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13 後悔

 よーく考えろ。

 

 俺が彼女を助けたところで、俺も彼女も死ぬんだったら、

もともこもないじゃないか。

そう考えたら、確実な方をとるしかなくなる。


「どうしたの?

早く逃げなさいよ。一兵士として、一般人の安全はできるだけ確保するわよ!」


「なぁお前。」


「何よ。」


「不安だったりしねぇの?」


「何が?」


 この女すげぇな。

今から自分が死ぬってのに、

どうしてこんなに落ち着いていられるんだ。

普通ならガクガク震えて絶望するだろう。

少なくとも俺は他人にかまってる余裕なんてない。


「いや、お前死ぬってわかってんだろ?」


「あぁ…そゆこと…」



 彼女はしばらく目をつぶってから、答える。


「不安…かぁ…。

そりゃ不安よ、当たり前じゃない。

でも……

なんと言うか、結局前向きに考えないといけないのよ。」


「何いってんの?」


「だからぁ!…

死ぬってわかってても!

前向きに考えないといけないでしょ!!

目の前に救えるかもしれない命があるのに…」


「そうか」


「ほんとは私だって…もっとさ…」


 こいつが言いそうなことはだいたい予想できる。

なりたくて兵士に成ったわけでもないのだろう。

その点で言うと、俺と同じ。

俺だってこうなってほしくて、

こんな状況にしたわけでも、なったわけでもない。


 救える命かぁ…


 彼女の言った言葉は、彼女自身無意識であっただろうが、

確実に俺の選択に待ったをかけた。


『賭け』か。

できれば『確実』の方がいいんだけどな。


 しかし……


 俺が今しようとしてることは諦めに近いかもしれない。

いくら現実的に考えても、どうしようもないことは実際に起こりうるのだ。

そしてそのとき、俺はきっとこう、後悔するんだろう。

「あのときこうしていれば、未来は変わったのだろうか」と。

そういうふうに後悔するならば。


 いや、俺はバカかよ。

後悔することを前提にしてどーすんだ。

一番いいのは、

『うまくいって後悔しないこと』だろうが。


 そうなれば…結論は見えたろ。



 頭の中を整理して、大きく深呼吸をしてから

 

「なあ、助けてやるよ。」


「は?」


「その代わり。」


「ちょ…は?なに言って、」


「お前と俺、どっちも生き残ったら…」


「生き残ったら…?」


「えーと…そんとき考えるわ。」



 やっべ。

一番肝心なときの一番かっこいいセリフが思い付かなかった!!恥ずかしっ!! これは後悔しちまうよ!!


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