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作戦の提案②

突然だけど、アタシには好きな人がいる

名前は天野明

中学までは田舎にいて、お父さんの仕事の都合で東京へ来たらしい


中学のときもそういう人は何人かいた

全員例外なく都会に慣れていない感じが空気で分かった

でも、天野は言われるまで分からなかった

ずっとそこにいたみたいな空気

東京とか田舎とかそういう範囲の話しじゃなくて、「そこ」にいた


クラスに入って一目見たときからその空気感が気になってはいた

でも高1になって引っ越して来たのだと聞いたときから、アタシは天野に釘付けになった

それから天野を知っていったから、一目惚れに近い感じなんだと思う


天野は優しい

天野は成績は普通だけど、頭が良い

天野は友達思い


あげればキリがない

そこまで話すわけじゃないから、天野の知らない部分なんて沢山あると思う

どんな天野でも好き、なんて少女漫画みたいなことを言う気はない

でも、そんなことを言う勇気はほしいと思う


それがあれば、今のこの状況を変えられるかもしれないから


――あ!天野だ!

遠くからでも分かる

これが恋心ってやつ?えへへっ


部活に所属してない天野が登校するには早い時間

それに、ずっと同じところにいるよね

なにしてるんだろ?


「天野!おはよう!」


「おはよう。重そうだね、半分持とうか」


今だってほら

こういうことが出来る人は少ない


「ホント?助かる!」


って嬉しいけど、違う違う

だって見えないはずないんだから、なにも考えてない馬鹿だと思われちゃう


「…でも遠くから見えてたけど、ここにずっといたよね。誰か待ってるんじゃないの?」


「待っていたんだけど約束の時間を過ぎても来ないから、もう良いんだ」


「そっか、じゃあ頼もう」


本当は全然重くなんてないけどね

でも一緒にいられるのが嬉しくて、やっぱりそんな返事をした


「今じゃなくても良いのに先生に持ってけって先輩に言われてさ」


なんでも見透かすような天野に練習は?と聞かれるのが嫌で、愚痴っぽく現状を言う

それに、ずっとだんまりなんて寂しい

もっと言えば、愚痴も言いたくなる状況

折角梅雨のこの時期に晴れなのに

でもさ、もしかしたら助けに来てくれたりなんて…えへへ


「たまに晴れた梅雨にね…。それは一般的に言うところの、僻みによるいじめ、じゃないのかな」


ひがみだって

天野、アタシが強化選手になったこと知っててくれてるんだ

嬉しい


「それくらい分かってる。でもアタシ今まで陸上しかしてこなかったから、どうして良いか分かんなくて」


あ!黙っちゃった

どうしよう、暗い話しし過ぎちゃったかな


「靴とか部活中に使う物を隠されたことはある?」


「え?まぁ…ある、けど…。それがどうかしたの?」


なにか策を考えてくれてたんだ

良かった

それに嬉しい


「顧問の先生が来るタイミングで3番目に勢力のある先輩の靴を隠すんだ」


「うん」


バレたら大変だけど、多分バレることが大切なんだよね

だって、やられたことと同じことをしたって意味がない

人を蹴落とすことでしか自分が上がれない

それを認める行為だけは絶対にしない

誰に何度負けたって、アタシは実力を磨いて真剣勝負で勝つ


「当然先生にバレて騒ぎになるだろうけど、サツキさんはその場にいない」


え?いないの?

それだと騒ぎが大きくなっちゃうんじゃ…

もしかして部活休めってこと?

それだとなんの解決になるんだろう

それが分からないまま聞いても多分意味ない

話しの展開が読めてないから馬鹿って思われるのも嫌だし、無難な質問しよう


「でも練習抜け出せるかな」


「お手洗いにでも行くと言えば良い」


確かにそれならタイミングを見て騒ぎの中に登場することが出来る


「なるほど!それで?」


「騒ぎになっているグラウンドに戻ってこう言うんだ。「自分も隠されたことがあったので、そういう遊びが流行っているのかと思って。先輩と仲良くしたかったので」と」


無邪気っぽいのはアタシの素ではある

だけど、少なからず盛ってるところがないとは言わない

でもその言葉信じられたらそれはそれでショックかも


「悪いことなんだと素直に認めて謝るんだ。先輩は先生の手前適当なことを言って謝るだろうけど、笑顔で許す。そして他の悪事も具体的に言って、悪いことなのか?と質問するんだ」


あくまで「質問」かぁ、良いね


「うん、天野の考えることは面白い。もしまだやってもすぐに先生に相談することに誰も疑問を持たない」


「その通り。もしかしたら問題が大きくなってしまうかもしれないけれど…」


じっと目を見られて、ポニーテールに手が触れる


「綺麗な髪。傷のない身体。使い込まれた練習着。見える範囲に嫌がらせが出来ない小心者なら大丈夫だよ」


ち、近い…

それに日焼け止めクリームなんて意味ないから肌黒いの気にしてんの!


「そ、そうだね…」


「あれ?顔が赤いね、もしかして熱でも――」


「いや!それは大丈夫!ほら、職員室着いたから!ありがとうね!」


返事も聞かずに職員室へ逃げ込む


っていうか名前!呼ばれたよね?!

しかも下の名前で!


~~~~覚えてろよ!

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