。
クローディアはいうに及ばず、エルネストも不眠症はどこへやら、何物にも邪魔されぬまま、朝まで目を覚ます事はなかった。
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