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作戦の依頼⑤

部長さんが走って行くのを見送って角を曲がる

そこにいたのは、満面の笑みで手を振る3年女子の先輩だった

この特徴的な髪飾り…

陸上部の顧問と話したとき、廊下でぶつかりそうになった先輩か?

まぁ誰でも良いや

言うことは決まっている


「こんにちは、犯人ですか?」


「違うよって言ったら、信じる?」


犯人なら逃げるだろう

でもその心理を逆手に取って犯人かもしれない

今はどちらとも言えない

それに盗み聞きしていた理由を聞きたからなぁ


「一先ず」


「そー言うと思った」


小さく笑う先輩とは反対に僕はイラついた

なんでも見透かしたようなことを言う人は嫌いだ

本当はなにも見えてなんていないクセに


「じゃー自己紹介から。陸上部所属3年、望月紗矢」


「2年の天野明です」


「ぶちょーである唯ちゃんの提案が補完出来るんだけど、聞くよね?」


陸上部は将来裏社会で組織を作ることでも目指しているのだろうか

何故「Yes or Yes」みたいなことを言ってくるのだろう


「ここまで来たら聞きますよ」


「良かったー」


話し方や仕草は幼い

でも人を注意深く観察するような目がそれをかき消している


「ただし、一緒に来ず、部長さんにアドバイスもせず、ここで聞いていた理由を教えて下さい」


「そんなの簡単だよー。唯ちゃんは優しーいの。だからわたしたちを巻き込めない」


確かに隠すシューズは自分の物を、と言っていた

それに、言いはしなかったけれど、最悪僕が誘導したことに気が付かなければ自分が犯人だと言うつもりもあるだろう


「唯ちゃんの作戦は今初めて聞いたよ」


「それでも補完出来ると」


「唯ちゃんの考えることなんて、おみとーしだからねー。信じないならあれでやっても良いけど、ほんとーに良いの?」


「少なくともあのまま実行する気はありません」


大きく何度か頷く

どうしてこんなことに…


「ただ、内部のことを知らないので僕が作戦を立てるにしても協力者は必ず必要です。部長さんとのやりとりはもう出来ないでしょうから、先輩の話しを聞かせて下さい」


「素直じゃないんだからー」


「じゃあ戻ります。協力はしないので頑張って下さい」


「先生との喧嘩は良いのかなぁ?」


この人…!


「あ、誤解しないでよー?顧問に会いに行こーとしたら喧嘩を買うって聞こえただけ。結び付けて考えるのは普通でしょー?」


「廊下でぶつかりそうになったタイミングを考えると聞いているのはおかしいと思いますが」


「んー?覚えてたんだー。聞いてたのはほんとーにそこからだよ?込み入った話しっぽかったから、出て来るまであそこで待ってたんだよー。2年なら反対の階段から降りると思ったのに、こっちに来るからビックリしちゃったー」


これについては真偽を確認する術がないか

知らないことを知っているとは言えないが、知っていることを知らないとは言える


「分かりましたよ。それで?」


「シューズを隠すのはもっと曖昧な言い方をした方が良いと思うんだー」


嫌な話し方だ


「それはその提案自体ですか、それとも対象となる人物についてですか」


「人だよー、決まってるじゃん。例えばー、一番威張ってるヤツとか、自分以外で一番良い選手だと思う人とか…3番目に勢力のある先輩、とか」


そう言ってほしいなら最初からそう言えば良いのに


「それから、シューズって言わずに部活用の靴、とか、競技用の靴、とかって言った方が良いと思うなー。あと、第三者から見ていじめだと認識されることを本人に気付かせないとねー」


「「相手も悪いことをしている、自分は苦肉の策でやるだけだ」になるわけですね」


「そーそー、あと物を隠されたことがあるかはちゃんと確認してね?言ってないのになんで知ってるのってなると面倒でしょー?」


流石にそれくらいは心得ている


「はい」


「あとあとー、止めてほしくてやった、だと悪意があることになるのは分かるよね?」


「それは僕も気になりました」


「だから、「自分も隠されたことがあったので、そういう遊びが流行っているのかと思って。先輩と仲良くしたかったので」って言わせる。どー?」


「悪意なき悪意、ですか。良い趣味ですね」


僕も大体同じことを考えていたけれど


「そー?天野クンも同じだと思ったけど?」


面倒だから肯定と取れるようなことを端折って言おう


「質問という形で悪事を晒し、悪いことなのか質問させれば良いんですね。タイミングが重要でしょうから、トイレにでも行ったフリをするようにでも言います」


「そーだよ、せいかーい」


ご機嫌そうに、やたらとニコニコしている

どうやら続きがあるらしい

これで一先ず解消はすると思うけど、部長さんと話していたことを気にしているのだろうか

そんな人には見えない


「っていうのが建前。及川サンに説明するのはその通り。でも実際はトイレに行くタイミングなんてないんだなー」


「部活でやることに僕は関係ありません。僕は僕の役割を理解したので戻ります」


「全容を分かってないと動けないかもよー?毎日同じネジを作るにしても、それがなにに使われてるのか知ってるのと、ただネジを作ってるのとじゃー全然違うでしょー?」


分かるけど微妙な例えだなぁ


「分かりました。聞きますよ」


「よろしい!」


わざとらしく咳払いをする


「伊月ちゃんは普通の運動靴で整列することになる」


これまでの話しに出てた人?

誰だっけ


「あ、伊月ちゃんはシューズを隠される人だよー。ちなみに知らせない」


「それで上手くいくんですか」


「うん。伊月ちゃんなら、だいじょーぶ」


さいで


「顧問はとーぜんシューズについて聞く。伊月ちゃんにはその前に「隠された」ってことを認識させるから、とーぜん顧問にもそう言う」


犯人捜しにはならないと部長さんが言っていた

その場でその話しにならないなら、なんの違いがあるのだろう


…そうか

ひとりいるじゃないか

その話しに出来る…いや、したい人物が

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