恋探し②
あれを運命と言わずしてなんと言うのだろう
階段から落ちそうな私を救ってくれた王子様
正直、王子様って言うにはちょっと外見が普通過ぎるけど…
でも良いの
救ってくれた
それが王子様なんだから
それに…雰囲気が独特でなんか気になる
だけど、なっっんで全然落ちないの？！
他の男ならイチコロなのに！
後ろから不意に抱き付かれたら、誰だってドキドキするでしょ！
なのに「転ぶところだったのかな、僕がいて良かったよ。怪我はない？」って
なんでそうなったの！
私明先輩の名前呼びながら抱き付いたのに！
勉強教えてほしいって頼んだら学年1位の人連れて来るし！
しかも任せてどっか行ってすごくスパルタだった
テストの点は上がったけど！
送ってもらって、放課後デートっぽい計画してたのに帰ってるし
なんでそうなるの！
自分流で攻めるんじゃなくて、明先輩用に対策しないとって決意した
ファンクラブがあるらしいから顔を出して聞いてみた
そしたら予想通りっていうより、案の定明先輩はド天然らしい
だけど勉強の出来る天然
それって厄介
むっっっちゃ厄介！
あと競争率が高い
陸上強化選手の及川皐月に市長の娘冴島琴子
その他多数の有力女子のみならずモブまでもが狙っているらしい
しかも明先輩の入学当初学校最強と言われてた美人3年生にも全くなびかなかったらしい
妹系後輩でも綺麗系先輩も駄目ならなにが良いの！
さらにバレンタインデーにチョコは一切受け取らないらしい
2年のとき、ひとりだけ例外がいたって聞いたって聞いた
そんな曖昧な言い方なのは、教えてくれた先輩は別のクラスだったから詳しくは知らないみたいだから
どうしたら落とせるかな…
人の顔を名前を覚えるのが苦手らしいから、一先ずは定期的に顔を見せに行く
それで、顔と名前を完全に覚えさせる
あのとき助けた子、じゃなくて有住院鹿目として認識させる
話しはそれから
「明せーんぱい！」
話していた人は、助けてくれたあのときも一緒にいた人
よく一緒にいるってことは一番の友達か…
そっちから攻めるのも悪くないかも
良くも悪くもモブっぽいし、簡単に落とせそう
って、あ！今ため息吐いた？
それって、もしかして私、全く覚えられてない？！
「どうしたの？」
名前呼んでくれないし、やっぱり覚えてくれてないんだ！
ショック！
でもでも名前は滅多に呼ばないらしいし！
ってそれ絶対覚えてないからだよ
「近くを通ったから寄ってみただけです」
「そう。もうすぐ授業が始まるから行った方が良いよ」
顔も覚えてない後輩が来てもウザいよね、キモいよね
諦めた方が良いのかな…
ううん、折角来たんだし、今日の総合的な態度で決めよう
それまでは全力アピール
私にだってプライドってものがあるんだから
「そうですね。明先輩の顔が見られて良かったです」
満面の笑みで言うと、微笑んでくれる
でも会話が続かない
どうしたら良いんだろう
いっつも男子が勝手に喋ってるから分かんない
会話術が要改善…っと
「きゃっ」
どこか開いていた窓から風が吹き込んで、スカートを巻き上げた
不意過ぎてむっちゃ女の子っぽい声出しちゃった
天野先輩こういうの嫌いかもって聞いたけど…
冴島先輩がそういう声したときの表情が明らかに嫌そうだったって
これで嫌われたらどうしよう
「シャンプーでも変えたの？」
全然気にしてない！
そしてスカートのことも全然気にしてない！
少しは気にしようよ
こんなに可愛い子のスカートがめくれたんだよ？
中にショーパン履いてるからパンツは見えないけど
でもでも、シャンプー変えたの気付いてくれたんだ
人の顔と名前を覚えるのが苦手なのに、変なところは覚えてるんだ
もしかして、匂いフェチで、匂いで覚えてるとか？
そっか、じゃあ覚えててくれてたってことは、好きな香りだったのかな
「そうなんです！気付いてくれて嬉しいです」
前のと今のどっちが好きが聞いて、それで…
あ、でも話題に困って適当に言っただけかも
でもそれも確かめるためにも、どっちの方が好きか聞かないとね
意地悪とかじゃないもん、作戦だもん
不意に肩を掴まれて反対方向を向かせられる
え、なに
まさか後頭部の匂い嗅ぎたいとか？
付き合ってもない女の子のを無許可とか流石に変態…
でもそれだけ信頼されてるってことだよ
そうだよ
ドキドキしてたら、耳元で小さく息をする音が聞こえた
「良い香りだね」
こっ、これ、絶対わざとじゃないよね
こんなのされたら普通期待するよ～～
すっごくドキドキしてる
心臓の音、明先輩に聞こえてないかな
「あと2分で授業が始まるよ」
もう少し少女漫画させてよ
一気に現実に引き戻されたんだけど
「そ、そうですね…！もう行きます」
あと、もう来ないから！
こんなの絶対落とせない
落とせるわけない
私は負け戦なんてしないの！
次の恋を見つけて、次は必ず勝つ！落とす！
幸せになった姿見せつけてやるんだから！
ばーか！
ばーか！
