幸せの権利
彼女の名前は有家セカイ。彼女は自らをアリスと名乗り、転校初日から教室から飛び降りたり、柄の悪い先輩達と乱闘、クラスを巻き込んだ大騒動を起こしてしまい早速周囲から浮いた。
実は、それも長くはなかった。
アリスの無邪気な笑顔からか。
小学生にも劣らない容姿の幼さからか。
それともアリスが繰り出す特異体質ゆえの数々の異能が人目を惹くのか。
どれかはわからないが、数週間で手の平を返すように大人気になった。
「俺、あいつがなんでアリスって呼ばれてたかわかった気がするよ」
現在、体育の授業中。試合形式でバスケをしている中で俺と友人Aは敵として同じポジョンにいる。友人Aは攻守が激しいスポーツの中で唐突な話を振ってきた。
「またっ、そうやって……俺の注意を逸らすっ、作戦だろ!」
「アリスってさ、ふしぎの国のアリスから取ってきてるだろ?超人的な身体能力に頭脳明晰。多くの人からも好かれて、まるで物語の中の住人だ」
俺は息を切らして走り回っているのに、同じだけ動き回っていても関わらず息を切らさず喋れる余裕がありそうな友人Aが気に食わない。
「そっ、そんなの…しらねぇよ!」
パスを受け取って油断している友人Aの隙をついてドライブで切り込み、すかさずシュートッ!
ーーバンッ
友人Aは俺のシュートに追いつき、俺の手から離れたボールを簡単に打ち落としてしまった。
「お前やっぱ下手になったな」
「ぜぇ…ぜぇ……うっ、うるえせぇ」
友人Aがドヤ顔で挑発してくるが挑発に乗ってやるほどの体力はもう無い。
友人Aはアリスが現れてから特に俺にしつこく構うようになった。それからずっとアリスの話を振ってくる。
みんなしてアリスアリスアリスアリスって……正直イライラしてくる。
「ーースイッチ!」
チームメイトが抜かれてしまってフォローに入る。
抜いてきた相手はアリスだった。アリスは笑いながらドリブルをついて巧みなハンドリングで俺を翻弄する。
ストレスの対象が目の前に現れて更に俺の体温は上がる。
「絶対抜かせねぇ」
アリスのドリブルに食らい付く。
「相手になるのかなぁ?」
アリスは俺のディフェンスを確認すると立ち止まりボールを奪われないようにトリッキーなドリブルを欠かさずにこちらの様子を伺っている。
完全に煽られている……気がする。
益々腹が立って飛びついてしまいそうだ。
だが俺は焦らない。昔から相手を観察する事だけにはたけている。アリスがこちらの様子を伺ってくれるなら俺はアリスの作ったこの時間に仕掛ける。
アリスには決まった技を繰り出すクセがあることを見抜いた俺はそのタイミングを見逃さず「貰った!」と意気込みボールを奪いに行った。
が、アリスは難なく俺を置き去りにしていく。
「わざとかよッ!」俺は尻餅をついてへばってしまった。
友人Aが笑いながら手を差し伸べてきた。「要らねぇよ」と言って手を払う。すぐに立ち上がりアリスを目で追った。
あいつが転校してきた日の出来事から、何故か無性に腹が立って仕方ない。思わず「チッ」っと舌打ち、溜息をつく。その様子を隣で見ていた友人Aが俺の肩を叩いて笑い
「なんだよ、そんなに悔しかったのか?」と茶化してくる。
「そんなんじゃない……」
「ふ~ん……そっかぁ」
「何なんだよ!」
意味ありげな口調と目線が癪に障り思わず強く当たってしまったが友人Aは一切驚くことなく、むしろ呆れた顔をして話はじめた。
「そうやって怒んなよ。知らねぇだろうけど津秦って、前はさ、あんな感じだったんだぞ」
友人Aは指さして俺の視線を誘導する。目線の先には馬鹿みたいに笑いながらバスケをするアリスがあった。
「――はぁ?」あんな感じだったって?冗談じゃない。
「いやっ、あそこまで規格外じゃないけど、鬱陶しいくらいずっと笑ってて、無敵って感じだった。何か事あるごとに夢や目標を語り出して……今お前アリスと攻防してた時の顔そんな感じだったからさ。なんか珍しいなって思って笑ってたんだよ」
「……そんなつもりはなかったし、人は変わる」
良くも悪くも。
「悪く変わりすぎだ馬鹿野郎――」友人Aは少し寂しげな雰囲気をまといながら俺の前を走って行った。
俺はもう足腰が動かない。手をあげて体育教師に交代を頼んで体育館の隅すみで座り込んで休憩した。クラスメイトたちが楽しそうにバスケをする風景をじっと眺めていると自然とアイツのことを目で追っている。
後ろ姿や横顔しか見えないが上下に揺れ靡なびく髪が白銀に輝いて見えて……。アリスがこちらに向かって子供のように手を振る。
「ーーいちいち眩しい」
この時の俺は思った以上に捻くれて、手を振り返す事なくジッとアリスを眺めていた。
◇ ◇ ◇
ーー授業中。
アレから俺に対するアリスのちょっかいは継続して行われていた。背中をひたすら指で撫でられる。触られてるから触っていないかのギリギリのライン。
最初はくすぐったい感覚で声を我慢するのが精一杯だったし、それをみていた友人Aは必死に笑いを堪こらえていたが数週間が経つと俺も一切動じる事がなくなり友人Aも白けてしまった。
それでも尚続くアリスの奇行。
実はクラスメイトたちの間でもアリスのこの奇行は周知されていて、その奇行がありもしない噂を生み出す事となる。
それが、津秦とアリスは陰で出来ている説。
流行りや情報に疎い俺でさえも耳にしてしまう噂。一般生徒同士の恋愛事情。普通はこんなに話題にならないのだが相手がアリスだから流行ってしまう。
アリスは何から何まで規格外。ずば抜けた運動能力に、学年トップの成績。前回の中間テストでは五教科ほぼ全て百点。
ほぼ、というのも名前の書き忘れが一枚あったが独特な筆跡と他教科の優秀さでアリスであるという事が直ぐに判明した。
悔やまれるのは幼児体型である事くらいだが、無邪気に笑う姿は天使のようだと言われアリスが転向してきて二十日経たない内にファンクラブまで発足したらしい。
最近やたらと物が無くなったり、朝登校した時に上履きがなくなっていたり、机の上に俺だけ明日が積まれてたりと微妙な嫌がらせを受けていたのだが友人Aからファンクラブの話を聞いた時、俺は望まぬ敵意に絶望するしかなかった。
友人Aは色々疎い俺に時折有力な情報を提供してくれる。【俺とアリスが出来ている説】も気持ち悪くニヤついた顔で教えてくれた。勿論、俺は否定したがどうやらアリスはこの話に対してノーコメントを貫いているらしい。
一体どう言う事なんだ?
アリスとのコミュニケーションは転校初日のみ。後は何気ないものだ。
朝、目があったら「おはよう」と。
失った教科書をちょっと貸してもらう時に「ありがとう」と言う。
それくらいのレベル。それでもひとつだけ周囲の誤解を加速させている現象を知っている。それが事あるごとに手を振ってくるあの行為。
そんな事を考えているうちに本日の授業が終わる合図を知らせるチャイムが鳴り響き生徒たちの放課後が始まる。
「津秦、ちょっと後で職員室へ来なさい」教師から呼び出されてしまった。
正直、心当たりしかない。友人Aがわかった風に装って何も言わずに何度も何度も俺の背中を叩いてくる。それで励ましているつもりなのか?
イラッとする。渋々教室を出て職員室へと向かう廊下の途中で幾人かの生徒に声をかけられた。
「アリスさんと付き合ってるんですか?」
「お前、あの子に手出してんのか?」
「今度自分の事をアリスさんに紹介してください」
全部アリス関係、今やアイツは学校のスターである。最初こそは否定したりしたが、不思議なことで否定を重ねれば重ねるほどに次の日登校すると確実に上履きはどこかへ飛ばされてるし、教材はなくなる。
親には言えないし、教師に相談しても笑ってはぐらかされる。表立って何か嫌味を言われたりはしていないから苛めではない……そう思いたい自分がいる。正直、鬱陶しいと感じている友人Aも今では少しだけ心強いと認めなきゃいけないのも腹立たしい。
そんな苛立ちの雰囲気を隠せないまま入った職員室。そこで待ち受けているのは俺を呼びつけた女性教員。太田先生だ。
「まぁ、そこに座りなよ」職員室の片隅にあるソファーが置いている席に案内される。俺は言われるがままソファーに座り太田先生が正面に座って深刻な面持ちで話は始まった。
「君、最近結構噂になってるね」
「えっ、あぁ、なんだ……そんなことですか」
「他にも心当たりがあったのかな?」
ギクリ。
「――まぁ、もっと言いたいことはあるけど“今回は”アリスさんとの関係性で間違いないよ」
「先生も大変ですね。生徒たちの噂話に振り回されるのも」
「そうね。別に私は誰がどんな恋愛していようが全く関係ないのだけれど、君は違うのよ。他の先生から苦情が来ているわ」
「何で?」
「あなた殆どの授業の教材を持ってきてないらしいじゃない」
あぁ、そのことか。
「その件については、ちゃんと各先生方に相談した筈ですよ?」
太田先生も最初は唖然としていた。暫くすると腕を組んで深く溜息をついて呼吸を整えている。俺はその間に続けて言った。
「最近、誰かが俺の教材を盗んでいます。それを毎回買っていては俺の小遣いもなくなりますし、こんなこと親にだって相談できません。先生方にもしっかり相談しましたが、どの先生も笑って適当に話をごまかして――」
「――わかった、わかったからここでそれ以上言わないで」太田先生は非常に困った様子で話を遮ってくる。俺はそれ以上何も言わず見兼ねた先生が話始める。
「この話はするつもりがなかったのだけれど、津秦君。今年に入ってから提出物もロクに出してないじゃない。それにテストだって名前を書いたらそれで終わり……去年はそんな事なかったじゃない。もっと活発的でしっかりしてたわ。一体どうしたの?」
「はぁ~……この話が今回のこれとなんの関係があるんですか」
「あるわよ。君の授業態度や様子を見ていれば、先生方もただの言い訳にしか聞こえないじゃない」
「つまり今回のことについては、モノを盗まれた被害者は俺のはずなのに、非があるのは俺にあると……はぁ~、なんだかなぁ~」
太田先生は無言になってしまった。
「まぁ、この話を例えるとあれですよ。自転車を盗まれた筈なのに盗まれた人が責められるという話。盗まれる多くの理由は確かに鍵をしていなかったことにあり、そこに非はあるのは明らか……でも必要以上に怒られるのが許せない。間違いなく窃盗した奴の方が悪い。盗まれて悲しくて辛い気持ちで家に帰るとまた罵声を浴びせられる。それなのに犯人は悠々自適にタダで自転車を乗り回して人の気も知らないで同じ時間を生きていると思うと……馬鹿らしく思いませんか?苛めの話もそうですよね?苛めを受けた被害者である筈なのに苛められる方にも原因があると責められる傾向も――」
「ちょっ、ちょっと待って!わかった!わかったわよ」太田先生は苦笑い。
「ちょっと笑かすつもりで言ったんですけど……」
「ストレート過ぎてなにも笑えないわよ……教材の方は私がなんとかしてあげる」
「何とかって?」
「用意してあげるのよ。その代わり、二つ条件があるわ。一つはもう盗まれない様にちゃんと管理しなさい。確かに窃盗は窃盗した人が悪い。でも失敗から何も学ばないのは、ただの馬鹿よ」
「はーい」
「もう一つは……可能なら以前の君をもう一度見てみたい」何で先生がそんな悲しそうな顔すんだよ。
「……機会があればね」
人は必ず変わる。良くも悪くも。変わったことを受け入れられない周囲が悪い。何かを諦めるってそんなに悪い事なのか?むしろ変らないことを強要しようとする方が悪じゃないか。
夢、希望、目標。
俺たち子供は無自覚な意思によってそれを必要に押し付けられる。
そんなものがないと人は生きていけないのか。それがないと幸せになれないとでもいうのか……。
あの後、俺は何も言わず職員室を後にした。教材は今週中にでも太田先生が揃えてくれるそうで。まぁ基本的にいい人なんだろう。でも、なんだろう。俺は太田先生も友人Aも嫌いだ。
◇ ◇ ◇
「ーーうぉっ」
誰も居ないと思っていたから思わず口に出して驚いてしまった。
帰りの荷物を教室に取りに行き、相変わらず建て付けの悪い重たい扉を開けると一人の生徒、アリスの姿があった。
「津秦君、待ってたよ」アリスは窓辺に立ち誰もいない教室で一人俺を待っていた様だ。
「えっ、あぁ……って俺を?」
「そ、君を待ってた……もう、帰っちゃう?」
「帰る……というかめちゃ帰りたい」
「少し話があるんだけどいいかな?」外の夕焼けのせいか少し顔が赤い様に見えた。
きっとここで話を聞いた方がいいのだろうけど、どこでアイツのファンクラブの奴らが見てるかわからん。ここはーー
「……俺、ちょっと急いでるから」急いで教室を出ようとしたが建て付けの悪い扉がガタガタと引っかかってしまい、早急な退室を妨げる。
「待ってって。少し話そうよ」アリスは俺の腕を強く掴み、強制的にアリスの方を向かされる。
「なんだよ、要件は簡潔に頼むぞ……」
「ーーもう私のこと、覚えてない?」
ん?
「この前の夏休みのことか?」
「それもそうだけど、違う。もっと前ーー」
アリスのこの言いよう。俺とアリスは過去に関係性がある様だが申し訳ない。何一つとして思い出せん。というか、こんな強烈なキャラクター覚えられない訳がない。
「人違いじゃないか?」
「……忘れてるなら、思い出させてあげる」
はい?
アリスは自身の机から一冊の本を取り出して俺の胸に突きつけた。強引に渡された本を手に取りページを開いてみる。中身は沢山の写真が詰まったアルバムだった。
すると幼少期の頃の俺と小さな少女……アリスが映っている。記憶にない写真ばかりで驚いた。
でもそれよりももっと驚くべき事があった。
「アリス……お前そのまんま変わってねぇじゃねぇか」
いくらなんでも変わらなさ過ぎる。
「そうだよ。この写真は幼稚の頃ので私と津秦君はお隣さん同士でよく遊んでたんだよって……まだ思い出せないかな?」
これだけ沢山の写真を見ても何一つとしてパッとしない。一枚だけ集合写真があった。俺とアリス、そして俺の家族にアリスの家族だろうか……。
「母さんと父さんも映ってる……」
「これは私と君の家族同士でピクニックというか登山かな?その時の写真。結構大きな山に登ったんだよ。名前はなんて言うんだっけな……山頂まではいけなかったんだけど」
「ごめん……俺、全然思い出せない」
思い出そうとすると妙に胸が苦しくなるし幼稚園の頃から小学校低学年の頃の記憶が全く思い出せない……
「津秦君?……大丈夫?」
変な汗が溢れて止まらない。暑いわけでもなく、寧ろ汗がすぐに冷えてしまい手足の指先が冷たくなるのがわかるくらいだ。
「いや…本当にごめん……家族で撮ったこの写真だけでいい、一枚だけ譲ってくれないかな?またちゃんと返すから」
アリスは少し躊躇した様子を見せたがアルバムから写真を抜き出して俺が指定した集合写真だけ渡してくれた。
「津秦君にそれ、あげる」
「ありがとう」
「……今度は忘れないでね」
俺は写真を受け取った後、走って家に帰った。今日の体育もそうだが久々に全力で走るから喉が酷く乾燥して、ゼェゼェ……と喘息に似た様な呼吸でとても苦しい。何気ない所で躓き、制服のズボンも破れて怪我をしても何故か走ろうとする足が止まらない。
確認したくて仕方ない。
思い出せる気がする。俺が一体何を頑張りたかったのか、一体何になりたかったのか。無意味に感じていた行動の一つ一つに答えがあった事を思い出せる気がする。
家に着き、玄関の扉を勢いよく開ける。自身の部屋に続く階段を大きな音を立てて駆け上がり部屋の本棚や押し入れの中にあるダンボールを泥棒の様に漁った。
「ないっ、ない……ここにもないっ、どこだ……」
「ノボルッ!何やってんのよ」
帰ってきていきなり大きな音を立てて部屋を漁る俺に驚いたのか、母親が慌てて部屋に入ってきて俺の方を強く譲って止めようとしてくる。
俺は母さんの事を無視して引き続き探し回った。
「ここにもない……」
リビング、和室…物置……調べ尽くす。辛うじて小学生の頃の写真は一年生から問題なくあったが幼稚園の頃の写真が一切見つからない。
「ノボル、どうしたのか教えて」そう言って母は背後から強引にギュッと抱きしめてきた。
振り払おうとしても母の抱きしめが意外にも力強く抵抗出来なくて……観念してポケットから譲って貰った一枚の写真を見せた。
「それ、思い出したの?」
「全く思い出せないから困ってんだ」
「どこで手に入れたの?」
「アリスから……」
「アリスちゃんに会ったのね……元気そうだった?」
「元気ってレベルじゃねぇよ。変わらなさ過ぎだろ、しかも笑えるくらい凄い奴なんだ」
母はずっと抱きしめたまま離れない。
「そろそろ辞めてくれよ……俺が悪かったから、もうしないから。こんな歳にもなって母親に抱きしめられて諌められてるなんてさ、恥ずかしくて死にたくなる」
「ふふふっ、私はずっとこんなんでもいいのよ……。それよりもあんた、本当に弱くなったわねぇ。強引に抱きついた時、私薙ぎ払われると思ってたんだけど意外にも弱くてビックリしちゃった」
「……俺、思い出せないんだよ。何のためにあんな頑張ってたのか?とかさ。一体何になりたかったのかさ……前からさ、思い出せないんだよ」
母は抱きしめるのをやめて無理やり体を振り向かせられる。
ヤバい、こんな顔見せられない。
「あんた本当に馬鹿ね、取り敢えず色々片付けて頂戴ね。話はそれからよ」笑いながら母は言う。
母は顔の事について触れなかった。
物置から掘り出した荷物の一つ一つを丁寧に片付けていく。汗をかくくらいならまだいい。でも涙が止まらないのは辛い。自分は一体何にこんなに泣いているんだ。
喉も痛い。こんなに苦しいのは初めで、今更全力疾走した足もガタガタと震え始めている。
物置には乱暴に荷物を直す音と自身の鼻水をすする音、声を我慢しても漏れ出てくる情けない声が響き、埃が舞ってるのと感情がコントロールできない事に気持ち悪くてイラッとする。
気が付いたら中身がカラ同然のダンボールばこを形が潰れるまで殴り続けていて、自分でもよくわからない怒りをぶつけていた。
私たちは夢見ることを許された。目標を持つことを是とされた。そして、そうでない者たちの存在は希薄になる所か差別の対象となり愚かだと指摘され生き辛くなった。私たちは見えない意思によって望まない争いを日々強いられている。