6 クレア事件
はぁ…何もすることがない…
何も考えたくない、なんだか今日は疲れた。
だがまだ寝るには早すぎる時刻だ。
「しょうがない…自主練すっかぁ…」
部屋の隅の本棚から分厚い本を取り出す。
この本は魔法に関する詳細やらみっちり書き込まれている。
こういう本はどこのバカが書いたのか知らないが、
文字が小さすぎたり、間隔を空けていないものが多いから
本を開いた途端、読む気が失せることが多い。
ぺらとページをめくる。
この本もその例外ではないらしい。
まったくもって読みにくさの塊だ。
退屈だな。何かこう、楽しいことでもないのかな。
できれば俺が活躍することとか、ないのかな。
あぁでもダメだ。
自分の中で首を振る。
活躍ってめんどくさいよなぁ。
俺はめんどくさいのごめんだ。
それなら、退屈のままの方がいいかなぁ。
などと至極どうでもいいことを考える。
自分でもどうでもいいって分かってるんだよ。
詠唱の欄を見つけ、別の棚から魔力が込められた水晶を出してくる。
だいたいこの水晶を魔力源というか、核にする感じ。
この手の詠唱で規模を間違えて、家を全焼しかけたことがあるからな。
集中。っと。
俺がめったにない集中モードに入りかけた瞬間。
「おい!ギア!!」
「ぬわぁあ!!
何だ師匠か…………何ですか?」
いきなり驚かさないでほしい。
あと俺の集中モード返して。
「クレアを見かけないんだが!
お前知ってるか!!??」
「いや、知らないっす。」
「はぁ!?」
いや、はぁ!!??って言われても。こっちだって困るわ。
だいたいなんだ?そんな焦った顔をして。確かにあいつは夜に外には出たことがないが。
今日もその例外ではないのだろう?
「そこらへんをうろついてるんじゃ?」
「いいや確認できなかった!
気配探知のスキルを使ったんだが、家はおろか、周辺の森にも…クレアの魔力反応がない!!」
「バグでは?」
「…なわけないだろうっ!バカにするなっ」
いやこちらは全然バカになどしていない。断じて。
「死にはしませんってぇー」
「アホか! お前は大丈夫かもしれないが、夜の森は結構…いやかなり危険だ!!
もし森の中にクレアがいるのだとしたら…」
「だとしたら?」
「命に関わるぞ。」
それはイヤだな。
いくら無口なクレアと言えども、一応は何年か暮らしてる言わば、身内みたいなモノだ。
それに知っている人が死んだとなると気分がいいものではない。
「なら…どうするんです?」
「探索だよ。
行くぞ!!私はヤマク山側の方、お前はファジル山側を頼む!!」
そういい捨てて、消えてしまった。
恐らく移動魔法の一種だろう。
ちなみに俺にはそんなもの使えません。はい。
「まいったなぁ…」
だが、まぁ…行くしかないだろうなぁ…
だがクレアの実力があれば魔物なんて瞬殺できると思うが。
問題はそこにはないのか?
属性の問題だって、アイツは光魔法が得意だから…基本闇属性の魔物には大打撃を与えられる…。はず。
そもそもどうして、普段おとなしい性格のアイツが?
少しばかりの不安と多くの疑念を抱えながら、思ったるい足を動かした。