表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/44

依頼の答え合わせ④

やっぱりあの会話を聞いていたのは紗矢だった

私の杜撰な作戦とはとても言えない作戦をきちんとした作戦にしたのが紗矢

でも先生はそれを分かって先回りしていた


「…そう。やっぱり掌で踊らされていたってこと」


「そうなるねー」


紗矢も伊月も、関係のない天野くんも巻き込んで、最低だ…


「その話しは終わり。お礼はアタシがする。良いでしょ?唯、天野くん」


事実の確認をしてしまえば、私に出来ることなんて謝罪だけ

2人がそんなものが聞きたくて話しをしたとは思わない

一応でも良いから、一言謝っておきたかった

でも、そう言われてしまったら仕方がない

一番なにも知らなかった伊月が言うんだから、紗矢もしない


「嘘なんだもんね」


「怒らないで下さい。近い未来に予定がないだけで、何十年か後に役立つかもしれません」


「あっそ」


真剣に着る服を悩んだ私が馬鹿みたい


「唯ちゃんは、わたしとデートしよー?」


「嫌。あの変なお店に連れて行く気でしょ」


「変じゃないよー!」


「それってその髪飾りのお店ですか?」


「そーだよー。天野クン知ってるのー?」


嬉しそうな顔

こういうところは本当、可愛いんだから


「知りません」


「じゃーなんでー?」


「満月の別名は望月ですから」


そうなんだ、知らなかった


「へっ?」


…この反応、知っていたからあのお店に行っていたのかな

でもそれだけであのお店に出入り出来るなんて…

ああ、思い出したくもない


「大人なんてだーいっ嫌い!みたいな顔して、顧問の先生もそうですけど、随分信頼しているんだなと」


天野くんがクスクス笑うのを呆然と見ていたのは私だけではなかった


「あ、ひとりですみません」


「いや…部長さんって呼ばれていたから名前を覚えていないものとばかり思っていたから少し意外で」


「そうですか?「自分の世界は自分の手の届く範囲」ですから」


「え?なに?」


どういう意味?


「分かんない」


「えへへー、今のはわたしとの秘密の会話だよー。ね?天野クン?」


「まぁそうです」


あの後話したときになにかあったのかな

少し似た者同士なところがあるかなとは感じていたけど、これで分かるなんて、やっぱり似た者同士ってこと


「色々気付いたご褒美です」


色々…?

まさかこれも仕組んだんじゃ…!


問い詰めようと息を吸うと、紗矢の嬉しそうな声がして思わず止めてしまう


「この袋…!やーっぱり知ってるんじゃんかー」


「え?ああ、このお店でしたか」


男子ひとりでよくこのお店に入れたね…

ファンシーな女の子向けのショップって感じの店構えなのに

逆にひとりだから入れるのもあるかもね

プレゼント選んでます、ってすぐに分かる

だからカモにされただろうなぁ…


「へぇー?」


疑うように天野くんを見ていたけれど、無反応な天野くんに飽きたのか今度は袋をじっと見る


「開けて良い?」


「どうぞ」


「へっ」


変な声を出さないでよ

周りのお客さんから注目を集めちゃった

これは自意識過剰じゃなくて事実だから


あれ?

なんか顔が赤い気がする

もしかして熱があるんじゃ…

大会前の大事な時期に大変


「紗矢、たいちょ…」


「えっと…グランドは土埃が舞いますし、流石にアクセサリを贈る仲ではないのでこれにしたんですが…」


「わ、分かってるよー!ばーかっ!」


元気そうだけど…


少し悪いと思いつつ袋の中を少し覗く

そういうこと…

天野くんは天然って言うより、馬鹿なのかな?


でもこれくらいで慌てるなんて紗矢らしくないと言えばそうだけど…

なにかあったのかな

気になる


「えぇ…」


「まー、ありがと…」


紗矢の照れ顔!

貴重なシーン!


「はい」


照れてはいても、紗矢は大丈夫だと思う

でも、この笑顔に今まで何人もの人が誤解させられたのか…

そんなことを思っていると、紗矢が急に勢い良く立ち上がる


「今日はあのお店行かないから、デートしよーよ」


「遊ぶのは構わないけど…」


伊月が話しがあるって言っていたけど、大丈夫かな

ちらりと天野くんを見ると、軽く手を振られた

さっさと行けってこと?

嘘まで吐いてこんなことしておいて…!


うん?

ってことは伊月が話しがあるって言ったのも想定内だったってこと?

もうなにがなんだか分からない


「唯ちゃん、だいじょーぶだよ」


お店を出ると紗矢が振り返って微笑む


「なにが?」


「わたし唯ちゃんたちと会うまで、捻くれてる自分が嫌いだった。天野クンもそーなんだよ」


「似た者同士は分かるんだ」


「んー、それはちょーっと違うかなぁ。自分のことを好きって言われて嬉しい人って、どこか一部分でも自分のことが好きな人なんだよ」


確かに全く自分のことが好きじゃなかったら、そう言ってくれる人のことを信頼出来ないかもしれない


「唯ちゃんに好きって言ってもらったとき嬉しかった。だから気付いたの。わたしは捻くれてる自分が嫌いなんであって、それが全てじゃなかったんだって」


「ありがとう。でもそれで、なにが大丈夫なの?」


「わたしと天野クンは確かに捻くれた部分の考え方は同じ。でもね、基本的な考えは伊月ちゃんと同じなの」


伊月が天野くんと…?

ピンと来ない

それに、だからなにが大丈夫なんだろう


「だから唯ちゃんが心配するようなことは起こらないよーってこと」


「なにを心配していると思っているの?」


「だってさっきも、わたしが天野クンのこと好きになっちゃうんじゃないかーって心配してたでしょー?」


「小指の先くらいは」


「だから小指の先ほどの心配もいらないよー。多分天野クンに聞きたいことも大したことじゃーないよー」


伊月がわざわざ行動を起こすのに、大したことじゃないなんてあるのかな


「そんな心配そーな顔しないでよー。だいじょーぶ、わたしたちには絶対に全く関係ないから」


「それって伊月にとっては大事なことだけど、私たちの関係は変わらないから大丈夫って意味?」


「そーだよ?さっきも伊月ちゃん言ってたでしょー。3人の中で隠し事はなしなんて思ってないって」


「うん」


「元々の性格ではあると思うけど、触れてほしくないことがあるから余計にってゆーのがあるんじゃーないかなーって思うんだー」


流石紗矢

私には分からないことが少しの情報で分かる


「だから「なにも」聞いちゃ駄目だよ?」


「分かった」


「よーし!じゃー行こー!」


楽しそうに駆け出す背中に呼びかける


「紗矢」


「なぁに?唯ちゃん」


「好きだよ。卒業しても友達でいられたら、とっても嬉しい」


「わたしも。唯ちゃんのこと、だーいすき」


振り返った紗矢の笑顔はいつもよりもキラキラして見えた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ