11 クレア事件、再び
昨日の夜と同じ方向にて、クレアを探すことになった。
いつもは慎重に進む森の中を早歩きで駆け抜ける。
こっちだってゆっくりしてはいられないのだ。
早く帰って全部忘れてぐっすり寝たい。
それぐらい許されるだろう。誰にだよ。
「グァッ!!」
早くも魔物に見つかった。
めんどくさいので無詠唱で対応する。
するとすぐさま別の方向から新たな魔物の群れがやってくる。
「おい…今日はいつになく魔物が多すぎないか…?」
まだ距離はあるな。
あれを試すか…
ローブのポケットの中から魔法書を取り出す。
そこに詳細に記載されているように、魔術式を組み、魔法陣を作る。
魔力を回復する魔法である。
これさえあれば魔力に関しては無限!!
「マジックヒール。」
魔法陣が薄青く発光して、魔力が増えていくのが実感できる。
よしっ
これは成功じゃないか?
と思った瞬間。
魔法陣が粉々に砕けた。
そんなモンですよね。一応俺と一緒に移動できるように組み込んだだけどね。
無駄でしたね。あーあ。
「黒炎ん!!」
クレアの件や最近のストレスをこめて、発動。
ごめんな魔物くんたち。単なる八つ当たりである。
それを見かけたのか、さらに奥の方から魔物の赤い目が大勢やってくる。
しんどっ…
これは全部対応してる暇はなさそうだな。
一通りここらの魔物がいなくなるまで、足止めするか。
「ケルテア。」
敵、主に魔物を呼び寄せる魔法を発動した後、
昨日の晩使った、足止め用の魔法陣を作る。
一応足止め用じゃなくて「ブラックステルノ」って名前があるんだよ。
でも長ったらしくてめんどくさいじゃん?
どうにかして略せたらなぁ。
「ブラステ」とかどうだろう。
「ブラステ!」
見事に発動しなかった。
かなり時間が経っただろう。
真上にあった月はすっかり雲に隠れて見えなくなってしまった。
同じくクレアも依然、見つからない。
「どこにいるんだよ…まさか隠れてるとかないだろうな。」
ひとしきり魔物を足止めしておいたおかげで
スムーズに捜索はできてはいる。目的は達成してない。
「ぁ…」
確かに俺ではない声が聞こえた。
すぐさまあたりを見渡して動きがないか確認する。
ようやく見つけられたか?
だが周囲にクレアほどの魔力はないが…
いいや魔力切れを起こしている可能性だってあるか。
「ぃ…ぁ……」
今度は方向を確認した。
その方向に向かって、注意深く捜索する。
草の中、木の陰、木の…
いやがった。
左側、大きめの木の陰に足を崩している。
顔は影でよく見えない。
だが大きさもだいたいクレアだ。
こんの…
ここまで苦労をかけさせてくれたんだ。
ちょいとばかし驚かしてやろうと思う。
できるだけ気配を消して後ろに周る。
まぁ気配消すことなんてできないけど。
だいたい、気配消してるって思うことが重要なんだよ。
思い込みは正義だ。
「こんばんわぁあ…」
「キャァアアアアアアアアアアア!!!!」
「んのぉわああああああああああ!!!!」
うぉお!
びっくりした!!何でこっちが驚いてんだよ。
ていうか…
「お前誰?」
「ひぃっ近寄るなぁ!魔物!!」
「えっ」
俺は魔物だったらしい。
じゃなくて、何?
クレアじゃねぇし。誰だ。
目の前に腰を抜かしている、一人の女。
「何してんの?」
「あぁああ!!化け物がっ!」
どうも、化け物です。
待て待て。人のこと化け物とか超失礼だな。
そんなに俺の顔ブサイクか?
一応師匠には「お前は顔はいいが心がなぁ」って…うるせぇ。
そうじゃなくて、一応初対面じゃないか。
「おいこっち見ろ。俺は人
「ぎゃああっ」
ゴ」と鈍い音がしたら視線は靴の裏から入れ替わって、お月様。
きれいだなぁ。雲はどこ行っちまった?
なんか痛いな…俺何されたんだろ…。
思い出せねぇし、分からねぇわ。
考えるのもめんどうだし、俺は勝手に意識が遮断されるのを許した。




