18 俺の勝手
「スピージョン!」
魔法書に記載されていた身体能力向上の魔法を使う。
まずあのデカイ体の隊長さんと合流する。
その後、恐らく散開する形になるだろう。
そのタイミングで抜けさせてもらう。
「おい隊長さん!
しばらくついかせてもらうぞ!」
「んっ!
誰かと思えばバカ一番じゃあないか!!」
「そのあだ名はやめろつってんだろ!!」
「お前もそういう行動をするんだな!?」
「うっせ!俺の勝手だよ!!」
そう、俺の勝手。
ここから先は俺の、俺自身による、俺自身の為の行動である。
万が一の為、あの土煙の正体が大型の魔物だとしたら。
雑魚に魔力を使っている余裕はない。
利用できるものは遠慮なく利用させてもらう。
「色々理由があって魔法を使えないっ!
雑魚魔物は任せてもいいかっ!?」
「っは!
雑魚も群れれば強者になるのだぞっ!!
だがそれは我々とて同じこと! 小僧の好きなようにしろッ!!」
自身い魔法の効果を付与しているとはいえ、このひとら…
さすがに速すぎないか…?
こんだけスピードを出してるくせして全員余裕の表情。
もしかして俺の体力は圧倒的に不足してんのか??
しかしこのスピードで直進していけば想定の時間より相当早く、
クレア、フォーラのいる地点にたどり着けそうだ。
まったくもって、どうしてこうなった?
諸悪の根源といえば、クレアになるか。
いやいや、それよりも前にさかのぼると、、俺が師匠に養子として受け入れられた瞬間か?
どうせなら、もっと楽して生きたかったさ。
毎日起きて、食って、寝て。
自堕落がこんなに恋しいものになるなんて…
俺が求めていたのはこんな生活じゃないぞっ 返せっ俺の平穏を!
「おっさん!!
ここらへんで散開すべきだ!
さっき森の奥ででかい爆音と土煙がしてた!!」
「おっさん…かよ…
相分かった! お前ら!4人一組になって小集団を作れ!!
その陣形でウォッカは右、ストリス左!
俺たちは前方を突っ切る!!
あと俺は25で隊長だっ!!!」
マジかよ。
この見た目で25??? 髭祭りで眉間にしわよりじゃん。
一体どんな事故が起きたんだよ。
「それじゃ隊長。
俺はひとまず離れます!!」
「おう! 死ぬなよバカ一番ん!!」
フラグもたいがいにしやがれってんだ。
絶対俺か、隊長のどっちか死ぬだろコレ。
「さーーーて、俺はとういと…」
隊長含め、兵士のみなさんが右、左、前にバラけたのを確認して、
俺は一人、後方に向かってダッシュ!!
俺の魔法を人に見せるわけにはいかないからな。
目的地ギリまで援護してもらったというわけ。
周囲の魔力を探知してみる。
クレアともう一つ…でかい魔力がある。
まさか…まさかねぇ…
そんなことはないだろうと思うが…
どんどん近づいていく。
あぁぁあああもうっ頼むから、それだけはやめてくれよっ!
それをされたら、もう手が無くなっちまうからあああ!!!
「見えた!!」
クレアとフォーラ、それと奥にデカイ魔物らしき影…
「おいっ!無事か!?」
「へ?」
「あなた…!どうして!?」
二人の生死を確認するが、……
「おいおい…どいういうことだ…こりゃ…」
この魔物、くそデカイ上に…
魔力をもっていやがるじゃないか。
「お前らこいつ相手に今まで…
って! 大丈夫か!?」
いかんいかん魔物に気を取られ過ぎて、容態を確認してなかった。
こいつらよく見たら結構重症じゃないか??
フォーラの衣服に血がべっとりついている。
「フォーラ!出血は止めれたのか!?」
「…え…あぁクレアのおかげでね。」
「クレア…お前は魔力大丈夫か?」
「魔力は大丈夫…ねぇギア。」
「あはい。」
こんな状況になんだよ。
そんな真剣な顔して、ギア君怖いよ?
もしかして、来ちゃいけない状況だった?
いやどんな状況だよ。
「何で戻ってきたの。」
「あぁ? 『何で』だって?
そりゃこっちが聞きてえよ。 何でお前は無理してまで人助けんだ?」
「…質問を質問で返さないで。」
「はぁ…ま、後でみっちり聞かしてもらうとしよう。
そうだな…俺の方の『理由』は、『俺の勝手』だ。」
「え…どういう
「がたがたうっせぇな!!
状況は知らんけどまずいんだろっ!!
とりあえず詳しく説明しろっ!」
「……ぇ…わかったわ…」
何か初めてクレアに勝った気がする。
やったぜ! 俺!! よくやった。
スピージョン!!!




