1 朝は始まる
朝。
窓からの朝日で家具から影が伸びている。
光でほこりがひらひら舞っているのがわかる。
眼を開けて見えるのは、天井。
厚い木の板が連なっているだけの簡素なつくり。
だが雨漏りなどはしない、頑丈なつくりである。
こうして横になっているだけで、すごく気分がよい。
外から聞こえる生き物の鳴き声に耳を傾けるのも、いい。
「あぁ…幸せ。
今日は何もしないでいたい。」
渇いた声でつぶやく。
ん?
奥の方から足音がするな。
このうるさく響く足音。
決まっている。これは俺の平穏を揺るがす脅威さ。
すぐさま布団を頭からかぶり、体形を丸める。
「ドンッ」と勢いよくドアを開く音が鳴る。
ドンドンと脅威因子が俺の部屋に侵入してくる。
最悪な朝だ。このまま寝たふりがバレなければいいのだが。
「起きろ。というか起きているんだろ?
さっさと朝食を作ってもらおうか。」
あぁーあぁ…きたきた。
朝食くらい自分で作れってんだよ。
お前の朝限定の空腹と、俺の今日一日の眠気。
一体どちらを優先すべきかなんて明白だろうに。
「…そう。
寝ているなら仕方がないわね。 水でもかけるわ。」
…!?
なんだとっ
ちょっと待て。今起きるから。
「ふぅわぁあああ…おはよ…。」
今まで寝ていましたぁ。といった感じで体を起こす。
これだからコイツは脅威なんだよなぁ。
何をしだすかわかったものじゃない。
「何…どぅぁぁああああああ!!」
「やっと起きたみたいね。」
「お前っ!………もうぅ最悪…。
どう見たら寝てるふうに見えるんだお前は…」
「悪いわね。」
少しの申し訳なさも匂わせていない。
もっとこう、俺に対する思いやりとかないものなのか。
「起きたのなら早く来て。私は下で待ってるから。」
そう言い捨てて、何の未練もなさそうに俺の部屋を去る。
そして布団、服をびちょ濡れにされて、独りベッドに座っている、俺。
どういう状況なの、これ。
平穏な朝はどうした?どこに失くした??
「ああーそおいえばああ。」
遠くで脅威が喋っているよ。
「師匠も早くしろって怒ってたわよおー伝えたからねえー!」
そうして俺は、自分と、とさらに二人分の朝食を作りに、
水に濡れたままで部屋を後にするのだった。
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