15 再、再会
「これからどうする…?」
「とりあえず家があるんだけど、悪い、道分からん。」
「さっき誰が使えないって?
あなたの方がよっぽど使えないじゃない。」
「うるせぇな。
助けてやった恩を忘れたのか。」
何とか危機を乗り切った俺たちは、現在森の中で迷子状態である。
あっち行ってもこっち行っても同じ木々ばかり。
「あなた魔法使いなんでしょ?
もっと便利な魔法とかあるんでしょ! 瞬間移動とか!」
「あるわけねぇだろ!!」
いやまぁ、あるんですけど。
あるんですけど俺が使えないだけで。
これ以上彼女にとって俺の印象を悪くしたくない…
「つかお前名前は?
まだ自己紹介もしてなかったな。」
「人の名前を尋ねるときはまず自分から名乗るものよ。」
「それもジョーシキか? しゃーねーなぁ。
俺はギア。引きこもり魔女の弟子だ。以上、よろしく。」
師匠の印象は下げておこう。
「私はフォーラ。
ヤルト地方出身!そしてヤルト史上最弱最速で精鋭兵士に選ばれた女よ!
どう?実は私けっこう凄いのよ?」
「へぇ。
それがすごいのか全然分からんし知らん。」
「あなた…友達いる…?」
「はぁ!? いきなりなんだよっ関係ないだろッ!!!」
友達?
何それ甘いの?
俺が知ってるのは『知り合い』の師匠とクレアだけだ。
というかなんで友達なんて話題がでてきやがる。
「…まぁいいわ…。」
こいつがときおり見せる、しらじらしいモノを見る目は何だ。
「とりあえず、目標がないのはマズイわね。」
「俺もそう思う。
何か帰り道が分かるいい手立てはないものかな。」
クレアとかがいたら、何かしらの魔法で帰れたりするんだろうけどな。
あいにく、俺の魔力はほとんどありません!
魔力を増やすのにも魔力がいるし。
くそ…先のこと考えてなかった……
「…クレア…?…。」
「ん? 誰?」
忘れてた。
クレアじゃん。クレア事件じゃん。
そもそもの発端はアイツじゃないか。
クレアさえひっ捕らえちまえばこっちの勝ちだった。
一番の目的を忘れてた。
すぐに周りの魔力を探ってみる。
なんだこれ…
するとここより遠くに魔物にしてはデカすぎる魔力源が感じられる。
「どうやら、うまくいきそうだ。」
「え?何が??」
「俺よりずっと使える魔法使いがすぐ近くにいる!!
そいつに頼めば、お前の言ってた瞬間移動だって出来ると思う!」
自虐じゃないんだよ?本当に。
少なくとも俺よりは使えるから、事実だし。
本当は俺だって以外とスゴイはずなんだよきっと。
それにしても、こういうときはビシッときめたいところである。
「さっき瞬間移動なんてできないって!
アレ嘘だったの!?」
おっと口が滑った。
「グガアアァアァ!!!!」
「ぐぎゃあああああああああああああああ!!!!」
「あなた!!魔物よりうるさいわよっ!!」
目の前に魔物が現れたところをフォーラが抜刀し、
剣にて一瞬で撃破する。
その華麗さといったら、少し驚嘆しちまうほど。
「おぉ…お前…すげえな。」
「でしょ。」
ドヤ顔がうぜぇ…
どうして俺の周りには俺以上の優秀なやつしかいないんだ。
頼むから格下来てくれ。
俺の存在価値をもっと前面的に肯定してくれよ…
フォーラは疾走し始める
俺はそれに全速力で付いていく形になる。
「前衛は私に任せて!!
後ろから援護してもらえる!?」
「援護なんてできないから!
とりあえずお前に全部任す!!!」
「ほんと頼りないわねっ!!!!」
それ今一番気にしてるから言わないでくれぇ!!!
そのままの大勢で眼前の魔物を倒しまくる。全部フォーラが。
数なんてものはもう忘れた。
それにしても…俺はもう体力の限界なのに…
なんでこんな元気いいんだよ、フォーラ……
「ちょ…休憩…を…」
「何て!? 聞こえない!!」
嘘つけ絶対聞こえてるだろ!
この俺の心の底からの嘆願を!!
「止まって!!」
「ぶぐぉ!」
いきなり言われても。
当然そんなすぐに静止させることは不可能である。
踏ん張り、減速させるがフォーラに激突してしまった。
「痛!! …静かに…何か来るわ!…」
「いてぇ…何かってもうこりごりなんだが。」
ふざけんな。これ以上魔物さんにも強くなってもらったら困る。
人間さんが魔物さんに狩られる側にまわってしまうじゃないか。
急ぎ立て直す。
「何が見える…?」
恐ろしいのでフォーラさんに敵さんの視認を任せることにした。
もうこんだけ強いならいーじゃん。満足しろ。
「見えないけど…勘よ。
何かとんでもないやつがくるわ…」
「勘ってお前バカにしてんのか。」
「何よ。」
「あいや、何でもないっす。」
「しっ来るわよ!」
覚悟を決めて、森の奥の闇に視線を凝らす。
何か、ぼやぁ~とした白い光がこっちに近づいてくる。
あの大きさはいつもの紅目の魔物にしては大きい。
まさか大型か?
「さぁ…来るなら来なさい。」
そんな挑発すんなよ!?
お前はこれから俺を守りながら戦うんだぞっ
いやいやヘタレが過ぎるぞ俺。
意を決せ!!俺!!
覚悟を決めてフォーラの影から出る。
「ギア?」
「そうですが?
へっ魔物が喋った!!??」
「何言ってんの?といかその女の子は誰?」
闇の中から光とともに現れたのはクレアだった。
きょとんとした顔つきでこちらを見ている。
最後の最後まで怯えさせやがって、心配させやがって
でもよかった。
これでお家に帰れる。
さっそとお家に帰ろう!!
おっとその前に。
ゆっくりとクレアの方に歩を進めていく。
一歩一歩を踏みしめる。
くたくたで、一歩ごとに足がずんと唸る。
「クレア…お前…」
「な…何?」
「なにしてんじゃごら”ぁああああ”あ”あああ!!!!!
早く、がたがた言わずに、さっさと俺を家に帰せよおッ!!!!」
感動の再会?
これが感動なわけあるか、バカ。
どうだ、これだけ俺はがんばったんだ。
少しくらい今まで溜めまくってきた感情を爆発させて、
何の問題もなかろう。
一発かましてやったぜ。すっきり。
長い




