宇宙 夢
夜空を見上げて、手を伸ばす。
だけど、とうてい人の手は数メートル先にも満足に届かない。
人間は、星にも、月にも届かない。それが当たり前だ。
でも、だから諦めてしまうというのだろうか。
人間の力だけではできないというのなら、道具の力や、他の人の力を借りればいい。
荒唐無稽な夢が本当にそうかどうかは、結局のところやってみなければ誰にも分からないのだ。
空を飛んで、あの果てに行きたい。
この思いがいつ叶うのかも分からない。
けれど、いつか誰かが叶えてくれたなら。
今の自分が叶えられなくても。
物思いに沈んでいたら、星月以外照らすもののない道を、弟がかけてきた。
「兄ちゃん、母ちゃんが呼んでるよ。夜は危ないから、早く家に帰れって」
「わかったわかった。でもまずは、この国の外になにがあるのか、だよな」
「国の外なんて海が広がってるだけなんじゃないの? 兄ちゃん時々変な事いうな」
大海の向こうにあると言われている外国。
お偉いさん達は、それがあると信じてるっぽい。
行けるとこしか言った事のない自分達には、それが本当かどうか分からない。
できるのは、人から聞いたものを耳にして夢想するだけ。
証拠となるものはなにもないんだから。
国の外、そこには見たこともない道具や人がたくさんあるのだろう。
今は行き来ができないけれど、いつかそこにいる人達とも協力ができたら。
遥かな未来に、きっとこの空の果てにまでも、余裕で行けるのだろう。