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第1話 のどかに畑で戯れる。平和、これ一番

新連載です。よろしくお願いいたします!

初めて妖精を視た時、クローディアは世界が明るく広がったのを感じた。


「お嬢さま~! 旦那様がお呼びです!」

「はーい!」

 メイドのミカの声に、クローディアは顔をあげた。

 今クローディアがいるのは彼女が担当しているテンリ畑である。

 テンリとは地中に白く太い根を張り、地上に出ている葉は太陽を目一杯浴びるように大きな葉を多数つける。この白い根の部分から砂糖ができる。

 クローディアは齢6歳にして、このテンリを育てる畑を広い範囲任されている。

 とは言っても、畑仕事は重労働である。

 勿論、使用人にも沢山いや、大部分手伝ってもらっている。

 それでも、クローディアが畑に出るのと出ないのとでは、実りが格段と違うのである。

 その理由は。

「もう少し一緒にお話できると思ったけれど、用事ができてしまったわ。この後、畑の様子を見てもらってもよい? このところ少し元気がないの」

 クローディアはテンリの根元あたりに立つ、小さな土妖精にお願いする。

<まかせろ! 代わりにお菓子をくれ!>

人型の浅黒い顔にクリンとしたこげ茶の瞳のちんまい妖精は、精一杯手を伸ばしてクローディアに菓子をねだる。

「もちろんよ。はいどうぞ」

 クローディアはポケットに入れていた包みから、一枚クッキーを差し出した。

<わーい! クローディアのクッキー! 元気になるクッキーだあ!>

「ふふ、喜んでもらえて嬉しいわ。それではお願いね」

 土妖精は大きくブンと頷くと、歌を歌いながら、踊り出した。

 妖精の歌と踊りに、キラキラと土が光る。

 クローディアはそれを見て、目を細めると、近づいてきたミカに尋ねた。

「こんな時間にお父様がお帰りなるのは珍しいわね。なにかしら?」

「さあ、私にはわかりかねます。それよりも、お嬢様、ほっかむりはおやめくださいといつも申しておりますのに」

「ごめんなさい。でも、畑を見て回る時、帽子だと引っ掛かったり、風で飛ばされたりするのよ。だからほっかむりのほうがよくて」

「もう。折角可愛んですから、もう少し身だしなみに気を付けてください。いつどこで見初められるかわからないんですから」

 クローディアは父譲りの栗色の髪に、母譲りのグリーンの瞳。目鼻立ちは将来飛躍的に上昇するのを期待したいところである。

「ふふ。こんな畑に誰が来るというの? それに私はまだ6歳になったばかりよ?」

「もう6歳ですよ! お嬢様はいい旦那様を見つけて、このグレームズ男爵家を盛り立ててもらわなくてはならないんですから!」

「あら、男爵家の跡継ぎは弟のライルよ。きっとあの子が男爵家を立派に盛り立ててくれるわ。私は、将来叔父さまへついて世界中を旅するのよ」

「ならば、私もその旅に同行します! そこでお嬢様は運命の人と出会って結婚をするのです!そして沢山子供を産んで、私はそのお子様たちをお育てするのです!」

「あらあら。ミカの生涯設計はもう決まっているのね。私よりも、貴女がお嫁に行く方が先ではない?」

 クローディアの生まれたグレームズ男爵家は、慎ましい。

 何せ、クローディアが畑仕事をしている位だ。

 だから、使用人との距離が近い。

 王都から離れた地にすむクローディアには、貴族の友達はほとんどいない。

 メイドや領地に住む子供たちがクローディアの大切な友達だ。

「う。それは! あるかもですけど!」

 ミカはまだ11歳、されど11歳である。ミカの赤くなった顔をみるに、気になる男子がいるのかもしれない。薄茶色のクルクルの巻き毛に鼻に散るそばかすがチャーミングである。クローディアよりよっぽど需要がありそうである。

「もう! 私のことはいいんです!それより、早く行かないと、旦那様に怒られますよ!」

 照れ隠しにプリプリ怒るミカの後を、クローディアは笑いながらついて行った。

どうか、読んでくれる方がいらっしゃいますように!


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